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Channel: kyupinの日記 気が向けば更新
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患者さんが年上か、年下かという話

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精神科はその科の性質上、患者さんとの年齢差による心理的影響は大きいと思われる。

どういう意味かと言うと、例えば、患者さんから見て、非常に若い精神科医の助言なり指導が、素直に心から聴けるかどうかである。

まして、非常に不安が強い人や、病識など全くない人もいると言うのに・・

僕は学生の頃から若く見えるため、研修医の頃や少なくとも30歳頃までは、一般外来では、「医師には見えない」と、患者さんへ漠然とした不安感を与えたかもしれない。

30歳半ば頃まで、よく学生さんと呼ばれた。ある時、もう40歳の頃だろうか、自分が結婚していると言った際、相手に驚愕されたことがある。即ち、子供がいないこともあろうが、全く所帯じみていないのである。

たまに同窓会があるが、相対的に若く見えるため、「いったい何を食っているんだ?」などと冗談を言われる。嫁さんの意見は、自分は常に頭を使っているのと、全く運動をしないのが、老いない理由なんだという。後半が謎だが、きっとそう言う面もあるのではないかと思う。

それなのに海外や東京などに行くと、運動を毎日のようにしている嫁さんより、遥かに長時間、長距離を歩ける。なぜなんだ?と言われるが、自分でもわからない。

救急外来などの特殊な環境だと、その年齢差の違和感は相対的に緩和する。特に精神科ではそうだと思うが、内科、外科などでは救急では逆な印象を持たれるかもしれない。

救急外来では、患者さんから見て、判断や指示が速く、キビキビしていないといけないのである。

過去ログで、自分が酷い不整脈で苦しんでいた時、嫁さんが泣きながら、車で救急当番病院に連れて行ったが出てくる。

その際、救急外来で明らかに40歳を過ぎた研修医と思われる医師が出て来た。非常に危ういというか、信頼できそうにない印象があり、印象と言うか間違いなくそうだが、「これは自分で判断した方が良い」と思った。

これは自分が医師だからそういう印象を持ったと思うが、一般の人でさえ同じようなおぼつかないような不安感を抱いたと確信する。その理由は、嫁さんが同じような感想を話していたからである。

医師は高齢だと、オーラが漂うような名医ならともかく、若い医師と同じような不安感を患者さんに与えることがある。これは医療上の判断に若い頃のようなキレががないのでは?と思われるからであろう。

医師と言う職業は、年齢、経験を重ねるうちに、その人の技量が表情や姿態全体に出てくるような面があり、キレの良い医師は、少々若くてもそれは傷にならない。これは患者さんへ無形のメリットがある。

結局のところ、あの救急外来の研修医がおぼつかなく感じたのは、キレがなかったからだと思う。それが患者への信頼感に影響したのである。

年齢も関係するが、経験値もその医師に滲んでくるので、双方が関係すると言わざるを得ない。

たまに、これは精神科医だけではないと思うが、そこそこ経験年数や技量があるのに、服装や装飾品などからチャラく見える医師がいる。(例えばミュージシャンのような髪型や男性のピアスなど)

これは一部は本人の責任と思うが、損をしていると思う。あの身だしなみのせいで、良くなるものも良くならないケースがありうることに、なぜ気付かないのだろうか?と思う。

結局、医師の信頼感はある程度、経験、技量が関係するのである。だから、年齢は関係はあるが、それだけではないと言うことなんだろう。

今の自分の医師としての年齢は、若い人にも、おじいちゃん、おばあちゃんたちにも、ある程度、安心感を与える年齢に達していると思う。

医師としての技量としては、1997年頃から、急激に伸びたと感じる。それまではダメだったわけではないが、直感的にかなり難しいと思われる患者さんが、なんとかなり始めたのがこの頃からである。

ある日、うちの女医さんと今日の記事のような話をしていた。

今は良いとして・・
将来、それまで獲得していた無形の能力のようなものが、年齢のために急激に失われるといったことがあるのだろうか?


女医さんは、「先生は大丈夫ですよ」と答えたが、誰だって院長からそう言われると、そのように答えると思う。つまり、彼女のそのアンサーは社交辞令のようなものだ。

ある日、その女医さんが泣いた。

うちの病院の若い薬剤師さんが「先生、女医さんを泣かしましたね」と言うので、「事情を知らない人がそんなことを聴くと、何か勘違いされるだろう!」と答えた。彼女が泣いた理由だが、

一言で言えば、勝手に泣いた。

彼女が泣いた理由は、同じように治療しているのに、僕と同じようにならないことが立て続けに続いたことによる。つまり、薬が同じように効かなかったことが大きな原因である。(参考

その当時、うちの病院によくやってくるノラネコに彼女は自分と同じ名前を付けていた。「自分自身と同じ名前をノラネコに付ける」発想は斬新だと思う。普通は思いつかない。

そのノラネコは用心深く、なかなか彼女の手には近づかなかったらしい。

そのノラネコは僕は知り合いであり、近づいても逃げないどころか、たまに理由なく、ブルリンと体を僕の足に擦り付けるような親愛さを見せた。自分としては迷惑な話である。

だから、ダニが移ると言っとるだろうが・・

ある日、仕事が終わり車に乗ろうとすると、そのノラネコが自分に近づき、足にバンバンバンと頭突きを数発食らわせる事件が起こった。その光景を、彼女は見ていたらしいのである。

その日、それまでの心のわだかまりというか、つかえていたものが全て洗い流されたと言う。彼女が泣いたしばらく後の話である。また、彼女は泣いたらしい。

その日以降、なぜか彼女の手にそのノラネコがやってくるようになったと言う。

この話は嘘のような話だし、彼女から聴かなかったら到底、気付かないようなものである。

これを見てもわかるように、なんだかんだ言って、女医さんは負けず嫌いな人が多い。そうでないと、この世界でなかなかやっていけないのも事実である。

今日の記事は、なぜかタイトルから脱線し、ただの診療の1エピソードになってしまった。

参考
器質性妄想とトピナ
初診後、急に病状が動く話


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