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減量のために準備をする

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ある時、ルーラン24mg処方されているうつ病圏の患者さんが初診した。彼は、うつ病で会社復帰できておらず、過去に1度は復帰したものの、仕事にならず2回目の休職に至っていた。

今回は彼の治療の詳細は本題と関係ないので記載しないが、初診後まもなくルーラン24mgは減量・中止できたのである。その後、ラミクタール、サインバルタなどを主体に治療を行い、それまでは退職必至と思われた病状が快復し会社復帰できた。今は病前と全く同じ水準の通常業務ができている。

当初、本人と家族は、過去にはどこの精神科病院、クリニックでも病状が悪化するためルーランが減量できなかったのに、あまりにあっさり減量できたことに驚いたらしい。

元々、ルーランは減量し難い薬物ではない。なぜうつ病圏にルーランが処方されていたかと言うと、そういう知見があるため試みられていたと推測する。ただし、少し量が多すぎたとは言える。少なくとも、ルーランが多すぎたために病状が快復しなかったわけではなく、他に理由がある。

過去ログに、かなりの量の抗精神病薬を処方されていた60歳代の女性の減量の記事「いったん混沌とさせる減量の方法 」をアップしている。この記事の中で、いったん更に多剤併用の状態にして、相対的に薬効を分散する内容を記載している。

減量途中ではプロピタンも併用し抗精神病薬の薬効を分散させるようにする。陽性症状が残遺しているからである。いったん多剤併用を更に広げ混沌とさせるのである。

例えば上のようなものである。つまり、向精神薬は減量の易しいものと難しいものがあり、個々の向精神薬の役割を相対的に低めることにより、減量のショックをできるだけ減らす下準備が必要なのである。言い換えると、外堀を埋めてから前に進む。

一般にパキシルは他の薬が併用されたとしても、トランプで言えば絵札と言って良いほどの存在感がある。それでも、単剤で入っているパキシルを減量するのとは全然違う。

普通、難治性うつ病圏の疾患と難治性統合失調症では多剤併用の程度が異なり、うつ病圏内では、相対的に使われている薬物の数が少ない。だからうつ病圏の疾患では、いったん混沌とさせると言うより、うまく置き換えられるような状況(体調)を作ることが主眼になる。一方、統合失調症圏では、抗精神病薬の難治性のジストニアなどの困った状況がありうるし、減量の過程で精神面が悪化した際の影響もかなり異なる。

「減量する際に、いったん増やないと難しいという状況もありうること」は、患者さんには理解し難いところで、なぜこうしないと難しいのか説明しなければならない。最低限、家族には。

減量の際に難しいかどうかは、疾患性やその人の過去の病歴で経験的にわかることがある。それも参考にする。前回の記事では、うまくいかないと思ったとき、速やかにパキシルに戻すと言ったことにも触れている。つまり、戦争と同じく、撤退の決断も必要になることがあるし、精神状態トータルを俯瞰できる技量も重要である。

過去ログには減量する際の順番も重要と記載している。順番が概ね正解していると、撤退しても全面撤退にならず、最初より減量した状況までで済むといったメリットがある。(ふりだしに戻らなくても良い)

結局、減量の際にいかなる臨床経過になるか予測が重要であり、「無計画で乱暴な減量は人によると、取り返しのつかない事態になりうる」ことも考慮しなければならない。

無茶苦茶で無計画な減量をされるくらいなら、いつも自重しあまり薬を変えない医師の方が安全である。経験を積むと、どうしても減量には慎重になるものだ。

参考
いったん混沌とさせる減量の方法
「いったん混沌とさせる減量の方法」のその後
過去から来た患者
パキシルCR 6.25mg錠


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