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精神科勤務経験のない看護師

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うちの病院で新規採用する看護師さんは「精神科勤務経験がない」人が大半である。経験を問わない理由だが、正看護師を採用するのに選んではおれない事情もある。地方では今も看護師の採用は容易ではない。

ここ10年くらい日本全体の経済状況の悪化により、長い間、主婦をしていた看護師免許のある女性が再就職ようなことが以前より多くなった。

かといって採用しやすいように思うかもしれないが、そうでもないのである。

正看護師の看護学校に行くとわかるが、学生さんは若い人だけではなく、年配の人もチラホラみられる。これは種々の状況があると思うが、昔、准看護師をしていて、これから正看護師になれるように勉強しようと決めた人とか、ヘルパーをしていて、興味を持ち一念発起して看護師になろうと思う人もいる。

一般事務や介護職で病院に就職した一部の人は、職業的な興味と給与の差から、看護師を志す。あるいは稀に作業療法士を目指す人もいる。

新卒の看護師は比較的大きな病院を志向し、一般の単科精神病院にはほとんど来ない。

まあ、それは昔もそうだったのでかまわないが、不足しているのは国の施策にも影響している。一部の規模の大きい病院(精神科以外)が看護基準を高め診療報酬を多く取るため、たくさんの正看護師を募集し、その結果、県内で偏在が生じている。極端な過疎地でなくても募集は難しくなっているのである。

さて本題に入るが、比較的年配で、かつて一般の内科、外科で働いていて、うちのような精神科病院に就職したような人は、

患者さんが、良くなることにびっくりする。

これは笑い話ではなく、マジなんだ。

過去ログに、「うちの外来婦長は才能がある」という記事がある。この中で以下のように記載している。(再掲)

うちの病院しか勤めていない職員は、いかにうちの病院が治る病院かに気付かないと思われる。(これは看護師さんだけでなく、コメディカルスタッフも同様)

精神疾患に対する絶望感とかそういうマイナスのイメージが最初からないのがよろしい。また精神病院ずれしていないのも良い。


とは言え、かつて精神疾患の講義で習ったことも含め、漠然としたスティグマのようなものはあるのである。このスティグマは一般の人が抱くようなものにやや近い。

別の過去ログでは、精神疾患に対するスティグマはむしろ医療関係者に強いと記載している。これは、現場にいるからではなく、むしろ現場にいない医療関係者のほうが悪いイメージを抱いている。だから始末が悪いのである。

かつて精神科で勤めていなかったのに、何らかの事情で精神科に勤めようと決めた看護師はそれなりに心の準備があり、精神科には勤めたいと思わない人に比べ覚悟ができているように思う。

たぶん、スティグマの形成のあり方が、そうでない人に比べ違っているのである。だからこそ、精神医療で良くなった患者さんを新鮮に驚けるし、祝福もできる。

覚悟ができていない人は精神病院に勤めて3日以内に辞めることが多い。しかしそのような人は意外に少ない。

古い歴史のある、悪く言えば旧態然としている単科精神病院は、看護師の派閥とか立ち入っていきにくい雰囲気もあるらしく、新規採用されてもその理由で辞める人もいる。

僕は自分の患者さんで、比較的軽く、しかも特異なパーソナリティではない人を積極的に採用している。だから元々自分の通院患者さんだったが、今はうちの病院の看護師やコメディカルスタッフになっている人もいる。彼らの中で、かつて他の精神科病院に勤めた人に聞くと、うちの病院はそのような妙な派閥がないらしい。

その結果、うちの病院スタッフは素人の集合体となった。

僕は元々、個別に採用される看護師の面接に関与していない。だから、いつの間にかうちの病院に就職している看護師や補助看さんが多数。名札を付けていないと名前も覚えられない。

うちの外来の若手の看護師さんは、元は外科で仕事をしていたらしく、精神科の経験が全くなかった。彼女は非常に機転が効き、即座に対処してくれるのが良い。医師がなにをしようとしているのか、適切な予測ができるのである。まるで手術室にいる看護師のようである。

彼女が傍にいると、全く仕事上のストレスがない。彼女は精神疾患のことがほとんど理解できていないらしく、それも微妙に診察しやすいように思った。

時々、彼女に「今の患者さんはどんな風に思いますか?」と質問することがある。少しは精神疾患について理解して貰うためである。その際に、彼女は実に一般的な感覚で感想を言うので、こちらがかえって感心するというか勉強になる。平均的な視点は、ずっと精神科にいるとズレて来る面があるからである。

ある時、彼女は出産のために数ヶ月いない時期があったが、誰が交代で外来に来ても、彼女の真似はできないことが判明。早く職場に戻ってくるように待ち望んだ。

精神科での外来看護師は望ましいタイプがいくつかあるが、彼女はある望ましいタイプの1人である。

彼女はそのような理由で、うちの外来婦長とはかなり異なる。外来婦長はあまり精神科のことは知らないが、人生経験が長い分、患者さんの悩みの相談にのれる。その若手看護師ものれないわけではないが、レベル的には新卒の精神保健福祉士並みである(法律のことを知っていると言う意味ではなく)。

結局だが、精神科スタッフは精神科での経験は無意味とは言わないが、むしろ人間性や仕事に対する真摯な態度の方がより重要なんだと思う。

それらが、好ましい外来の雰囲気を作り、治療的な場になるのかもしれない。

参考
ヴィクトリーネ・ツァック
やっぱり母親というのはすごいよ


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