「怒りっぽい」という精神症状はセロクエルとデパケンRの組み合わせでうまくいきやすい。
「怒りっぽい」背景疾患はいろいろであるが、いかなる疾患でもある程度の効果があるようである(もちろん、セロクエルが合わない人もいるが)。
セロクエルの適切な量は個人差が大きい。例えば平凡に処方すれば、
セロクエル 200~300mg
デパケンR 400~600mg
くらいだが、ずっと少ない量で良い人も多い。50~100mgでも、服用するかしないかで大違いと言う人もいる。
ある時、広汎性発達障害の人にセロクエル25mgを半錠だけ就前に処方したら、「1日中、眠過ぎる」と火が出るように文句を言われた上、メモを取られた。メモの理由だが、統合失調症の薬を自分に投与されたから(のようである)。
一般の患者さんは、継続して診ている主治医の目の前でこんなことはしない。今後の治療関係に悪影響があると思うからである。だいたい、セロクエルは確かに統合失調症の薬だが、適応外処方でいろいろな疾患に処方されることは最初に説明している。(これは相手の感情の想像性の欠如から来る)
敏感な人では少量でも副作用が出る。しかし、かなりの量を服用できる人もいるのがセロクエルの特徴である。
セロクエルは一般に鎮静的な非定型抗精神病薬とされているが、従来の抗精神病薬の鎮静的な薬物群に比べると、非常に鎮静的とまではいえない。従来の鎮静的な抗精神病薬とは、例えばコントミン、ロドピンなどである。
むしろ、セロクエルの攻撃性や対人接触性の改善などが好影響を与えている。興奮にももちろん効くが、デパケンRを併用することで、相補的に効果を発揮するように見える。
テグレトール、ラミクタール、トピナなどの抗てんかん薬やリリカも「怒りっぽさ」を改善しうるが、上記の2剤が処方しやすい点で優れている。(リリカも抗てんかん作用を持つ)
症状が改善すると、最初に家族が良くなったことに気付く。外来でも受付の人や調剤薬局の薬剤も容易に気付くほどの変化が起こる。愛想が良くなるのである。また些細なことで腹を立てない。
最初に挙げたセロクエルで火が出るように怒った人だが、平凡に少量のデパケンRだけで驚くほど改善した。あれほど効くなら、最初からデパケンRだけ処方しておけば良かった。
このような人は落ち込んでいるように見えても、最初からSSRIやサインバルタなどを使うのはリスキーである。ある種の奇異反応?が生じ、怒りが爆発することがあるからである。(ラミクタールでさえこのタイプのリスクがある)
また、ラミクタールのように中毒疹が出やすい薬は、実際に出た後の本人の反応が予測できないので相当に処方し辛い。医師としては、今後の治療が続くことを主眼に置くべきであろう。
やはり薬に弱く、しかも怒りっぽい人は、セロクエルやデパケンRは処方やすいと言える。
参考
デパケンRと広汎性発達障害
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とにかく怒りっぽい人とセロクエル
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