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アブラゼミの抜け殻

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$kyupinの日記 気が向けば更新 (精神科医のブログ)

最近の暑さは異常で、エアコンが効いた部屋から外に出ると、一瞬、息が詰まるような苦しさを感じる。元々、僕は暑さには弱い。高校の時に入院したのも、暑さで体調を崩したことが大きかった。

マンションのエントランス部分にはタイルで囲った植え込みがあり、そこでいくつかのアブラゼミの抜け殻を発見した。

なんだか、ちょっと感動。

これは見慣れないからそう思ったのではなく、マンションのそのような狭く浅い場所にセミの幼虫が長く育っていたことに感動したのである。

セミは一般の昆虫に比べ圧倒的に寿命が長い。

たぶんセミほど寿命が長い昆虫は稀だと思う。ただし、一生のうちほとんどの期間は地中に暮らしているが。

アブラゼミは約7年間を地中で生活すると言われる。だから、僕がその時見た抜け殻は、あるアブラゼミが7年前にその場所に卵を産み落とした証拠でもある。うちのマンションはその時期には既に完成し、数年経っていたので計算に矛盾はない。

その時、思ったのは、このマンションが建った際、それ以前にこの地下に生息してたアブラゼミなどの幼虫は地上に出られず、全員死亡してしまったであろうこと。

これはこのマンションに限らず、コンクリートの巨大な建物を造り、地面をアスファルトで固めてしまえば、セミの幼虫は同じ結末になる。

アブラゼミはありふれたセミで、五月蝿く鳴いているが、卵から成虫まで無事に成長できる確率は、どのくらいだろうかと思ったりする。

子供の頃、夏の虫取りと言えば、もっぱらカブトムシとクワガタで、年長になるとセミを捕るのは遠慮していた。セミは成虫になってからは長く生きないのを知っていたからである。また、セミは捕っても、餌をどのようにやったら良いのかがよくわからなかった。虫かごに入れていても、1日かせいぜい数日で死んでいたので、殺すために捕ってきたような感覚に陥り罪悪感を感じた。だから止めてしまったんだと思う。

うちの親父は、セミを捕ることを強く非難するというか、そのような殺生は止めるように常に言っていた。カブトムシでさえ、捕ってくることに良い顔はしなかった。そういう男なのである。僕は当時は気にしなかったが、今は全く親父と同じ考え方である。

この時間が経つにつれ、親父に感覚が似てくるのが泣ける。

しかし、嫁さんによると、僕は親父には全然似てないらしい。むしろ性格的に明るいところとか、社交的な面が母親に似ているという。

セミを捕りに行ったことのある人ならわかるが、セミは木から飛び立つ際によくオシッコを撒いて行く。だからセミを捕るために木を見上げていると、セミのオシッコが顔面を直撃するのである。セミはたぶんそういう習性なのだろう。

迷信で「カエルの尿を浴びるとイボができる」と語られていたが、セミは特に副作用はなかったような気がする。(重要)

だから次第にセミはまだ子供だった僕にとっても、主に「観賞用の昆虫」という位置付けになった。しかも視覚だけでなく演奏付きである。

僕がよく観察していたセミは、アブラゼミとニイニイゼミである。この2つはかなり大きさに相違があり、姿や鳴き方も高級感が乏しいという共通点がある。

アブラゼミの抜け殻は、茶色を基調とした光沢のある透明な殻であり、見慣れるとすぐにアブラゼミとわかる。アブラゼミの抜け殻は地上すれすれにあることはなく、比較的高い場所まで這い上がっている。だいたい子供の腰の高さくらいである。(統計を取って調べたことはないけどね)。

それに対し、ニイニイゼミの抜け殻はアブラゼミに比べ小さくて泥で汚れていた。また地面からそう高くない場所にあったような気がする。

この2つのセミに比べ、ツクツクボウシはその姿も美しく、鳴き方も気品があると言えた。ツクツクボウシの演奏は、突然の主題の変更もあり、起承転結らしきものもある点で、子供心に音楽性が高いと感じていた。特に晩秋の演奏が秀逸。あくまでも主観だが。

ツクツクボウシはまず羽が透明なのがポイントが高い。ここが上のアブラゼミとニイニイゼミとの大きな相違である。

ツクツクボウシの成虫はやや細長い体型で、抜け殻もやはり細長く慣れると見分けられるようになる。抜け殻の大きさはアブラゼミより小さく、殻も薄いが光沢がある点は似ていた。

もうひとつ、クマゼミという巨大なセミには非常に驚いた。子供の頃、自分の住んでいた地域にはなぜかクマゼミがおらず、実物を見たことがなかった。クマゼミも羽は透明であり、姿も美しく迫力があるセミである。

ある時、親父の実家の近所を散策していた時、生まれて初めて怪物のようなセミを目撃した。クマゼミは捕獲して裏返してみるとオス、メスの区別がすぐにつく。両腰の辺りにオレンジのポケットのようなものがあったような・・

僕はアブラゼミは7年間地中に暮らすことは昆虫図鑑で読んで知っていたが、ニイニイゼミ、ツクツクボウシ、クマゼミは何年くらい地中にいるのか知らなかった。これは今でも知らないが、少なくとも2~3年などの短さではないと思う。

海外では昆虫としてはとてつもない長期間地中に暮らすセミが知られている。13年ゼミや17年ゼミである。

そういう視点ではアブラゼミは7年ゼミということになるが、7は素数である。13と17も素数であり、セミの地中生活の年数が素数になっているのは、何らかのメリットがあったことが窺われ、自然淘汰も関係しているようでとても興味深い。

アブラゼミは毎年同じように鳴いているが、7年周期なので個々のグループ間の交配が起こりにくい。個々のグループは7年おきにしか出てこないからである。

その点でセミは社会経験を積みにくく、進化という点で学びにくいような気がする。たぶん5000年後でも今と同じように鳴いていると思うよ。

何が言いたいかというと、17年ゼミは昆虫にしては寿命が長すぎ、また異種の交配も生じにくい。また優れた形質を持つ突然変異が生じたとしても子孫を残しにくく、進化という点で不利であろうこと。

13と17の最小公倍数は221であり、13年ゼミと17年ゼミが重なる機会は滅多に生じない。同時発生は極めて珍しい事件なのである。これらの内容のことは北杜夫の昆虫記か何かに書いてあった記憶がある。

セミの大量発生のため、その五月蝿さは想像を絶するものだった。

うろ覚えだが、こんな感じの記載だった。13年ゼミ、17年ゼミなど数字だが、自然淘汰を受けた結果、素数になったという意見がある。つまり積極的に選ばれた結果ではなく、消極的にこうなったというもの。これも非常に興味深いと思った。

自然数でも、大きな数字の素数は、最小公倍数が大きくなるのが重要であろう。しかしながら、アブラゼミは毎年大変な数が生まれ五月蝿く鳴いている。これは毎年同じ地域に発生しているためだ。

ところが、13年ゼミや17年ゼミは毎年どこかで鳴いているものの、同じ地域には毎年出現しないらしい。だから、アブラゼミとは現れ方が異なる。この所見は重大である。

だからこそだが、最大公倍数の大きさが重要になるのである。(アブラゼミのように同じ地域に毎年出て来るのであれば、最小公倍数は意味がない)。

一度に大量に発生するにより、捕食者がいたとしてもいくらかは生き残り、子孫を残す確率が高まる。

生存のために優れた形質が「素数ゼミ」なのであろう。おそらく、ほとんどの素数ではないセミは絶滅してしまったのである。

参考
地球上の大量絶滅



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