Quantcast
Channel: kyupinの日記 気が向けば更新
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2198

精神科に行ってみては?と言われた話(前半)

$
0
0

今回の話は、前回の「精神保健指定医の更新と医師免許のことなど 」と少し関係がある。

ある患者さんは、心療内科にかかっていたが、うつ状態が全然よくならず、仕事もできなくなり、遂に退職せざるを得なくなった。

その患者さんの話は非常に興味深いと思った。その患者さんの話の範囲では、その心療内科のドクターは真の精神科医ではなさそうなのである。実際、外来の待合室では内科の患者さんの方が遥かに多かったらしい。しかし、胃カメラなどはしなかったようなので、専門性の高い内科医でもなかった。

普通、心療内科クリニックでは、胸部レントゲン写真すらとれない。血液検査もできないところもある。したがって精神科医が標榜する心療内科クリニックは、内科という言葉は入っているが、実質的に内科は難しいのである。ただし風邪を引いたと言われた時、それに対する薬くらいは処方する。その程度である。

しかし、一般の患者さんが心の病を治療を希望して、心療内科にかかった際に、まさか実質的に内科医がやっているとは気付きにくいのではないかと思った。あちこちの心療内科にかかったことがある人は妙な点に気付くかもしれないが、生まれて初めて心療内科にかかった人は難しいと思う。

過去ログで、心療内科にかかる際に、外来にある医師紹介で「精神保健指定医」と記載されている医師は間違いなく精神科医という話が出てくる。これはまさにその通りで、精神保健指定医は専門性が高く取得まで時間がかかるし、現況、他科の医師が簡単に取得できるようなものではない。

ずっと以前だが、このブログで、本物の(内科医ではない)心療内科医がいるのに、「精神保健指定医」を持っているかどうかを基準にするのはおかしいという、たぶん心療内科医からの「その通り」と思えるコメントがあった。

実は、真の心療内科医が存在するのである。しかし全ての心療内科クリニックを集めても、真の心療内科医局出身者はかなり稀ではないかと想像する。たとえば、真の心療内科では成り立たないような診療報酬体系になっていることも、国がそのようなことを想定しているように見える。

昔は、心療内科の医局は精神保健指定医を取得することを許していなかった。たぶんだが、心療内科医のアイデンティティにかかわるからであろう。(今はどのようになっているか詳しくない)

したがって、心療内科を標榜して、真の心療内科医であることもありえる話である。この場合、その医師は精神保健指定医は持っていない。

しかしだ。
現代社会で、精神病を診ないメンタルヘルスの医師が成立するのか?と言う問題がある。


患者さんは、自分が心を病んだと思った際、自分が精神病かどうかを判別し心療内科を受診したりはしない。

自分は過去に、長く真の心療内科で治療していて、後に統合失調症であると判明し、結果的に捨てられた患者さんを診るようになったことが何度かある。

患者さんは精神を病んで受診するわけで、ほぼ全ての精神疾患について扱えるのが理想である。精神を診るのに、統合失調症が診断できないというのも大問題だと思う。その理由は、その患者さんが統合失調症かどうか?は、予後を含め、極めて重大な見立てということもある。

心療内科は地方にもよるが、ほとんどが精神科医が標榜しているものの、一部に真の心療内科医、あるいは内科ないしほかの身体科に追加して心療内科を標榜しているケース、あるいは、素人と言ってよい内科医が心療内科を標榜していることがある。それは、心療内科は知識がなくても簡単にできると思われているのもあると思われる。

特殊な例として、クリニックの医師のうち、精神科の診療経験が多い元精神保健指定医で、今は指定医ではない人たちがいる。これは、もはや指定医は必要ではないと感じ、5年に一度の更新をせず指定医を放棄したケースである。

今では、クリニックでも診療報酬に影響するので指定医だけは持っていた方が良かったと思うが、以前はクリニックの医師であれば、特に必要ではないように見える時期が長かった。

指定医の更新の講習は、1日缶詰状態で、途中退出が許されていない。また、講習の場所によると、前日から当地に行かなくてはならず、影響は1日では済まないのである。クリニックの精神科医にとって大変な制約である。講習は休日開催もあるので、そこを選べば問題がないが、どこもそうではないので都合がつかないこともある。また、土日を使って講習に出席したくないという精神科医の心理もある。(休日開催は不人気)。

そのようなこともあり、ごく一部ではあるが、クリニックの精神科医は、指定医を放棄してしまったのである。

クリニックの医師は何らかの病気のために閉めざるを得ないことがある。これは皆が思っているほど稀ではなく、閉院後、週に数日でも精神科病院に勤める際に、指定医はあると便利である。指定医があるかないかでは、待遇にかなり差がある。

一時期、障害年金の診断書(新規・更新)に、精神保健指定医番号を記載する欄があったが、現在はなくなっているので、指定医でなくても記載可能ということなんだと思う。これは指定医でない場合、この欄を空欄にせざるを得ず、患者さんになぜ空欄なのか質問された際に体裁が悪い。そういうこともあり、制約がないものをなぜ書かせるのか苦情が出たのではないかと想像している(実際は知らないが)。

かつて、自立支援法の診断書も精神保健指定医に制限してほしいという話が出ていた。これは、自立支援法の診断書の内容が酷いものが多々あったことや、実質的に身体科と言ってよい疾患を拡大解釈して精神科の診断名を付け、自立支援法を利用されると予算に影響することもあった。

しかし、自立支援法を記載する医師を制限することは、いろいろ問題も多いのである。その理由は、自立支援法の診断書は、「てんかんG40」で小児科医や脳神経外科医も申請するケースもあるからである。

また、特にクリニックの場合、自立支援法の診断書を書けない医師がしているとしたら、そこにかかっている患者さんは非常に不利益を被ることになる。これは精神保健福祉法の理念にも反する。

このようなこともあり、自立支援法の診断書は、指定医以外の医師が書いてはならないと言うものではない。

つまり、自立支援法も障害年金診断書も精神福祉手帳も指定医しか書けないものではないのである。

ただし、ここが重要だが、内科を主体にして心療内科も標榜している人は、これらの患者さんにとって有用な福祉を積極的に紹介しないのではないかと思われること。実際、最初に紹介した患者さんは、自立支援法なる国の制度があり、医療費が安くなることを知らなかった。

そう思う理由は、それらのタイプの心療内科からはこれらの診断書があまり提出されないという話を聴いたことがあるからである(一方、奇妙な、あるいは出鱈目な診断書をガンガン出す医師もいると言う話。)

(後半に続く)

参考
精神科の新患の予約制について
精神科と心療内科は
素人の心療内科クリニック
精神科ではSOAPで書かれたカルテをあまり見ないこと
このブログを読んで、精神科医になりたいと思う人へ
アスペルガーと前頭前野


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2198

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>