このブログは、一部の向精神薬の作用が減弱することを「腰折れする」と記載しているが、これは精神科の一般的用語ではない。
一般に、薬効が弱まることは、種々の薬で見られる。例えば、抗生剤でも耐性菌が増えると、次第に発売当初の効果が発揮できなくなる。
製薬会社の新しい抗生剤の開発・発売は「耐性菌との終わりのない戦い」をよく表していると思う。
一般に、ベンゾジアゼピンは服薬し続けると次第に初期に見られた効果が得られなくなる。精神科医は、これらを「ベンゾジアゼピンに耐性が生じた」と表現する。
個人的に、ベンゾジアゼピンは「耐性」で良いが、ブプロピオンやエビリファイの腰折れは、「耐性」と言う日本語はフィットしないと思う。
これはきっと、ブプロピオンやエビリファイが腰折れした際に、精神的にも身体的にも、これらに期待する感覚が乏しいことが関係している。その時には、これらの薬物は空気化しているのである。
ブプロピオンもエビリファイもベンゾジアゼピンのような多幸感や依存性がなく、腰折れしてしまうとあっさり中止できるなど、扱いやすくなっている。
これは継続した薬物療法の際に、非常に便利な特性である。
そのような視点では、中等量以下のルーランなども同じような性質がある。過去ログでは「種々の薬が入っている中にルーランが入っている場合、いとも簡単に中止できるが、リスパダールはそうはいかない」という記載が出てくる。
腰折れするメリットがあるとすれば、断然、扱いやすくなることであろう。耐性とは少し意味が違うように思えるのである。
ただし、この表現も、あくまでこのブログの範囲内である。薬物の腰折れにつれ、その人の本来の精神症状が改善しつつあり、容易に中止できるのであれば、
その薬は去りつつある。
と表現することも可能だ。過去ログには「去るタイプの薬」について触れた記事がある。
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腰折れする利点
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