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精神科の作業療法士の話

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精神疾患のリハビリテーションは、院内では作業療法、外来ではデイケアが主である。不定期に実施されるレクリエイションもリハビリの1つだが、遊びとリハビリの中間に位置するプログラムと思う。(七夕、クリスマス会、敬老会など)

作業療法は、作業療法士によりプログラム内容が検討され、長期間の一連のものとして実施されるが、途中から参加しても問題ない。一応、精神科病院の作業療法は、始まりも終わりもないタイプのプログラムだと思う。

作業療法の最も大きい効果は、特に統合失調症の場合、疾患による陰性症状の進行、つまり荒廃を防ぐ、あるいは遅らせることである。初回発病した後、治療により軽快しているような人たちでは、退院して日常生活あるいは学校、会社へ復帰するための準備期間のような要素もある。

作業療法はしてもしなくても同じように見えるとしたら、患者さんのことを良く見ていない。作業療法は参加するかしないかでは大違いである。

精神科デイケアは精神保健福祉士や心理療法士が主体でも可能だが、院内作業療法は作業療法士が不可欠である。このことは重大であり、特に彼らの報酬に関係している。

うちの病院では、毎年、多くの作業療法士の学生の実習を受け入れており、ある日、作業療法士育成の専門学校の先生が挨拶に来院され、一緒に話す機会があった。その時の話のメモを以下に記載するが、かなり前の内容で最新のものではない。(変わった部分があれば指摘してほしい)

作業療法士(OT)について

卒業まで18週間の実習が必要。作業療法の学校は、5年以上前から卒業まで4年間学ぶ(4年制)。それ以前は、3年制と4年制の学校が混在していた。

実習期間が18週間必要なのは、3年制の学校でもでも同じある。例えば精神科病院に実習に来る学生は、1年、2年、3年、4年生が来るので、学生の1回の実習期間はまちまちである。全国に179学校あるが徐々に増えている。

就職だが、(当時の話だと)だいたい求人は10倍以上来る。そのうち実質は2~3倍。就職率は100%。日本の発祥は昭和38年。法律は40年から。

(以上、メモ終わり)

作業療法士とOTA(作業療法助手)がいないと、作業療法を実施しても作業療法の点数は算定できない。ある時期、特に地方では作業療法士の募集が難しい状況が続いていた。相対的に精神科病院の求人と、卒業生の数のバランスが崩れていた。またこれは重要だが、精神科病院で働くことを避けられていた面もある。

そのようなこともあり、精神科作業療法士の報酬が高騰し、薬剤師の報酬と差がない状況が生じた。例えば、21歳の新卒の作業療法士に対し、420万の年俸などである。

日本は慢性的な就職難と言うが、当時、作業療法は3年制の学校もあるのに、高校生の父兄が就職があるかどうかもわからない専門性の乏しい4年制大学に行かせるのが不思議でならなかった。実際、精神科病院関係者は、そのような事情を知っていたため、精神科医や薬剤師、あるいは看護師さんの子供(特に女性)を作業療法士にさせる家庭も結構みられていた。(注意:作業療法の学校は学費は安くはない。軽く年間100万を超えると言う。また、一般の大学よりカリキュラムやレポートなどもハードらしい。)

現在は、作業療法士の学校も増えたので、需給が緩み、一時ほどの高額な報酬は支払われなくなっている。(地域にもよる)

うちの病院では、毎年のように学生が実習に来るので、一時より募集は遥かに楽になったが、必要な人員以上はいらない。その理由は彼らの報酬に関係している。

学生の実習をなるだけ受け入れているのは、精神科病院の中の様子をもっと若い人に知ってほしいからである。かつて精神科病院が彼らに敬遠されていたのは、精神科病院の中での仕事内容や統合失調症の患者さんの実際が知られていないのも大きいと思われたからである。

これからなるとしたら、精神科病院関係では精神科医か薬剤師が良い。薬剤師に関しては、私立大学がかなり薬学部を開設したことや、今後、調剤薬局の診療報酬が削減される方向に行くこともあり、報酬の状況が変わって行く可能性がある。

僕が初めて作業療法士を見たのは、1987年頃である。それまでは、精神科病院では作業療法らしきものは院内で実施していたが、肝心の作業療法士がいなかった。当時、作業療法士になった人は、人にもよるだろうが、けっこう出世している。(その人は、現在、大学教授になっている)

1990年頃の作業療法士は、まだ報酬面で評価が不安定だったと思う。特に公的病院やそれに準じる民間病院である。

当時、この話は結構面白いと思うのだが、同じ病院内の女性の心理療法士と作業療法士が給与やボーナスの明細を見せ合って話していた。彼女らの話では、

心理療法士の方が給与が断然高い。こんなことはおかしい、信じられない・・

と言うものである(2人の意見が一致)。なぜこのような奇妙なことになるかというと、学歴が大きく影響するからである。心理療法士は院卒になるので、一般の4年制大学卒を超える水準から始まる。一方、作業療法士は専門学校卒になる。

ところがである。精神科病院への診療報酬への貢献度は、心理療法士より作業療法士の方が遥かに高い。そういう理由で、民間の精神科病院では作業療法士は高い報酬が得られたのである。

つまり精神科病院では、作業療法士は欠員が出ると診療報酬が著しく減少し深刻な事態になるが、心理療法士に関しては、診療報酬面の影響がかなり少ない。

特に女性の場合、作業療法士と言う職種は給与も安定しており悪くないと思う。特に夜勤がないのはポイントが高い。(精神科医や看護師は夜勤がある。精神保健福祉士も稀に輪番日では夜勤をする病院がある。)

しかしながら、精神科の作業療法士は、まず精神科病院が新規に開設することはないことや、精神科病院は斜陽産業なので、長期的に良いかどうかは不明である。


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