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妊活とインデラル

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インデラルは日本では不整脈、高血圧、狭心症の薬の薬として処方されているが、精神科でも適応外で「攻撃性や暴力」や向精神薬の副作用の軽減に使われることがある。海外のコンビニでは、市販薬として買える国があり、たぶんありふれた薬なんだと思う。(副作用については過去ログ参照)。

インデラルはアメリカのFDAによる催奇形性ランキングはCとなっており、向精神薬とみなせばそう悪くないレベルにある。以下過去ログから抜粋。

【B】
動物生殖試験では胎仔への危険性は否定されているが、人、妊婦での対照試験は実施されていないもの。あるいは、動物生殖試験で有害な作用(または出生数の低下)が証明されているが、ヒトでの妊娠期3ヵ月の対照試験では実証されていない、またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はないもの。

【C】
動物生殖試験では胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいは、ヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。注意が必要であるが投薬のベネフィットがリスクを上回る可能性はある(ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること)。

【D】
人の胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されるもの(例えば、生命が危険にさらされているとき、または重篤な疾病で安全な薬剤が使用できないとき、あるいは効果がないとき、その薬剤をどうしても使用する必要がある場合)。

【X】
動物または人での試験で胎児異常が証明されている場合、あるいは人での使用経験上胎児への危険性の証拠がある場合、またはその両方の場合で、この薬剤を妊婦に使用することは、他のどんな利益よりも明らかに危険性の方が大きいもの。ここに分類される薬剤は、妊婦または妊娠する可能性のある婦人には禁忌である。

以上のように、Cは決して安全とされているわけではないことに注意。


日本のインデラルの添付文書では、

妊婦,産婦,授乳婦等への投与妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には,緊急やむを得ない場合以外は投与しないことが望ましい。[妊娠中の投与により新生児の発育遅延,血糖値低下,呼吸抑制が認められたとの報告があり,また,動物実験で胎仔に対して,母体より長時間β遮断作用を示すことが報告されている。]

投与中は授乳を避けさせること。[母乳中へ移行することが報告されている。


やむを得ない場合のみ処方できるといった記載で禁忌にはなっていない。

今回は、妊活とインデラルというタイトルだが、日本では一般的に、妊娠中の片頭痛には、インデラルが選択されているようである。これはたぶん催奇形性を勘案して選択されていると思うが、相対的にほかの例えばトリプタン製剤などと比べ、まだ安全性が高いとみなされているのではないかと思う。

妊娠中、片頭痛に対しおそらく最も安全性が高いものはカロナール(アセトアミフェン)であろう。アメリカFDAの催奇形性レベルも、アセトアミノフェンはBとなっており、薬としてはかなり安全性が高いとみなされている。なお、余談だがモルヒネもBである。これは麻薬中毒の人は、妊娠中だからと言って止められない人が多いのでN数が蓄積された結果だと思う。アスピリンはCとなっており、アセトアミノフェンより若干低い。

このようなことから、妊娠中の片頭痛はアセトアミノフェンで収まれば大丈夫だが、その次に使われるとしたら、インデラルといった感じかと思われる。

注意点として、アメリカFDAは2015年6月に薬物の催奇形性カテゴリー分類を廃止している。そのかわり、個別に具体的な安全性とリスク評価を記述形式で添付文書に記載するよう義務付けている。これは、各カテゴリーで(たとえばcなど)かなりバラつきが生じていたからである。

なお、向精神薬(SSRI、3環系抗うつ剤、抗てんかん薬)も片頭痛に対し、日本でも適応があるか、ないとしても海外で適応を持つものがある。元々、片頭痛は引き起こす物質があることがあり食事の工夫も必要である。しかし片頭痛はいったん起こると汎用される鎮痛薬では太刀打ちできないものも多く薬物療法は極めて有用である。

片頭痛は時にセロトニン作動薬が非常に有効である。トリプタン製剤の作用機序は簡単に言えば、脳血管の平滑筋、硬膜血管周囲三叉神経終末、三叉神経核などのセロトニン受容体に選択的・特異的に作用し、硬膜血管の収縮、神経終末からの神経ペプチドの放出抑制し、三叉神経核にある痛みの伝達抑制などにより、片頭痛発作を消失させる。

このようなことから、向精神薬のSSRIや3環系抗うつ剤、テグレトールなどの三叉神経痛にも処方される薬は効いておかしくないし実際に使われている。臨床的に、向精神薬を服薬し始めて、長年続いた頭痛が良くなったという話を聴くことがある。

抗てんかん薬では、デパケンRなどは、日本でもてんかんや躁病に加え、片頭痛の抑制という適応を持っている。しかし今回のテーマ的にも妊娠中はデパケンRは厳しすぎる(催奇形性が高すぎるという意味)。

なお、他の抗てんかん薬では、上に挙げたテグレトールに加えトピナも有用とされている。

今回の記事には少し続きがある。

参考
インデラルと社会恐怖の話
精神科以外の薬の催奇形性
パキシルと妊娠
デパケンRと妊娠
リーマスと妊娠
ラミクタールと妊娠・出産



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