自分の患者さんではないが、ある知り合いのおばあちゃんは全く身寄りがない。
しかし、夫の残した遺族年金や貯蓄などである程度の資産はある。僕は有料老人ホームに入ったほうが良いと思うのだが、実家の家に住む方が楽だし、身体に障害がないので、今も自宅に住み続けている。介護保険は非該当らしい。
彼女から聴いたことだが、いつも枕元の箱に100万円ほど現金を入れているのだという。
その理由だが、泥棒が入ってきたとき、それを差し出して、
これをあげますから命だけは助けて下さい。
と言うため。
なかなかの発想と思うが、実際、犯人は顔を見られているので、助かる確率が少しだけ上がる程度かもしれない。それでも意味がないとまでは言えないと思う。
経済小説で有名な清水一行は多作の作家だが、全てではないがほとんど読んでいる。
彼の小説の中で、何億も資産があるのに、恨みでもなんでもなく、たった10万円かそのくらいのお金を奪うために犯人から殺される話が出てくる。
命とお金の不思議な関係を良く示していると思う。
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無縁社会
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