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統合失調症に対するジプレキサとエビリファイの相違について

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初診で統合失調症らしき患者を診た際、ジプレキサとエビリファイのどちらで始めるか思案する。年間ではこのような場面は結構あるといったところ。

どちらが良いかと言うと、経験的にはジプレキサが勝る。割合としては7:3くらい。

ジプレキサとエビリファイの共通点は、対象疾患のスペクトラムが広いことである。この2剤はレセプト的にも統合失調症と双極性障害のいずれにも使えるし、うつ病だって補助的に使えないことはない。

ただし、使う際に微妙な差があるとよく感じる。

数年前に夜間輪番で、「まさにこれは緊張病症候群」と言える患者さんが初診した。救急車の中で大暴れしたようである。診察室に入っても会話もできないし、大声を出し続けている状況であった。

このような時、とりあえず鎮静するには、セレネースあるいはトロペロンの筋注が良いが、今風だとジプレキサの筋注も悪くない。

しかし、ジプレキサだと1アンプルで効かない場合、ルール上は立て続けに筋注できないのが大きな難点。セレネースやトロペロンはそのような制約がない。緊張病性興奮状態では、薬物治療的にやり過ぎになるリスクがかなり少ない場面であり、柔軟に対処できる薬の方が優れている。

このような患者を何も投薬せずに、保護室に入室させておくのは意外に危険だと思う。壁に頭を打ち続けて、脳挫傷することもありうる。重要なことは一刻も早く鎮静することだ。

最初の行で「統合失調症らしき」と書いたが、このような患者の場合、まだ統合失調症とは確定していない。しかし精神科に初めて受診した時が緊張病症候群なので、統合失調症だったとしても予後良好なタイプなのはほぼ確実と言える。

だから、家族には「予後良好な病型です」と言うことにしている。このようなことでマーフィーの法則になった記憶があまりない。

この人は服薬できる状況ではなかったため、セレネースを筋注し、さっぱり効かなかったため、更に追加で筋注した。そしてその日はなんとか眠ってもらったのである。

翌日から内服治療だが、ジプレキサを選んだ。もちろんエビリファイでも良いと思ったが、このレベルになると、エビリファイは最初から24㎎をOD錠で投薬した方が無難だと思う。いきなり24㎎使えば、エビリファイが適しているかどうかがわかりやすいし、病状の紛れもかなり減る印象である。

一方、ジプレキサでは5~10㎎からでも良い。この差は大きい。

結局、この人には5㎎から始め、良さそうだったのですぐに10㎎に増量した。結局、20㎎まで増やすことなく、約1か月で軽快退院した。そして今でも5㎎錠を服薬している。本人は未だに服薬の必要性が良く理解できていないようであるが、日常生活は普通の人と変わりなく送っている。

ジプレキサのメリットは、このように鮮やかに効いた場合、他に何も併用しなくて良い人が相対的に多いことだ。従って、毎日ザイディス錠を服用するだけになる。

また、この人は初診時には63㎏くらいだったが、その後1年間で服薬したまま55㎏まで体重減少した。それはあり得ないと思う人がいたとしたら、まだジプレキサがいかなる薬なのか理解していない。

過去ログでは、ジプレキサがフィットする人では体重減少も稀ではないと記載しているし、他の臨床医も、同じ感想も持つ人が意外にいると聴いたことがある。

エビリファイでは最初の一歩目で、3㎎とか6㎎で始めたために賦活して大失敗に終わるとか、アカシジア様症状が出て、継続できないというテクニカルな失敗が生じうる。

つまり、

エビリファイはスペクトラムが広いが、スィートポイントは狭い。適切な用量を決めるのは重要だし、それは予後にも影響する

といったところだと思う。迷ったら、ジプレキサが遥かに無難である。

参考
エビリファイvsジプレキサ


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