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向精神薬の離脱症状と精神科医

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このブログは向精神薬の話が多いが、向精神薬の離脱についてあまり触れていない。ところが、アメブロメールの相談やコメント欄でも離脱症状に苦しんだと言う話は時々聞く。

離脱症状の話は、ある患者さんの治療の連続したエントリで薬を変更した際も、あまり出てこない。

これは決して隠しているわけではなく、そういう経過がないからである。もし離脱が大きいのなら、このブログは副作用も大きなテーマの1つなので触れないわけはなかろう。

実際、そのような相談の際に「自分はそのような離脱はあまり経験したことがない」と答えている。

この話は色々な考え方があると思うが、医師により薬の効果の出方が変わるように、離脱症状の出方もたぶん異なるのである。もちろん熟練している方が、離脱症状はないか極めて少ない。

その証拠に、サインバルタは書籍的には離脱が結構出る薬とされているが、僕はそういう経験がほとんどない。あるのかもしれないが、患者さんが言わないのでおそらくたいしたことはないんだと思う。

例えば2週間しか処方していないのに1ヶ月ごとに来院する人がいる。よく話を聞いてみると、服薬の仕方がバラバラだったりするのである。処方内に、サインバルタとかリボトリールが入っているので、その患者さんに、

このような薬は離脱が出やすいので、続けて飲まないと、苦しいことがあるんですが・・

などと言うと、

えっ!本当ですか?

と、逆に驚かれる。その人は薬がなくなると、最後の1週間程度は薬なしでいるんだそうだ。ということは、薬を急激に止めても、いくらか異和感があったとしても、離脱といえる大きな自覚症状はないのであろう。

そういうことを聴くと、ある大きな疑問が生じる。

なぜ、その人は再診するのか?である。

ある時、バラバラに来ている人に尋ねたところ、何も薬を持たずに何週間も過ごすのは、不安になるからと言う。(患者さんにより色々な言い方がある)

別に1ヶ月後でも良かったんですが・・

など言う言い方なので、離脱が酷いから大急ぎで再診した感じではない。

サインバルタは少なくとも友人の間では、前評判と異なり、かなり離脱が少ない薬として評価されている。

パキシルは過去ログでジェイゾロフトに移行することにより減量しやすくなるといった記載をしている。これでうまくいかない人はパキシルに戻すが、そのような人は10人に1人もいない。これもうまくいかない人は離脱によるものではなく、抗うつ作用がその人には不足するためである。

パキシルは基本的に癖がある薬で、これでないとうまくいかない人がいる。ある種の特殊な強力さを満ち合わせた薬だからであろう。

もちろん、離脱が出現しうることはわかっているので、変更や減量の際に工夫はしている。それは過去ログにもあるが、パキシルを減量する際に毎日アナフラニールを点滴しに来院してもらうなどである。(その他、リスパダールの減量ではリスパダールコンスタを併用することを薦めている)

リボトリールも離脱はほとんど経験がない。これは同じようなベンゾジアゼピンに変更して減量している。これでほとんど問題がない。

たいてい長期型のメイラックスを選ぶが、患者さんはむしろリボトリールよりメイラックスの方がうつが晴れて良いと言う人が2~3割くらいいる。この点を見ても、リボトリールの方が効果の奥行きがやや広いのである。(リボトリールのほうが、メイラックスより飲み味が軽いという言い方をする人もいる)

今日のエントリはやや非科学的な点もあるため、オカルトのテーマに入れている。過去ログにも同じような話は時々出てくるので興味のある人は探してみると良い。

結局、離脱が出まくって患者さんが苦しむのは、患者さんの忍容性の評価も含め、精神科医の経験や技量が不足しているのである。

実は離脱があまり生じないことは、治療の上で「薬の変更に支障が生じにくく、時間をロスしない」という大きなメリットがある。サッカーで、

あの単調な玉離れの良さが、攻撃のリズムを生むんですよ。

といった解説を聞くことがある。これと全く同じである。薬の変更程度に手間取っているようでは、寛解に向かう良いリズムが生まれないと思う。

薬物治療の際に離脱がほとんどないことは、種々の面で治療に大きなメリットをもたらすのである。

参考
精神科医と薬、エイジング
パキシルはコーティングするのか?
アナフラニール点滴マニュアル






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