精神科の患者さんでは、いつも37℃台の微熱がある人がいる。それも若い人である。また、常時ではないが、数ヶ月~数年に渡って微熱が続く人がいる。このような人は自分でも心得ていて、「37.5℃ですね」などというと、
それが僕の平熱です。
という答えが返ってくる。その発熱を裏付ける検査所見がないことが多い。あるのは精神疾患だけである。
また、関係していると思える検査所見がみられることもある。例えば、いつも白血球数が1万を超えているなどである。こういう人でも、普通に働いており、少なくとも体力的には支障がないようである。
CRPや白血球数などの血液所見が正常で、微熱のみ見られる人は、向精神薬が関係しているように思うかもしれない。実際に向精神薬が関係しているように見える人もいる。たまに薬の副作用として「発熱」がみられる人がいるからである。
過去ログでゾロフトを試しに飲んでみた話が出てくる。あの時、熱がありそうな感じがしたので測ってみたら、37℃台の微熱があった。(過去ログではインフルエンザ様症状という副作用ではないか?と記載している)。
このタイプの急速に生じる「発熱」の副作用は体力的にもそれなりのダメージがあり、今回タイトルの「いつも発熱がある人」には含めない。薬に無関係に微熱がある人の話である。
これはたぶん精神疾患から来るものであろうが、一般に急性期を除けば、精神疾患では微熱など生じない人のほうが遥かに多いので、普遍的にこれが原因と言えるものはない。なんらかの感染や免疫反応を伴っている人なのかもしれない。なお、中毒疹では発熱が伴うことがあるが、これは免疫から来るものなので体の正常反応と言える。
発熱のみあり全く原因がつかめない人を、内科では初診時の診断名を「不明熱」としていた。(FUO fever of unknown origin )
このような人の中に、精神疾患の人もいくらか含まれるのである。過去ログでは、内科で診断に困り、「原因不明の代謝障害」と診断したが、実は統合失調症だった話が出てくる。
今は昔に比べ、検査の種類や精度が上がっているので、徹底的に検査すると、何らかの異常所見が見つかり原因が特定されるかもしれないと思う。
インドに「6人の盲人と象」という寓話がある。同じものを評するのに全く異なる理解をしていたと言うものだが、上の「原因不明の代謝障害」と「統合失調症」の話に少し似ている。最初の道筋が違うと、なかなか正体には行き着かないのである。
最初に挙げた、「いつも微熱がある人」の話に戻るが、寛解の水準が高まると、10年くらい続いた微熱が完全に消失することがある。
このような人は、たぶん精神疾患と一連のものだと思う。
参考
体験・ジェイゾロフト
原因不明の代謝障害
森を見て治療を進める
ヘルペス脳炎
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いつも微熱がある人
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