今回は、次回と一連の記事である。長すぎるので前半、後半に分けており今回は前半。
先日、「薬を飲み忘れたら、気づきますか? 」につけられたコメント欄に、向精神薬の離脱症状は、このブログで書かれているほど稀なものではなく、非常に多いと言う内容の反論があった。
元々、このブログでは、薬物の離脱について触れた記事は、過去の精神科医によるサイトより遥かに多い。
例えば、パキシルの変更の効きにくさや中止後に残る音体験、ドグマチールで意外に減量しにくい人がいること、向精神薬の減量は増量より危険が伴うため、専門の精神科医に減量スケジュールを任せる方が良いなどである。その他、より減量しやすい薬にいったん変更するなどの記事もある。
つまり、このブログは向精神薬の離脱症状はないとは言っていない。ただ、患者さん全体からすると、離脱に非常に苦しむ人はインターネットで喧伝されているほどはいないことを指摘している。
これは長く臨床に関わっている精神科医の実感なので、患者総数(つまりN数)がかなり多い経験と言う意味で信頼性が高い。その人にあるから非常高い割合の人たちにあると思うのは、わからないではないが、科学的な思考とは言えないと思う。
インターネットで離脱の記事を書いたり、掲示板にアップすると自然に同じような人たちが集まってくる。また、過去ログには、インターネットの人たちは相対的に忍容性が低い人が多いこともあり、「それはインターネットの人たちだからです」というフレーズもある。
以下は、精神科雑誌で僕が創刊号からとっている「精神科治療学」の各月の特集記事である。星和書店ではバックナンバーが買えるようなので、興味がある人は希望の号を取り寄せたら良いし、最近の号であればアマゾンでも買える。(参考)
精神科治療学の各月の論文は特集記事に関連するものが多く載せられ、それ以外の症例報告的なものも何本かある。そのいくつかある症例報告のタイトルまではわからないが、少なくとも、特集のタイトル名に「離脱」ないし「離脱症状」なる文字は1つもない。それも12年間もの間、1回もないのである。
インターネットに喧伝されているほど酷い離脱症状が存在するなら、離脱症状にテーマを絞った特集がないわけがないであろう。それが自然な考え方だと思う。
精神科治療学
2014年 29巻 / 特集記事
1 統合失調症の退院支援の進め方―17の視点と工夫―
2 精神障害患者の身体合併症―「偶発的な出来事」から「日常的に注意を向けるべき病態」へ―
3 身体疾患に併発した精神障害への薬物療法 I図
4 身体疾患に併発した精神障害への薬物療法 II
5 トラウマという視点から見た精神科臨床
6 初診、初期治療―何を見逃してはならないか― I図
7 初診、初期治療―何を見逃してはならないか― II
8 生活をみる認知症診療
9 精神科における困難事例にどう対処するか? I
10 精神科における困難事例にどう対処するか? II
11 その患者に睡眠薬は必要か―眠れないという訴えにどう対応するか―
12 精神科医が診る睡眠関連障害
2013年 28巻 / 特集記事
1 治療エビデンスに乏しい精神疾患に遭遇したときどうするか
2 おとなのADHD臨床 I図
3 おとなのADHD臨床 II
4 転帰の指標—治療の有用性をどう評価するか—
5 妊娠と出産を巡る精神科臨床—何を理解し、どう関わるか?—I
6 妊娠と出産を巡る精神科臨床—何を理解し、どう関わるか?—II
7 軽症例に対する精神科薬物療法のあり方
8 せん妄の診断と治療の現在 I図
9 せん妄の診断と治療の現在 II
10 行動制限の実際と最小化に向けての取り組み
11 早期診断・早期治療の功罪
12 認知症に対する薬物療法の課題
2012年 27巻 / 特集記事
1 精神科医の多剤併用・大量処方を考える I
2 精神科医の多剤併用・大量処方を考える II
3 精神科臨床における「頭部外傷後遺症」の評価とマネジメント図
4 正常との境界域を診る
5 成人の精神科臨床から見えてくる発達障害
6 衝動制御の障害の鑑別と治療図
7 精神疾患の典型例を学ぶ
8 不眠の臨床―精神疾患の予防・改善に向けて― I図図
9 不眠の臨床―精神疾患の予防・改善に向けて― II
10 摂食障害治療に取り組むⅠ
11 摂食障害治療に取り組む II
12 統合失調症の症状を日常臨床で見逃さないために
2011年 26巻 / 特集記事
1 職場における「うつ」―臨床現場における留意点― I
2 職場における「うつ」―臨床現場における留意点― II
3 認知行動療法と伝統的精神療法の共存と住み分け 図図
4 統合失調症患者の回復と生き方
5 現代の思春期例をどう診るか I
6 現代の思春期例をどう診るか II
7 サイコオンコロジーの現場から I ―緩和ケアにおける精神医学的問題―
8 サイコオンコロジーの現場から II ―心理・精神医学的問題―
9 境界性パーソナリティ障害(BPD)の新しい理解と援助のあり方
10 一般救急における精神科医の役割
11 脳の機能と統合失調症―新たな診断と治療への展望― I図図
12 脳の機能と統合失調症―新たな診断と治療への展望―II図図
2010年 25巻 / 特集記事
1 わが国の精神科治療のこれまでとこれからへのメッセージ―創刊25周年記念特集―
2 自殺―精神科医として何ができるか―
3 精神科医が薬を処方する前に考えるべきこと
4 統合失調症圏の様々な病像を診ぬく
5 今日の精神科臨床で出会うアディクション図
6 ADHD臨床の新展開 I
7 ADHD臨床の新展開 II
8 DSM-5ドラフトをどう考えるか図
9 「急性精神病」を再考する
10 若年性認知症に対する精神科の役割 図 図
11 診断・治療のための生活歴、現病歴、家族関係図
12 症候からみる自閉症スペクトラム
2009年 24巻 / 特集記事
1 改めてうつ病中核群を問う
2 夜,寝ている時に起こる異常行動
3 入院の診立て・判断 I
4 入院の診立て・判断 II
5 妊娠・出産・授乳の精神医学的問題(品切れですが、オンデマンドでご購入いただけます。)
6 知っておきたい身体疾患への対応図 図
7 向精神薬の「警告・禁忌・使用上の注意」
8 早期の症候と経過―病態の理解のために―
9 触法精神障害者の治療の現状と課題
10 発達障害者支援のこれから―自閉症とアスペルガー症候群を中心に―図
11 精神科医が知っておくべき神経内科の新知識―初発の際に精神症状を呈する可能性のある神経疾患―図 図
12 治療が終わること,治療を終わらせること
2008年 23巻 / 特集記事
1 精神科治療過程で有用な臨床検査
2 アスペルガー症候群と統合失調症辺縁群
3 完全寛解に至らないうつ病とパニック障害―あと一押しの治療的工夫―I
4 完全寛解に至らないうつ病とパニック障害―あと一押しの治療的工夫―II
5 インターネットを利用した精神医療
6 元々どういう人だったの?―生活史とパーソナリティへの着目―
7 「軽いうつ」「軽い躁」―どう対応するか― I
8 「軽いうつ」「軽い躁」―どう対応するか― II
9 精神科における専門外来の試み―新たな展開とその今日的意義―
10 若年事例の親への支援
11 新しい地域ネットワークにおける精神科医療 I
12 新しい地域ネットワークにおける精神科医療 II
2007年 22巻 / 特集記事
1 今日の仕事・職場への精神科医の関わり I
2 今日の仕事・職場への精神科医の関わり II
3 いま「解離の臨床」を考える I
4 いま「解離の臨床」を考える II
5 強迫の診立てと治療 I
6 強迫の診立てと治療 II
7 精神科疾患との関係が問題となる身体科病名
8 せん妄の診断と治療に関する新しい知見 I
9 せん妄の診断と治療に関する新しい知見 II
10 精神科臨床における性機能の問題 I
11 精神科臨床における性機能の問題 II
12 4大認知症疾患の臨床
2006年 21巻 / 特集記事
1 いま求められる精神障害リハビリテーション I
2 いま求められる精神障害リハビリテーション II
3 一般精神科臨床と児童精神科臨床の機能連携 I
4 一般精神科臨床と児童精神科臨床の機能連携 II
5 向精神薬の用法・用量外使用を考える
6 精神科医に必要な睡眠時無呼吸症候群(SAS)の基礎知識 I
7 精神科医に必要な睡眠時無呼吸症候群(SAS)の基礎知識 II
8 攻撃性と衝動性の評価と治療 I
9 攻撃性と衝動性の評価と治療 II
10 初老期・老年期例の診立て―初診時に診誤らないために―
11 青年期の臨床現場でいま何が起きているか―社会の変化と新たな病像―I
12 青年期の臨床現場でいま何が起きているか―社会の変化と新たな病像―II
2005年 20巻 / 特集記事
1 統合失調症の新しい治療の展望 I
2 統合失調症の新しい治療の展望 II
3 情動障害の神経科学と臨床Ⅰ―脳損傷例における情動障害の神経心理学―
4 情動障害の神経科学と臨床II―精神科疾患における情動障害の神経心理学―
5 養生と手当て―統合失調症慢性期,寛解期の“外来治療”―I
6 養生と手当て―統合失調症慢性期,寛解期の“外来治療”―II
7 摂食障害―今日的な治療と病態― I
8 摂食障害―今日的な治療と病態― II
9 「うつ病」か「痴呆症(認知症)」か?―I
10 「うつ病」か「痴呆症(認知症)」か?―II
11 双極性障害―双極性概念の拡大と治療法の発展― I
12 双極性障害―双極性概念の拡大と治療法の発展― II
2004年 19巻 / 特集記事
1 ベッドサイド神経心理学
2 治療の一環としての病名告知
3 初老期・老年期発症のPsychose
4 成人におけるADD,ADHD I(品切れですが、オンデマンドでご購入いただけます。)
5 成人におけるADD,ADHD II
6 境界性人格障害―治療技法の洗練― I
7 境界性人格障害―治療技法の洗練― II
8 パニック発作の鑑別
9 アスペルガー症候群―思春期以降の対応― I
10 アスペルガー症候群―思春期以降の対応― II図 図
11 物質依存症の現状と治療 I
12 物質依存症の現状と治療 II
2003年 18巻 / 特集記事
1 精神科における“てんかん”の診方 (I)
2 精神科における“てんかん”の診方 (II)
3 社会恐怖(社会不安障害)
4 機能するケースカンファランス
5 老年期における新しい精神科治療と家族支援(I)
6 老年期における新しい精神科治療と家族支援(II)
7 多剤併用療法を考える―新世代薬剤の登場を受けて― (I)
8 多剤併用療法を考える―新世代薬剤の登場を受けて― (II)
9 社会機能(social functioning)からみた統合失調症 (I)
10 社会機能(social functioning)からみた統合失調症 (II)
11 電気けいれん療法の新展開―その可能性と限界―
12 電気けいれん療法の実際―短パルス矩形波治療器による治療を中心に―
参考
レキソタン
星和書店の精神科治療学バックナンバーのサイト
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精神科雑誌、精神科治療学の特集
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