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線維筋痛症と旧来の抗うつ剤

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精神科では、慢性疼痛に抗うつ剤が非常に有効なことが知られている。

過去ログでは特にトフラニールやトリプタノールなどの古典的な抗うつ剤が使われていたことを記載している。また今回は、SSRI、SNRI、NaSSAなどは扱わないが、これらもエビデンスレベル、推奨度とも高い有効な薬物が多い。

精神科で従来、最も疼痛に使われてきたのは古典的抗うつ剤とテグレトールなどの三叉神経痛にも使われる抗てんかん薬である。

今回は、旧来の抗うつ剤、特に3環系及び4環系抗うつ剤を中心に、線維筋痛症に対する有効性のエビデンスレベルと推奨度を紹介したい。これは海外のもので日本の評価とは若干異なる。

最初にエビデンスレベルⅠ~Ⅴについて

ランクⅠ 
Systemic review、メタ解析によるデータ。

ランクⅡa
1つ以上のランダム化試験によるデータ。

ランクⅡb
非ランダム化データによるデータ。

ランクⅢ
分析疾病学的研究によるデータ。

ランクⅣ
記述疾病学的研究によるデータ。(何例中何例が有効だったなど)

ランクⅤ
患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見。


読者の人には上記のエビデンスレベルの差がよくわからないと思うが、Ⅰ~Ⅴの順番に信頼性が落ちると考えて良いと思う。

推奨度
A 行うように強く勧められる。
B 行うように勧められる。
C 行うように勧めるだけの根拠が明確でない。
D 行わないように勧められる。


上では、Dはしない方が良いと考えられる医療である。

なお、日本では、現在明確に「線維筋痛症」という病名が登録されておらず(精神科では特に)、また国により効能効果が認められている薬物もない。そのため、推奨度にAは付けられておらず、Bが最高である。

アナフラニール
エビデンスⅡa 推奨度B(日本でもB) 
経験的に慢性疼痛に対しアナフラニールの点滴は圧倒的に効く。ある女性患者さんは、疼痛の治療のために、アナフラニールの点滴目的に入院し、そのまま奏功し退院となった。彼女は1日0.5Aしか点滴していなかった。彼女の退院時の話だが、「疼痛や体の動きのギクシャク感、体の重さや疲労感が一掃された。また、なんだかスローモーだった動作が速くなり、歩き方も良くなった」と喜んでいた。

ただし、アナフラニールの点滴は、日本のエビデンスレベルはなぜかⅣになっている。たぶん、あまり使ったことがない精神科医が点滴したために効かなかったものと思われる(結構真面目に言っている)。

むしろ線維筋痛症になるような人は非常に薬に敏感で副作用が出やすいことも稀ではないので、3環系抗うつ剤を使う場合、QT延長などの心電図チェックが重要と思われる。

プロチアデン
エビデンスⅡa 推奨度B(日本でもB)
慢性疼痛に対し、僕はプロチアデンは使ったことがない。

トリプタノール
エビデンスⅠ 推奨度A(日本はB)
25~50mg就前服薬が推奨されているが、150mgまで増量しないでこの人は効かないと判断しないことが望ましいとされている。前回の記事でリウマチが完治した女性はトリプタノール125mgが主剤であった。

線維筋痛症の人は不眠が強く、食欲不振や痩せている人も稀ではないのでトリプタノールによるうつ状態、睡眠の改善、食欲増進、体重増加作用は喜ばれる。基本的にトリプタノールは服薬できる人にはバランスが良い。

ノリトレン
エビデンスⅣ 推奨度B(日本ではC)
ノリトレンは研究自体が少ない。トリプタノールは代謝を受けノリトレンに変化するため、理論的にはノリトレンは疼痛に効いておかしくない。ノリトレンは副作用がトリプタノールより少ないため、線維筋痛症を含まない神経障害性疼痛に対し、国際疼痛学会は、トリプタノールよりノリトレンを優先するように推奨している。

トフラニール
エビデンスⅣ 推奨度C(日本もC)
研究結果にぱっとしたものがない。日本では古くから、トフラニールが疼痛に有効なのは有名なのだが、線維筋痛症に限ればそれほど有効ではないのかもしれない。

ルジオミール
エビデンスⅡa 推奨度C(日本でもC)
ルジオミールも疼痛や異常感覚に有効である(過去ログ参照)。エビデンスレベルは最高に近い。

レスリン
エビデンスⅣ 推奨度B(日本はC)
イタリア、スペインでの対照群のない研究で鎮痛効果があったとされる。

旧来の抗うつ剤以外の抗うつ剤、例えば、SSRI、SNRI、NaSSAについては別の機会に紹介したい。


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