木箱ECT(無麻酔下のECT)の実施の際に、パルスオキシメーターでSPO2を測定すると、けいれん直後、この数値が低下している時間などほとんどないことがわかる。
つまり呼吸が回復後、ルームエアだけで、あっという間(2~3秒以内)にSPO2は正常値まで戻る。
したがって古典的ECTでは、呼吸が回復直後、酸素を与えるのはほぼ無意味である。(それくらいSPO2低下時間は短い。呼吸が戻った直後には既に回復している)
2008年5月の過去ログで、おそらく麻酔科の医師から、古典的ECTで痙攣を起こした後、呼吸が回復する理由は「二酸化炭素が溜まるから」と指摘を受けている。(謎の多血症より)
つまり、チアノーゼは呼吸停止により酸素化が不良のために生じるが、それが原因で呼吸が回復するわけではない。二酸化炭素分圧の上昇が呼吸中枢を刺激し、呼吸が戻るのである。
古典的ECT直後のSPO2の急回復は、ECTによるけいれん時に、血中の酸素化が低い時間はかなり短いことを示していると思う。
また、ECT時の著しいチアノーゼは、二酸化炭素が急激に末梢で増えたことを反映している。一般に、ヒトが自分で1分程度呼吸を止めたとしても、チアノーゼなど来ない。あのチアノーゼは全身性にけいれんが起こったからこそ生じるのである。
そのことは、ECTの失敗例(つまり通電してもけいれんが生じないケース)ではチアノーゼは起こらないことを見てもわかる。
赤血球内のヘモグロビンは、肺で酸素を取り入れ運搬するが、組織では二酸化炭素が相対的に多いために、赤血球内に移動した二酸化炭素は炭酸脱水酵素によってHCO3-とH+に変化し、酸性化する。その結果、ヘモグロビンは酸素を離して、組織に供給されるのである。
このようなことから、一連の木箱ECTの終了するまでの時間(普通30秒から~40秒。長い人で1分10秒程度)を考慮すると、組織レベルでの酸素化不良の時間は見た目よりずっと短いことが想像できる。
参考
精神症状身体化の謎
木箱ECTとサイマトロン
ECT以後改善したこと
治療スケジュールを記載した紹介状(この記事では明確にしていないが、mECTをしてほしいと紹介状に記載している。結局だが、ある事情がありその病院ではサイマトロンではなく、木箱ECTで実施、全快した。サイマトロンを実施できる病院は、現在は少し変わっているかもしれないが、木箱ECTもできるよう準備している。その理由は、サイマトロンはパワー不足で効かないこともあるからである。サイマトロンは今後、バージョンアップした機種に変わっていくと考えられる。したがって、上記の「木箱ECTとサイマトロン」の記事に出てくる院長の話は真実と言える)
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木箱ECTとSPO2
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