今回は2年くらい前のエピソードである。
ある日、外来婦長がまだ婦長になったばかりの頃、僕が、ある患者さんの診察を終えた瞬間、彼女に振返り、
今日はとても表情が良かったですね。
と言った際、彼女は患者さんの表情の何がどう良かったのか全然わからなかったという。
「表情が良い」と言う精神所見は、笑顔が良かったとか、穏やかな表情だけではないが、一般的な表情も含まれるので、
いったい、この2人は何を診ていたんだ!
と言う話になる。彼女によれば、2年くらい経ち、やっと僕が言う「表情が良い」という所見が理解できるようになったらしい。
正直、2年間もわからなかったという話が自分には不思議でならなかった。同じ現場にいるのにである。
彼女は一般的な意味で、表情のわからない人ではない。例えば僕の診察中、ある瞬間「ぱっと表情が明るくなった」と指摘したりする。ちょうどその時、僕はカルテを記載していたので見ていなかった。彼女によると、僕が「きっと良くなる」と言うメッセージを伝えたので、明るくなったのでは?と話していた。
しかしながら、表情の良さというある意味、抽象的なものを、彼女と真に共有できているか自信がない。
今日のエピソードは、平凡だが、精神医療という視点で、かなり深いのではないかと今も思っている。
参考
プレコックス感はなくなるのか?
3人目の女性患者
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表情が良くなったことが全然わからなかったという話
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