かなり前だが、外来診察中、ある若い男性患者さんが、
サッカーボールを蹴った時、なんとも言えない妙な感覚がある。
と話した。非常に興味深い表現だったので、詳しく聴いてみると、蹴った際に、ボールに力負けするような「ぐにゃり」といった足首の感覚があるという。
だからといって痛みはなく、それなりに蹴ることができるが、力のある強いボールは蹴ることはできない。
彼は球技だけだけではなく、他の運動もあまり得意ではないらしい。
これは今考えてみると、自閉性スペクトラムでみられる「発達性協調運動障害」から来るものと思われる。うまく筋緊張が伝わっていないというか、運動するには不十分な筋緊張しかないので、そのような奇妙な感覚になるのだろうと思う。
普通、そのような奇妙な感覚があったとしても、このような診察場面で、それを話す人はかなり稀ではないかと想像する。
その理由だが、ちょっとその時思ったのだが、一般に、「他人がボールを蹴った感覚」がわからない以上、その人の相対的感覚、つまり「奇妙な感覚」など意識できない。
たぶんだが、彼は「身体感覚の過敏性」も伴っているので、そういう表現ができたのだと思う。
自閉性スペクトラムは、能力の凹凸を伴うスペクトラムを形成する症候群なので、この「発達性協調運動障害」がないか、ほとんどないケースでは、「身体感覚の過敏性」が結果的に功を奏し、スポーツで成功する人も存在すると考えている。
たとえば、常人を外れた微妙なコントロールでボールを投げられるとか、ボールを蹴られるなどである。
つまり、文字通りスペクトラムになっているので、そのあり方により、様々な人たちが存在するのであろう。
重要な点は、表現型は変わっても、集合体としての疾患特性は類似点がみられることだと思う。
参考
70%の確率
ウオシュレットが壊れた話
スポーツで大成するアスペルガーは存在する
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ボールを蹴った時の妙な感覚
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