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ブログ8周年

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このブログは2006年7月11日に始めたので、今日でちょうど丸8年になる。明日、9年目に突入。

毎年、この時期に同じようなことを書いているが、まさかここまで長く続けるとは思わなかった。

このような言い方も変だが、なぜ止めないかと言えば、まだ重要なことを記載していないから。あとは、ぜひ続けてほしいと言う読者の方からのメールも大きい。「重要なこと」と言ってはいるが、結局は書かないかもしれない。その理由は、過去ログのどこかに書いている。

現在、日々、38000~42000程度のPVがあり、PCのみの訪問者は1日12000名くらい。記事をアップしない日と、週末はやや減る傾向があるが、それでも月間115万~120万ほどのアクセスがある。

おそらくだが、ほとんど見ている人がいなかったら、とっくに止めていたような気がする。

最初2006年7月に始めた日、自己紹介の直後の記事が「エビリファイ」である。このブログはエビリファイが2006年6月に発売された直後に始めている。これは偶然である。7月11日には3つのエントリ、

ブログ始めました。
エビリファイ
セレネースとトロペロンのアンプル


をまとめてアップしている。最初の数か月はプロフィールなどの記事が多かったこともあり、月間40くらい記事をアップしていたが、今は20弱くらいでまあまあ安定している。

記事の迫力というか、テンションが以前に比べて低いのは、あまり詳しく調べずアップしているから。忙しくて体調が思わしくない時期もあったが、極端に悪いと言うほどではないので、この8年間、空白期間はほとんどない。

精神医療はベールに包まれているところがあり、精神疾患にしろ、その治療にしろ、一般の人たちに誤解されている部分がかなりある。

また奇妙な、あるいはオカルトの考え方にマスコミも迎合して報道しているところがあるので、一般の人が、精神科あるいは心療内科にかかった方が良いのか、むしろかからない方が良いのか、さっぱりわからないのではないかと思う。

今のマスコミの報道姿勢は、「視聴者に適正な情報を提供する」と言う視点で、数十年前から、全く改善していない。

その意味では、この「kyupinの日記」と言うブログがあるかないかでは、全然違うと思うよ。

ここには、ある意味、等身大に表現された精神科医療がある。

参考
なぜ精神科医になったんですか?
ブログの記事のテンションが低い話


レクサプロのQT延長以外の補足的な話

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先日、レクサプロのQT延長についていくつか記事をアップしている。今日は主にQT延長以外の補足的な話。

添付文書的には、レクサプロは夕食後に服用する。つまり10㎎、20㎎いずれも1日1回服薬で良い。

僕はレクサプロはむしろ朝1回処方することが多いが、これは併用薬の関係で、朝1回服用すればその日はもう薬を飲まなくても良い人がいることから来る。しかし、基本的には夕方服用なのである。

レクサプロが夕方服用を推奨されている理由は、二重盲検法でパキシルと効果の優劣を評価されたことが大きいと思われる。つまりパキシルが夕方処方なのでレクサプロも夕方服用を推奨されているだけなのである。実際、海外ではいつ服用しても良いようになっている。

添付文書的にはパキシルはIR、CR錠いずれも夕方服用を推奨されている。その大きな理由は、たぶんパキシルは比較的眠いSSRIだから。SSRIを老人に投与する場合でも、パキシルは夕方投与する方が(他のSSRIよりも)メリットが大きいと言われている。

レクサプロも眠い人は眠い。添付文書では、傾眠129例(23.5%)、と記載されており、4人に1人は眠さを感じる。しかし、その理由で夕方投与が良いとまでは言えない。実際、眠さを訴える人は朝飲んでも夕方飲んでも、量を5㎎まで減らしたとしても、眠さはあまり変わらないと言う人が多い印象。

レクサプロは半減期が30時間を超えるため、いつ飲むかはあまり日中の眠さに影響しないのかもしれない。(それでも眠さを訴える人が朝服薬だった場合、夕方あるいは就前の服薬に変更する。そうしないと、この精神科医は何を考えているんだろう?と思われるため。まして、添付文書に夕食後服用と書かれているのに。)

結局、レクサプロで眠さを感じない人は、いつ飲んでもかまわない。

レクサプロの前回の記事で、SSRIの等価換算をアップしている。その際に、レクサプロ10㎎=ジェイゾロフト100㎎という換算を記載しているが、公式(日本版)には以下の通りである。ここではたぶんジェイゾロフト100㎎を基準にしている。

ジェイゾロフト 100㎎
パキシル 40㎎(IR)
パキシルCR 50㎎
デプロメール 150㎎(=ルボックス)
レクサプロ 20㎎
(以下、SSRI以外の抗うつ剤)
サインバルタ 30㎎
リフレックス 30㎎
トレドミン  100㎎
レスリン  300㎎
テシプール 6㎎ 
トリプタノール 150㎎
トフラニール 150㎎
アンプリット 150㎎
スルモンチール 150㎎
ノリトレン 75㎎
アナフラニール 120㎎
プロチアデン 150㎎
アモキサン 150㎎
ルジオミール 150㎎
テトラミド 60㎎


となっている。

なぜ、時々レクサプロ10㎎=ジェイゾロフト100㎎という換算を聴くかといえば、おそらく、薬効的にジェイゾロフト114㎎とレクサプロ10㎎には有意差がなかったことによる(のではないかと・・)。

このようなことから、ジェイゾロフトの日本での推奨用量および上限投与量は、パキシルはともかく、レクサプロ、デプロメール、リフレックス、サインバルタの上限投与量を考慮すれば、少し低すぎると言うことになる。ジェイゾロフトは世界的に薬効、忍容性についてかなり上位に評価されているが、200㎎まで投与するという条件でそうなっているのである。

SSRIの副作用で比較的多くみられるはずなのに、あまり患者さんが訴えないものに性機能障害がある。おそらく、恥ずかしいので訴えにくいのではないかと思われる。

性機能障害はSSRIの中でも生じる比率が異なり、最も生じやすいSSRIは、パキシルとジェイゾロフトが双璧。この2つはなんと80%で生じると言われている。それに比べ、レクサプロはこの2つに比べると性機能障害がまだ起こりにくいSSRIとされている。それでも38%程度に生じる。

レクサプロの添付文書では、どの程度に生じるのかよくわからない書き方をされている。

泌尿器・生殖器1~5%未満 排尿困難、頻尿、尿蛋白陽性、射精障害
泌尿器・生殖器1%未満 勃起不全
泌尿器・生殖器頻度不明注2) 尿閉、持続勃起症、不正出血、月経過多


といった感じである。少なくとも、上記の40%弱とはかなり乖離がある。

なお、SNRIのサインバルタはレクサプロよりは少し高く、41~42%程度である。おそらく、最も性機能障害を生じにくい新しいタイプの抗うつ剤は、リフレックス(レメロン)で、それでも25%程度である。

3環系抗うつ剤は性機能障害が起こりにくいかというとそうではなく、たぶんサインバルタやレクサプロ程度には生じていると思われる。

なお、うつ状態の際に少量のエビリファイを使うと回春する傾向がある。ただし、エビリファイはうつ状態には単剤投与はできない。エビリファイは他の抗精神病薬による高プロラクチン血症を緩和させる作用があり、エビリファイのD2部分アゴニスト作用が好影響を与えているようには見える。(参考

現代社会のうつ状態における性機能障害の評価、考え方の難しさは、一部の人々に広汎性発達障害あるいはその辺縁に位置する「性同一性障害」も関与しているように見えること(Gender Identity Disorder, GID)。これは本来、薬物由来ではないが、これら向精神薬の過敏性から、処方後の経過に影響しているように思われる人もいる。

SSRIの中で性機能障害の生じる率が異なるのは、まだよくわかっていないことに入るのではないかと思う。その理由だが、セロトニンを上げることが性機能障害を生じさせるのなら、最も力価が高く、ピュアなSSRIであるレクサプロこそ最も性機能障害を起こしやすいと考えられるから。ところがそうなっていない。

元々、うつ状態自体が性機能障害の原因になっていることがあり、評価が難しい面はある。ドグマチールは高プロラクチン血症などを生じ、その関連から性機能障害がみられる。

性機能障害の生じるメカニズムは1つではないこともあり、複雑になっているのではないかと思われる。

ワールドカップ2014、ドイツ優勝

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日本時間の2014年7月14日に行われたワールドカップ決勝で、ドイツがアルゼンチンを破り優勝した。南米大会でヨーロッパの国が優勝したのは初めてである。

なお、その逆、ヨーロッパの大会で南米のチームが優勝したことは過去に1度だけある。1958スウェーデン大会ではブラジルが優勝している。

今回の大会は、緒戦からブラジルは地元開催のプレッシャーがかかっている印象で、全般プレーが硬かったと思う。特に決勝トーナメントの最初に当たったチリはコンディションも良く、PK戦になる直前の延長後半、チリの選手のシュートがバーを叩くという肝を冷やすような展開だった。

PK戦は、おそらくチリの方が気楽だったと思うが、ブラジルキーパーの神が下りているようなプレーでかろうじて勝利している。その理由は、ブラジル選手も結構PKを外していたから。PK戦で勝利が決まると、ネイマールは感極まって泣き出してしまった。ブラジルの若きエースはそれほどまでプレッシャーを受けていたのである。

その辺りに、コロンビア戦のあのようなプレーで大怪我をした伏線があったように思う。接触プレーが多いサッカー選手は、背後から膝で強い接触があったとしても腰椎を骨折するなんて滅多にあるものではない。あの時間はほぼ勝利が決まりかけていて、ネイマールも、やや安心していると言うか、緊張が緩んでいたんだと思う。それくらい試合中に精神的に疲労していたのである。

今回のブラジルの選手だが、ネイマールやオスカルはともかく、他の選手では傑出していると思える選手が少なかった。いつものブラジルより小粒の印象だった。フッキは、若い頃J2の札幌に移籍し、毎回試合を観ていたのでよく知っている。最初頃は、今よりずっと痩せ型で、プレー中に熱くなりやすく、しばしばイエローやレッドカードをもらっていた。実際、退場させられ、監督の柳下から肩をドーンと叩かれ怒鳴られたこともある。(当時のJ2の札幌戦は全試合テレビで観戦)

最初頃はこのブラジル人はまだ若いのに凄い選手とは思ったが、メンタル的にダメダメで、まさか、その後セレソンに選ばれるとは思わなかった。Jリーグでの凄さと言う点では、浦和レッズを突然やめ、中東のチームに移籍したエメルソンの方が上回っていたと思う。

フッキもまた、東京ヴェルディを突然やめてポルトに移籍している(これもエメルソンと同じく、礼を尽くしていない移籍)。ブラジル選手は基本的に出稼ぎのスポーツ選手なので、J1でもJ2でも稼げれば良い。だから、J2やJFL在籍だったブラジル選手が大成することは時々ある。

長々と何が言いたいかと言うと、フッキのような選手がレギュラーの時点で、ブラジルは終わっているのではないかと(笑)。

チリとのPK戦だが、フッキなら外しかねないと思って観ていると、やはり外した。おそらく、ここぞと言う時の責任感が乏しいのである。ネイマールの爪の垢でも煎じて飲んでほしい。

今回、ブラジルは惨劇と言えるほどの大敗をドイツ戦で喫した。ジーコによれば、ブラジルは0-3で負けることも滅多にないらしい。あの試合は、観ていた人はわかるが、まるで日本とアジアの弱い国との戦いのようなドタバタ劇だった。確かにクラスが違っていたと思う。1-7はプロ野球でも大敗のスコアである。

この試合の後、非常に興味深いと思ったこと。それはドイツ国民の心理である。ワールドカップの試合後、勝利したら街に繰り出して大騒ぎになるのが普通だが、その試合の直後は全てが控えめでそんな風にならなかったという。

つまり、あれほどの歴史に残る大勝だったのに、普通には喜べなかったのである。それはもちろん、ブラジル国民の気持ちを思いやっていることからくる。

実際、過去のドイツの名選手の1人は「7-1で勝たなくても、4-0で十分だった」などとコメントしている。

「ドイツがブラジルに勝つ」という内容を思い浮かべるのは表象と言うが、「ドイツ人はドイツがブラジルに勝つと思っている」と言う内容を思い浮かべるのは、表象の表象と言われる。メタ表象とも言われるものである。

メタ表象が可能になると、ヒトは他人の心の中を表象できるようになる。つまり、他人にも心があると言うことが理解できるようになる。これができるためには、「心の理論」という脳機能ができてなくてはならない。心の理論をつかさどる脳の座は、脳の前方にある。

ある自閉性スペクトラムの男の子(とはいえ、凄く幼いわけではない)は、「ヒトが殺人しないのは、死刑ないし長く刑務所に入っていないといけないから」と理解していた。

全然、違うだろ!と言いたい。

ヒトが殺人事件を起こさないのは、「死刑になる」などはむしろ枝葉末節なものである。死刑に処されるかどうかは、殺人犯には重要なことかもしれないが。

殺人事件の被害者には、殺される瞬間の恐怖、疼痛など大変な苦しみがある。また、その人には愛する家族や友人がいるかもしれない。たとえ家族がいなかったとしても、その人の今後の人生の楽しみを奪うことは許されることではない。そのような状況を考えると、到底殺人などできないと考えるのが正常な感覚である。(心の理論が欠落しているか、非常に不十分だと、それに考えが及ばない)

生きている価値があるのかないのかをいつも考えているような自閉性スペクトラムの人は、自分の命は極めて軽い。しかし、「心の理論」が不十分なので、他人も自分と同じくらい命は軽いと思っているか、そのようなことを全く考えていないのである。かくして、事件は起こるときは起こる。やはり「自分が死刑になる」だけの抑止力はあまりにも弱い。実際、その目的だけで、線路に他人を突き落した事件が何度か起こっている。

そういえば前回大会で、ウルグアイのスアレスがゴール線上のボールを手ではじき、その結果、スアレスは一発退場、ガーナにPKが与えられたが、エースのギャンが外してしまい、その結果、PK戦でウルグアイが勝利すると言う事件があった。(過去ログ参照)。

あの事件後、結構インターネット上で議論が行われていたが、PKを与えられたギャンが外したのが悪いと言う意見には絶句。あのようなプレーで、スアレスを肯定ないし称賛するのは、上に挙げたように、あまりにも「心の理論」が欠落しているか、弱いと思う。

スアレスの事件は、上の話と本質的に同じようなもので、日本人の中にあのプレーを称賛する人がいること自体、近い将来、日本風のおもてなしなどできなくなるのではないかと危惧する。

あのスアレスのありえないプレーやギャンのPKは、ガーナの全国民が観ていたのである。

今回の7-1の勝利の後、ドイツ国民には、あのブラジル国民の悲しみが良くわかっていたので、素直に喜びを爆発できなかったのであろう。

決勝のドイツvsアルゼンチン戦は、アルゼンチンが上手く戦い好試合になった。アルゼンチンも十分に勝利できるチャンスがあった。あのような試合で延長の末1-0でのドイツの勝利は、大いに喜べたに違いない。

今大会のドイツは素晴らしく、優勝は妥当な結果だったと思う。南米大会のジンクスを破ったことも意義が大きい。

参考
スアレスのハンド(ウルグアイvsガーナ)(コメント欄も参照。どのような人たちが批判しているのかよくわかる。)
希死念慮とモリッシー

2014年10月1日から始まる外来の多剤投与制限の薬物一覧

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2014年6月に外来で多剤投与を行ったケースの調査が行われている。これは、「向精神薬多剤投与の報告について」という新設された診療報酬にかかわるルール沿ったものである。

向精神薬多剤投与を行った保険医療機関は年に1回、向精神薬の多剤投与の状況として、「向精神薬に係る報告書」を地方厚生局に7月に提出する必要があります。ただし、6月に受診した外来患者に対し向精神薬多剤を行った保険料機関のみ提出することとなっています。

うちの病院では、たぶんだが(他のドクターの処方状況を把握していないため)向精神薬のうち、問題になる人は睡眠薬だけと思われる。おそらく自分だけで、3~4名くらいだと思う。

思ったのは、抗不安薬、抗うつ剤、抗精神病薬は外来レベルでは問題にならないこと。それは、自分はデパス、ソラナックスはあまり投与しないタイプだからである。抗うつ剤と抗精神病薬も制限が3剤だが、元々3剤の人がいなかった。(レスリンをあまり処方しないのもあると思う)

眠剤は困る人は困る。しかし奇妙な処方にはなるが、なんとか整理が進み、3人程度困る人がいる状況。特に入退院を繰り返すレベルの人。入院中は外来ではないので、自由に処方できる。しかし、外来だと規制されるため、退院までに整理しなければならない。

ここで重要と思うのは、早期退院を推奨しているのに、

向精神薬の制限により早期に退院できなくなる話。

になること。また長期入院患者さんを中間施設やアパートへの退院を推奨しているが、

長期入院患者さんの処方内容と、投与制限の矛盾。

と言うものもある。もちろん全ての人にはあてはまらないが。

睡眠薬は我ながら変な処方だが、大抵の人でなんとかうまくいった印象である。例えば、10月1日以降、

レンドルミン 0.25㎎
ドラール  15㎎
ロゼレム 4㎎


などの処方はできなくなる。これは、実は、ロゼレムに変更しかけてうまくいかなかったような処方で、これで臨時に眠剤を追加しなくてよくなったので、半錠のロゼレムもそれなりに役割を果たしていると思われそのままになっていた。このタイプ処方は、ロゼレムを中止し、ほぼうまくいくことが多い。(もし不眠があれば、その他の既に処方している眠剤を増やす)

上記の処方はロゼレムはともかく、半減期が短いタイプと長いタイプの併用なのでそれなりに合理的な組み合わせだと思う。

病状がまとまっておらず不眠が酷く、かなり多剤になっている眠剤処方の場合、このような過激な処方で乗り切る。

ロヒプノール 4㎎
ハルシオン  0.5㎎


これはある意味、イソミタールなどを除いたベンゾジアゼピン内では、最強レベルにある処方である。またこの処方は、高齢者には処方できない。ハルシオンの添付文書には、用法及び用量として、

1. 不眠症
通常成人には1回トリアゾラムとして0.25mgを就寝前に経口投与する。高度な不眠症には0.5mgを投与することができる。なお、年齢・症状・疾患などを考慮して適宜増減するが、高齢者には1回0.125mg~0.25mgまでとする。

2. 麻酔前投薬
手術前夜:通常成人には1回トリアゾラムとして0.25mgを就寝前に経口投与する。なお、年齢・症状・疾患などを考慮し、必要に応じ0.5mgを投与することができる。

と記載されているので、0.5㎎も処方可能となっている。この処方で、案外乗り切れたのでルール違反の人は著しく減少した。

「やればできるじゃない」と思ったが、質的に、以前3剤以上処方より悪化しているような・・だって、処方自体が暴力的だし。この処方が、より有害と言う意味ではなく、品がないと言った感じ。(笑)

ここで、それぞれのカテゴリーをアップする。基本的に、抗不安薬、睡眠薬はそれぞれ2剤まで。抗うつ剤、抗精神病薬(非定型抗精神病薬も含む)は3剤までである。以下、先発品の薬剤名でアップする。(一般名では読者の方によくわからないと思うので)

抗不安薬
エリスパン
グランダキシン
コレミナール
コントール・バランス
セディール
セパゾン
セルシン
セレナール
ソラナックス
デパス
ハイゼット
メイラックス
メレックス
メンドン
リーゼ
レキソタン
レスタス
レスミット
ワイパックス
アタラックス
アタラックスP

睡眠薬
アモバン
エリミン
サイレース・ロヒプノール
ソメリン
ダルメート
ドラール
ハルシオン
エンザリン・ネルボン
マイスリー
ユーロジン
リスミー
ルネスタ
レンドルミン
ロラメット・エバミール
ロゼレム
トリクロリール
イソミタール
エスクレ
バルビタール
フェノバール
ブロバリン
ベゲタミン
ラボナ

抗うつ剤
パキシル
デプロメール・ルボックス
ジェイゾロフト
レクサプロ
サインバルタ
リフレックス・レメロン
トレドミン
アナフラニール
アモキサン
アンプリット
スルモンチール
テシプール
テトラミド
トフラニール
トリプタノール
ノリトレン
プロチアデン
ルジオミール
レスリン・デジレル
ベタナミン

非定型および定型抗精神病薬
リスパダール
ジプレキサ
セロクエル
ルーラン
クロザリル
ロナセン
エビリファイ
インヴェガ
ゼプリオン
アポプロン
インプロメン
エミレース
オーラップ
クレミン
クロフェクトン
ウインタミン錠・コントミン糖衣錠
ウインタミン細粒
スピロピタン
セレネース
ドグマチール
トロペロン
ニューレプチル
ノバミン
バルネチール
ハロマンス(ネオペリドール)
PZC糖衣錠・筋注
PZC散
ヒルナミン・レボトミン
フルデカシン
フルメジン
プロピタン
ホーリット
ロドピン
(販売中止になっているものは除外)

読者の方で、自分のジェネリックの薬がどのカテゴリーに入っているのかわからない人は、まず自分のジェネリック薬をグーグル検索し、一般名を調べた後、一般名で更にグーグル検索すると最初に先発品が挙がっているのでわかる。

外来ではあまり生じないと思われる注意点がある。今回の向精神薬処方制限は一般名で規制されているので、これが微妙に異なる場合、同じような薬でも、双方使うと2剤にカウントされることがあるもの。

インヴェガとゼプリオン

アタラックスとアタラックスP

ウインタミン錠(コントミン糖衣錠)とウインタミン細粒

セレネースとハロマンス(またはネオペリドール)

PZC糖衣錠ないし筋注とPZC散

フルメジンとフルデカシン

などは注意したい。

また、ベゲタミンAおよびB錠は、クロルプロマジン塩酸塩、プロメタジン塩酸塩、フェノバルビタールの合剤なので、1種類投与しても、睡眠薬と抗精神病薬の2剤にカウントされる。特に睡眠薬にも該当するのは非常に痛い処置であり、外来ではかなり使いにくくなったと考えられる。

今回の記事を書いていて、最も驚いたこと。それはネルボンが実は先発品だったことである。このネーミングはあまりにもジェネリックしている。

参考
外来における向精神薬投与制限
外来処方制限における微妙な向精神薬

注目のココナッツウォーターtropicoco全国発売: PR

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トロピココは、ココナッツ由来のミネラル豊富なナチュラル派のためのスポーツドリンク

ネコの気持ちわかりますか?

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先日からアップしている子ネコたち。「三毛猫の子」特集。

ちょろちょろ動き回るので、あまり良い写真がない。この写真はちょうど、左に首を振ったため、顔の部分だけピンボケしている。



三毛子ちゃんと授乳していた猫との2ショット。この2匹は親子ではないみたい。この子猫は大きさからすると、月齢で2か月くらい?



親猫のところに行き、びた~とくっついて寝ている。これを見た嫁さんが大喜び。



ふむふむ・・
親猫はほとんど白で、頭と耳の部分だけ三毛になっている。それに対し子猫は、見事に三毛猫している。

ジャパニーズ・ボブテイル(Japanese Bobtail)は、偶然だろうが、なかなか美しい色合いだと思う。



お母さんネコの全体を撮影。少しもの悲しげな雰囲気だった。



子ネコだから、睡眠時間もまだ長いんだろうと思う。ネコは夜行性だけど。

親猫がくるっと尻尾を巻いている。それと、子ネコの鼻に注目。



あっ!こっち見た。

子ネコがいつの間にかいなくなっている。

参考
授乳する母ネコ

kyupinのブログのタイトルについてfeat.九条良源のブログ

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時々、「九条良源のブログ」を読んでいる。彼はまだ20歳代で、僕の感覚だとかなり若い。

彼はシステムエンジニアらしく、記事も理系的なものが多いが、専門的なものに終始せず、妙に力が抜けて、いつもリラックスした文章である。読みやすいし、僕よりずっと文章はうまいと思う。

彼はうつ状態になったこともあり、このブログを時々読んでいるといった記事もある。僕の記事の感想のようなエントリもあり、時々、気恥ずかしい気持ちで読んでいる。

彼が最新の記事で、kyupinのブログのタイトルが適切でないことについて言及している。(以下抜粋)

ちなみに、この場を借りてkyupin先生に言わせてもらおう。あなたの記事のタイトルがいつも適切でないのは、記事が完成する前(つまり、書き始める時)にタイトルを付けるからそうなるのである。

これは全くその通りで、いつも書きつつ、

このタイトルに、この内容は変だよなぁ・・

と悩み始める。しかし書き終える頃には、書き上げた達成感もあり、

まぁいっか!

で終わることが多い。どうせ、どのようなタイトルでも読む人は読むだろうし。(みたいな)。

全く恥の上塗りなんだけど、一応、タイトルの再考はする。しかし、あまりにタイトルが長くなるのも嫌なので、あれこれと考えているうちに時間も迫り、ワケがわからなくなり、ちょっとピントがずれたタイトルでアップしてしまうことが多い。

その記事に、いくつか主題があるような時は更に難しい。自分で言うのもなんだが、

頼むから、1つの記事に色々なことを書かんでくれ!

かくして、タイトルだけでなく、どのテーマに入れるかも悩むのであった。

結局だが、自分は国語の能力が低すぎるのではないかと・・

実は、このkyupinのブログは読みやすいのかどうかすら賛否両論ある。一応、読みやすいように書いているつもりだが、推理小説のように余韻をひくと言うか、ある意味を込めて暗示的に終わっているエントリもあるから。

つまり、下手な人が妙なテクニックを使うので、大変なことになっている部分がかなりあるのではないかと。

たとえば、前回のネコの記事のタイトルは、

ネコの気持ちわかりますか?

だが、これはざっと読むと別のタイトルの方が良いように見える。あのタイトルは、もう少し具体的に言うと、「母ネコと子ネコの気持ちが想像できますか?」だが、あのタイトルの答えなんてなく、僕は読む人の考え方に任せるスタンスである。

ただ、あの記事のタイトルは、「ワールドカップ2014、ドイツ優勝」の内容が理解できない人もいるようなので、その補足と言うか、アンサー的な意味も持たせている。

母ネコについて。
普通、ネコが1人っ子を出産することは極めて稀と思われる。おそらく、あの母ネコの子供たちは次々と誰かに貰われていき、最後にあの三毛の子が残っているのであろう。そのような想像を含めて母ネコは「少しもの悲しげな雰囲気だった。」と記載している。物憂げどころではないからである。

三毛の子ネコについて。
この三毛の子も、近い将来、母ネコの元を離れなくてはならないことに気付いていて、「びた~とくっついて寝ている」のかもしれない。

最後の写真
この記事の最後に「子ネコがいつの間にかいなくなっている。」と書いている。ところが、よく見ると、見返り美人している母ネコの後ろに三毛の子がいるのがわかる。

つまり、いつのまにかいなくなっても、子ネコたちはどこかにいるのである。(里子に出ても、そこでは元気にしている)。

あの最後の写真は非常に面白いと思ったので、上の2匹のネコの気持ちの想像も含めて、「ネコの気持ちわかりますか? 」というタイトルにしてみた。

またこのタイトルは、ナショナルジオグラフィックチャンネルの「ザ・カリスマ ドッグトレーナー ~犬の気持ち、わかります」のキャッチフレーズを捩り、ネーミングしている。

つまり、エルトン・ジョンのアルバム「ピアニストを撃つな」のようなものである。(←意味不明)

参考
W杯準決勝ドイツvsブラジルとメタ表象

外来における向精神薬投与制限 Q&A

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Q1.フェノバールやベンザリンを睡眠薬ではなく、抗てんかん薬として投与した場合、コメントの記載で、睡眠薬から除外することは可能ですか?

A1.コメントを記載してもダメです。

Q2.睡眠薬で定時に2剤を処方し、屯用で1剤の睡眠薬を投与した場合、3剤以上の睡眠薬に該当しますか?

A2.該当します。

Q3.リスパダールコンスタを実施していて、内服でリスパダールを投与した場合は、2剤とされますか?

A3.この場合は、2剤とされません(つまり1剤)。添付文書上、リスパダールコンスタの一般名はリスペリドンと記載されているため。

注意;ただし、リスパダールコンスタは非常に高価な薬剤のため、これに併用してリスパダール内服薬を処方した場合、悪意があるとみなされレセプトで査定されうる。(コンスタに内服薬を併用するくらいなら、すべて内服で処方しなさいと言う意味。)

Q4.転院してきた患者が規定に反して、多剤だった場合はどうですか?

A4.特例として、このようなケースでは薬物調整の初診後6か月間に限り免除されます。(ただし、初診日の記載が必要。このルールがないと、多剤の患者を新患で診る病院がないという事態になりかねない。)

Q5.向精神薬の切り替えの際、上乗せ併用したために規定に反したケースはどうですか?

A5.向精神薬の切り替えの際に、上乗せで種類の数をオーバーしたケースでは、連続した3か月に限り許可されます。ただし、年2回まで。開始する前に向精神薬多剤投与に該当しない期間が1か月以上連続していることが必要。(診療報酬明細書の摘要欄に、薬剤の切り替えの開始日、切り替え対象となる薬剤名、新しく導入する薬剤名を記載。)

付記;このルールは、6か月の猶予をお願いしていたが却下され3か月になったようである。向精神薬の切り替えで半年もかけるなと言うことであろう。しかし3か月に制限されたため、年に2回のトライが可能になり、かえって良かったとみることもできる。

Q6.臨時投与する向精神薬はどのように扱われますか?

A6.臨時に投与した場合とは、連続した投与期間が2週間以内または14回以内のものを言います。1回投与量は1日量の上限を超えないこと。なお、中止期間が1週間以内の場合、連続する投与とみなされます。注意点として、抗不安薬および睡眠薬は臨時投与でも種類に含めます(Q2参照)。(診療報酬明細書の摘要欄に、臨時投与の開始日の記載が必要。)

Q7.向精神薬投与の特例はありますか?

A7.抗うつ剤および抗精神病薬に限り、精神科の診療に係る経験を十分に有する医師として届け出たものが、患者の病状によりやむを得ず投与を行う必要があると認めた場合は例外で、抗うつ剤、抗精神病薬を3剤を超えて処方できます。(たぶん4剤まで)。

(解説)この例外は抗不安薬、睡眠薬には適応されないので、外来レベルの患者ではメリットにならない。また、経験を有する精神科医なら多剤投与も許されるのか?と言う基本的な疑問もある。「普通は逆だろう」と思う。

Q8.向精神薬を外来で多剤投与した場合、精神科病院ないしクリニックにはどのようなペナルティがありますか?

A8.心療内科ないし精神科クリニックの場合、処方箋料が680円から300円まで減算されます。精神科病院の場合、処方料が420円から200円に減算された上に、薬剤料が100分の80に減算されます。また、精神科継続外来支援・指導料が算定できません。また、向精神薬多剤投与を行なった保険医療機関は年に1回、向精神薬投与の状況を地方厚生(支)局長に報告しなくてはなりません。

(解説)
結局、今回の向精神薬多剤処方のペナルティは、外来の処方を整理すれば、金銭的には問題にならないほど小さいと考えられる。(多剤の人が数名残ったとしても、と言う意味)むしろ、最後の報告義務の方が大変だし心証も悪い。不名誉の方が重大。

Q9.院外処方では、向精神薬多剤の処方箋の薬剤料は100分の80に減算されますか?

A9.減算されません。(当たり前。調剤薬局には責任はない上、減算されるような処方箋は受け付けないこともありうる。ただし、それが法的に問題があるかどうかは詳しくない。)

参考
外来における向精神薬投与制限
外来処方制限における微妙な向精神薬
2014年10月1日から始まる外来の多剤投与制限の薬物一覧


パキシルの減量手法および抗うつ剤の催奇形性について

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パキシルは当初、パキシルIR錠のみ発売されたが、その後、離脱症状などの問題が生じたこともありCR錠が発売されている。過去ログではCR錠について、以下のように記載している。

パキシルCRは、急激に血中濃度が上昇しないよう工夫されており、日中の血中濃度の変動が少ない。これは腸溶性フィルムコーティングがされていて、胃での溶解を防御し十二指腸で溶解されるからである。またフィルムコーティング溶解後も、2層の放出制御技術により一気に放出されないようになっている。

パキシルIRのTmaxは4~5時間だが、CR錠は8~10時間と約2倍である。半減期に関しては、この2つの剤型に差がなく13~14時間とされている。パキシルはIR錠では分割できなくはないが、非常に小さい量で変更するのは錠剤で扱う限り困難である。パキシルの減量で提案されている手法として、

パキシル1錠をジュース100ccに溶かし、最初の3日は99cc飲み、その後3日ごとに98cc、97cc、・・・と1ccずつ減量する。

もし既に寛解状態に至っているなら、このスピードで減量すれば、離脱症状は非常に出現しにくいと考えられる。しかしゼロになるまで300日くらいかかる。この手法ですら離脱症状が出る人は特異体質と言えるであろう。

パキシルは減量できるかどうかと、その後の悪影響ををよく検討してから減薬すべき薬物である。その理由は、特に幻聴がかつてあったような人は、減量を契機に爆発的に幻聴が再現することもあるため。その後、パキシル中止後に病像が複雑化する傾向がある。

そのような人はパキシルを漸減にしろ、中止すべきではない。その理由は、その後の対応が難しいからである。(参考

自分から見ると、大多数のパキシル服用者は中止が可能である。しかし、結局それ以外の抗うつ剤を服薬する、あるいはせざるを得ない人は、パキシルを中止する意味があまりないと思う。

パキシルという薬は不思議なことに、CRよりIRがずっと良いと言う人が一部にいる。それは多分、急激に血中濃度が上がることでテンションを上げ、結果的に抗うつ作用が増強されているのではないかと考えている(私見)。

パキシルについて、他に変更した方が良いと思われる人は、挙児希望の女性であろう。パキシルの催奇形性は、その他のSSRIに比べリスクがやや高いようである。

WFSBP(生物学的精神医学会世界連合)版、単極性うつ病の生物学的治療ガイドライン第1部、大うつ病性障害の急性期と継続期の治療、2013年改訂版では、以下のように記載されている。

TCA(3環系抗うつ剤)に関するデータベースは大規模で、催奇形性はみられず、周産期と出産後に問題行動が増加するリスクもないようである。(Nulmanら、1997;Simonら、2002;Kallen、2004;Davisら、2007;Pearsonら、2007)。しかし、新生児の適応困難に対しては、集中治療が必要となるかもしれない。

SSRIについては、入手可能なデータの基盤が最もしっかりしているのはシタロプラム(セレクサ。本邦未発売)とジェイゾロフトに関してであり、奇形、子宮内死亡、主要な先天異常のリスクの上昇を示唆するものはなかった。プロザックとパキシルに関しては、催奇形性リスク(血管と心臓の奇形のリスク)がいくらか考察されているため、これらの薬剤は妊娠中に開始されるべきではない。SSRIによる治療を特に妊娠第三期に受けた母親から生まれた新生児の約3分の1は新生児適応不良と呼ばれる症状パターン(神経質、筋緊張低下、啼泣が弱いまたはない、他の原因を排除した後の呼吸困難、低血糖、低いアプガルスコア、てんかん発作など)を示す。(Korenら、2005)

SNRIについては、データ基盤はいまだ非常に限られている。現在までのところ、催奇形性リスクの上昇は示されていないが、子宮内死亡のリスクの上昇が考察されている(Tuccoriら、2009;Nakhai-Pouら、 2010)。同様にブプロピオンに関してもデータがまだ非常に限られており、催奇形性のリスクは今のところ見出されていない。

MAO阻害薬は高血圧クリーゼを招く可能性があるため、妊娠中は禁忌である。

妊娠中の抗うつ剤の服用は、多くの臨床場面で適切であり、出産前の暴露リスクと、薬剤の中断による母体側の再発リスクとを天秤にかけて熟慮すべきである。また患者の配偶者を意思決定プロセスに関与させることは非常に重要である。精神療法とECT(電撃療法)は重要な治療選択肢として考慮すべきである。

(終わり)

参考
向精神薬と妊娠、授乳のテーマ
パキシルと妊娠
日本未発売の向精神薬と催奇形性の話
ラミクタールと妊娠・出産

精神科医と薬物療法のパラドックス

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今日の記事は、今思いついて即行で書き上げるので非常に短い。

過去ログで「どの薬でも同じようなもの」などと言う精神科医は下手ではなく、一定の水準以上に達していると言うものがある。

このことだが、どのような薬でも優れた医師なら、その人の症状にフィットしやすいと言うのはある。

サッカーでいうところのカウンターである。

タイミングよく適切な量で処方するので相乗効果があるのではないかと思われる。もちろん、オカルト的フォースのようなものもあるかもしれない。また、変更の際の薬物の離脱も出にくい。

逆に言えば、薬物療法が上手くない医師ほど正確な処方が必要である。

これぞ、パラドックス。

(おわり。約8分)

小中学校時代の日教組の教師の話

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このブログのコメント欄では、子供の頃、日教組が強く偏向した授業が行われた話がよく出るが、自分の小中学生時代はそうではなかった。むしろ逆だったと思う。

日教組の教師もいたのはいたが、人数も少なく、他の教師から差別も受け、肩身が狭い思いをしていた。少なくとも、自分が見ていた範囲ではそうだった。

差別・冷遇されるという内容だが、中学校の場合、自分の得意な教科を割り当ててもらえないのである。したがって、授業中は極めて不機嫌で、どうでも良いような態度で教えていた。したがって、日教組の教師はおしなべて不評だった。

良くないと思ったのは、いつも冷遇されているので、その冷遇の内容を子供たちに話してしまうこと。そのため子供にもその教師が日教組なのを知ることになるし、教師同士のドロドロした人間関係などもわかってしまう。おそらく、その教師は同情を引こうとしたのだろうが、むしろ逆効果だったと思う。

日教組の教師は全然関係ないところで反撃していた。体制側の教師の子供への体罰が酷かったからである。

彼の得意技は、マシンガンビンタであった。

あのような両手を使う「高速ビンタ」は、日頃、腕の筋肉を鍛えていないと、なかなかできない。

それも男の子だけではなく、女の子も関係なくマシンガンビンタするのである。子供はもちろん吹っ飛び、鼻血を出していた。今だったら懲戒免職だけに留まらず、マスコミにも叩かれるレベルだったと思う。

最初はなぜあのような些細なことで、あそこまで切れて、体罰するのかわからなかったが、その後、どうも教師の子弟に限り激しい体罰をしていたのが判明、謎が氷解した。叩かれた子供がクラスの皆に、なぜああなったかを話したからである。この時ほど、教師の子供でなかったことを感謝したことはない。

その後のクラスの友人の調査では、100%教師の子供が被害を受けるわけではなく、たまたま彼の虫の居所が悪い時に、偶然、無関係にマシンガンビンタされる子供もいるという話だった。

その後、彼は最もしてはいけないことをしてしまった。

うちの市には精神科病院は1軒もなかったが、隣の市に当時、恐れられていた精神科病院があった。誰も行ったことはないのだが、よく教師が「悪さをするとあそこに連れて行く」などと言っていたので、漠然とした「恐怖の館」というイメージがあったのは確かである。しかも、いったん入ったら、周囲には碌に人は住んでおらず、徒歩では帰って来れない辺鄙な場所にあるという。

話は少し逸れるが、精神病院にこのようなイメージがあったのに、何の支障もなく精神科医を自分は選んだので、啓蒙というか、精神医療の詳細を知ることは非常に重要だと今からは思える。

話を戻すが、ある中学生が粗相をした際、なんとその教師がその精神病院まで診察を受けさせるために連れて行ったというのである。もちろんその子供の親には連絡していない。

どう考えても、むしろその教師が診察を受けるべきであった。(おそらく話を聞いて終わりだと思うが。)

その子供の両親が激怒したのは言うまでもない。その子供は、悪ガキではあったが、特別な悪ガキというほどではなかったし、当時、その子を精神病院に連れて行くのは、畑が違うと言えた。精神病院に受診する人は、子供は皆無だったからである。当時は、中学3年生までは小児科が診ていた。

その子の父親は市内でも実力者であり、いろいろな政治力もあったのであろう。翌年、そのマシンガンビンタの教師は、とんでもない田舎に転勤になった。

彼はたぶん管理職にはなれなかったと思うが、定年まで勤め上げ、退職金も貰ったという話だ。

実は、同じく日教組の若い教師がおり、彼もいつも折れたバットと竹刀を持って授業に来た。彼はいつも体罰をするわけではなかったが、たまにすることもあった。折れたバットで頭を叩かれると、とんでもなく痛いらしい(実話。友人の談話から)。

彼も何らかの理由で転勤させられたが、やむを得ないのではないかと。日教組の教師は数は少なく、たまにストをして授業に来ない日があった(教師の誰が日教組なのかわかる事件)。その自習になった時間に担任が来て、「急遽、お休みされました」くらいに説明するが、子供たちにはなぜ来なかったか、わかるのである。

このような話を書くと隔世の感がある。

またコメント欄の内容などから、日教組の強弱は、地域差が大きいことに驚いている。

参考
僻地の予防接種
体育教師が小学生を殴った話
小此木家のチャーリー君3歳

自殺と精神疾患について

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自殺は何らかの精神疾患ないし状態像が原因になっていることがほとんどである。これは真の心(脳)の健康状態では、希死念慮や自殺既遂がないことを意味する。(参考

WHOによると、毎年800万人が自殺で亡くなっていると言う。日本人の自殺率は10万人に対し25人で、世界的にこれを超える国は旧ソ連の国や東欧にいくつかみられるものの多くはなく、日本は自殺大国になっている。(2014年のWHO資料から)

アジアでは、日本を超える自殺率の国は、スリランカと韓国だけである。韓国と日本は自殺率において大差はない。

タイは仏教から来る生まれ変わりの思想があり、「現世がダメなら自殺して来世にかける」という安易な考え方から自殺が多いという話を聞いたことがあるが、日本に比べかなり少ない。10万人当たり5人にも満たないため、ほとんどの欧米の先進国よりずっと低いようである。

つまり、自殺の衝動や決断は、思想より脳を含めた体調の方が遥かに影響が大きいと言える。

以下、自殺の背景となる精神疾患。(WHOの資料から。2004年)

1、気分障害(主にうつ病) 30.5%

2、薬物乱用(主にアルコール依存症) 17.1%

3、統合失調症 13.8%

4、パーソナリティ障害 12.3%

5、その他の診断 22.3%

6、診断なし 4.0%


となっているが、現在の診断基準は状態像を優先する面があり、自閉性スペクトラムは個別疾患として挙がっていない。(参考

この統計で特筆されるのは、薬物乱用(主にアルコール依存症)が高いこと。これは、旧ソ連圏の自殺率の高さを説明しうると思われる。

参考
希死念慮の謎
うつ病と自殺
脳神経外科病棟の窓の外に防護ネットが張ってあったこと

木のベンチで休む「ぶち」

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黒白のぶちがベンチで休んでいるところをあまり見たことがなかった。この日、木のベンチで休んでいるのを発見。

お母さんネコはよくベンチで寝ていたが、このぶちはいつも木の根っこや草むらで寝ていた。

この写真では、うまく手と足を畳んで休んでいる。嫁さんによると、この畳み方がかわいいと言うか、良いんだと。



この日、ぶちが古い木のベンチで休んでいたのは、あまりにも暑かったからだと思う。ここは木陰で涼しい上に、木の上だと暑さも和らぐのだろう。

むっくり起き上がった。



目の前に僕がいるのにあまり気付かないような動き。

右を見て、左を見るみたいな。



ところが、急に起き上がり、こちらに向かって下りてきた。

背中にやや茶色の毛があるのがわかる。したがって、このぶちは厳密には三毛猫?なんだろう。



こちらは、もちろん後ずさり。ネコって、足をよく揃えると思う。

彼女は餌でもくれるのかと思ったらしい。最近、道の駅で買った「いりこ」でも持ってくれば良かったと思ったが、よく考えると、いりこは青魚なのであまり良くないのかもしれない。

嫁さんにこの話をしたところ、「キャットフードを買ってきて、ポケットに入れておけばよかったかも?」と笑うが、そこまではしない。



突然カメラがバッテリー切れになり、大急ぎで車にダッシュし入れ替え。戻ってくると、最初とは逆向きでベンチの上で寝ていた。



ちらっと、こちらを見た。

それ以上の反応なし。自分は餌はくれない人と認定されたもよう。

この写真には嫁さん爆笑。僕がネコの写真を撮ると、必ずこの写真が入っていると言う。



目をそらして、引き続き休養中。

このネコ、何を考えているだろうな?とは思う。

このぶちは風呂にも入らないのに、いつも小奇麗にしている。

強迫の落とし穴

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強迫神経症ではなくても、多くの精神疾患に強迫症状は合併しうる。近年、特に言われているのは自閉性スペクトラムと摂食障害であろう。

双方、精神所見がある場合、どちらを優先すべきだが、明白に自閉性スペクトラムがあるのならそちらを優先すべきである。そのように診断することで、精神科での疾患統計がより正確なものになる。

自閉性スペクトラムを優先すべき主な理由は、自閉性スペクトラムは生来性のものだが、一方、強迫症状は生来性とは言い難いからである。ただし、物心ついたときに既にそれっぽい所見が散見されることはある。

典型的な統合失調症の人は膨大な患者数に比し、強迫を合併している人は少ない印象。稀と言ってよいかもしれない。

若い患者さんの場合、強迫は人生を変えるほどの大きな過ちを犯す伏線になる。

これは犯罪を言っているのではない。例えば日常での大きな判断に影響を及ぼし、結果的にとりかえしのつかない結末をもたらす。

ある患者さんは、自分の体から奇妙な臭気を発していると思われてならなかった。そこで、遠方まで専門医を訪ね、いろいろ相談し手術を受けたのである。その時の主治医は積極的に手術は勧めなかったらしい。しかし、結局、本人に押しきられた。

このタイプの主訴、つまりその所見の一般的な評価が曖昧なものは、受診する医療機関により、対応が変わるものだ。

おそらく臭いなので、最初から精神科を受診する人は少ないと思うが、もし精神科にかかっていれば、やや重い神経症ないし、自閉性スペクトラムに合併しうる精神所見として、強迫に有効な抗うつ剤を主体に治療を開始されるはずである。

強迫は根幹の部分はいくらか残遺する傾向があるが、精神科治療により症状が改善すれば、少なくとも大きな決断を躊躇うくらいには緩和する。その後、本人が家族の意見を参考にしたりし、好ましい結果になることも多い。

ところが、美容整形などに受診した場合、営利目的の部分が健康保険診療に比べ大きいこともあり、手術を勧められることもありうる。改善という視点に限れば、特定の手術をすれば臭気は緩和することも多いからである。その実施の根拠については、美容整形的には間違ってない。

過去ログに、精神科患者は手術をするかどうか迷うときは保留し、安易に手術を受けるべきではないといった記事がある。これはその人の精神症状が影響し、その身体所見の過大評価や、どうしても治し、健康になりたいという強迫症状があるからである。

非の打ちどころがない完璧な身体は幻影と言ってよく、人間というものは完璧には完成されていないのが普通だ。ターミネーターじゃあるまいし人間に完璧な人などいない。

上に挙げた患者さんは、本人によれば、手術が不調に終わり、今もその後遺症に悩んでいる。また、果たして実際に手術が不調に終わっているのかも不明である。その後遺症(違和感・疼痛)の治療のために、日本各地を行脚している状況にある。

これは、完璧を希求したその精神症状にこそ、落とし穴があったと言わざるを得ない。

近年、問題になっているレーシックによる後遺症なども、これにいくらか関係していると思われる。レーシックに魅力を感じるのは、眼鏡をかけて矯正することは、完璧な治療ではないからである。

一見、完璧な手術で、その後が楽になるような手法は、時に反作用というべき困難が伴うことは稀ではない。

人間は楽をして良くなろうとするその心の過程に、油断というか、落とし穴に落ち込みやすい罠が存在している。

おそらく、人生はそういう風になっている。

先日、テレビで旭硝子という世界的メーカーの話が紹介されていた。旭硝子グループのスピリットは、

易きになじまず難きにつく。

といったものだという。これは非常に良い言葉で、本質的に今回の記事と同じことを言っていると思う。その理由だが、落とし穴に落ち込む原因は、本質的な改善の道筋ではなく「易きについている」から。

今回の記事では、「難きにつく」ということは、本質的な精神科の治療を進めることであろう。

参考
慢性疼痛と手術
醜形恐怖、顔の片側の腫れ、エネルギー
美容整形でのお手伝いを妄想・・
患者さんからのショートメールと線維筋痛症
人の判断に興味がある

器質性幻聴とカタプレス

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ある日、自閉性スペクトラムの患者さんが転院してきた。彼は人生の早期に、既に広汎性発達障害の診断を受けていた。

ところが、ある時期から、自分の悪口を言うような幻聴を伴うようになり、エビリファイを処方されている。エビリファイの量は9㎎程度で多くはない。しかし、多少は弱まったものの、幻聴は止まりはしなかったと言う。

彼によれば、幻聴は止まっていないが、エビリファイはこれ以上副作用の関係で増やせなかった。

初診時、偶然、自分が診察しその後2週毎に再診するように伝えた(現在、自分の持ち患者が多くなり過ぎたため新患は診ない方針だが、それでもなぜか毎週3~4名は新患を診ると言う不思議。今週は7名)。

彼の薬はたいして多くはない上、この量だと副作用もないためそのままにしていた。僕は初診日は薬を変えないことにしている。

次回の受診時、なんと幻聴が止まっていたのである。10年程度持続した幻聴が何もしないのに止まる。このようなことがいつもではないが時々ある。たぶんこのタイプだと、3~4人に1人くらい。(実際に数えたことはない)。

なぜ止まる人とそうならない人がいるのか不明である。いつもその理由を考えているが、今も謎のままだ。

罹病期間に関係すると思っていたが、20年来の幻覚が止まったことがあるし、発病以来止まっていない人も止まったことがあるので、必ずしも罹病期間のみとは言えない面がある。これは何もせず変化した数だが、もっと大きな薬物変更の後、遮断した例もある。

最初の青年だが、初診後、2年くらい止まっていたが、ある時、体調が悪化したためか幻聴が再燃した。その内容は止まる以前と全く同じだったらしい。この辺りは、極めて自閉性スペクトラム的である。(真の統合失調症の人はいったん止まった場合、再燃すると幻覚の内容が変わることが稀ではない)。

再燃した際に、エビリファイを増やすとか、新しい抗精神病薬の追加や切り替えは選択しにくい。元々が自閉性スペクトラムの人ということもあるし。

自閉性スペクトラムを、エビリファイ単剤でコントールできているのは秀逸である。これは前医による優れた方針だと思う。

僕はよほどルーランを微量とか、ジプレキサを1㎎だけ追加する方針も考慮したが、結局その方法を採らなかった。この患者さんは、何かの拍子に簡単に収まりそうだからである。

また、別の方法として、デパケンRかデパケンシロップもなかなか良い方針だと思う。僕はデパケンシロップ併用の方針に傾いていた。

しかし、彼は既に2年間も診ていたので、なんとなく感覚が掴めており、ちょっと閃いてカタプレスを追加することにした。2年間、なにも薬を変えていなくても、月に1~2回ずつ診察していれば、本人とのいろいろな言葉のやりとりから、その人の特徴というかイメージは掴める。主治医とはそういうものである。

カタプレスは使ったことがある人ならわかるが、同じように高血圧に使用されるインデラルに比べ、相対禁忌もなく、徐脈や低血圧もまず生じない使いやすい薬である。しかもキレが良いと言うメリットもある。

カタプレスの禁忌は、

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

だけである。

約2年ぶりに再燃した幻聴はカタプレス1錠(75μg)で簡単に消失した。結局、抗精神病薬は追加せずに幻聴を遮断できたのである。

参考
カタプレスのアメリカでの適応について
アナフラニールの点滴と器質性幻聴
器質性妄想とトピナ
広汎性発達障害は真剣に治療しようとすると滅茶苦茶な処方になりやすいという話


カランビン自然動物公園の動物病院

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いつもネコばかりアップしているので、嫁さんから、(読者の方から)ネコ好きだと思われるかも?と指摘され、今回は趣向を変えて?オーストラリアの写真を紹介。

下の写真のように、公園内の動物病院の様子が見学できるように案内がある。道沿いには、治療を受ける動物の写真が多く展示されている。



コアラも交通事故や山火事で多くの死亡が出ており、今はより厚く保護されている。(日本のテレビでも時々特集されている)



幼い動物は、自然動物公園内では一般公開されていない。







外からガラス越しに見学できる。時間帯によると中にも入れるのかもしれない。

この時間、病院内には人も見えず、見学客もあまりいなかった。ガラーンとした感じ。



オーストラリアはとにかく裕福であり、施設や薬も揃っている。

もし自国民が困窮し医療も充足していなかったら、このような動物の医療施設の建設は苦情が出るであろう。



オーストラリアは広大な国土に加え、国民が2000万しかいないため、裕福ではあるものの、一定の医療水準を維持するのは案外難しいのではないかと思う。

例えば、英国の医師免許があれば、オーストラリアではそのまま免許が使えるらしいが、そうでもしないと、なかなか先進的な医療施設に見合う医師の人材が揃わないと思われる。



動物病院の医師でさえ、相当数必要な国なのに。

聾唖なのに幻聴がある不思議

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稀に生来性の聾唖の人が精神病を発症し、治療する機会がある。

先天性聾唖があり知能が正常域にある人は、精神病状態さえなければ、日常生活はそつなくこなしている人がほとんどである。これは良く考えると当たり前である。

彗星が出現した時期に、世界中が大変なことになるSF小説がある。彗星を肉眼で見た人が突然、失明すると言うストーリーであった。

当時の世界は、食虫植物を改良し肉を生産していたため、失明した人が次々に農場から逃げ出した食肉植物に喰われるのである。その植物は移動できるため、失明した人は植物により容易に捕えられていた。

そのSFでは、彗星の夜、偶然、彗星を観察しなかったため、失明を免れた人が主人公であった。また、生来性または後天的に視力を失っていた人たちも、そのSF世界では冷静に行動できたのである。

一般に知能が正常域にない人に加え、そのようなハンディキャップがない人でも、視力や聴力がないか極めて損なわれている人々では、かつて「心因反応」呼ばれていた精神病状態が生じやすい。

その理由は、結局だが、脳にインプットされる情報が少ないことが大きいと思われる。その状況が精神面に混乱を招きやすいのである。

ある生来性聾唖の人を、発病後、寛解に至るまでずっと自分が治療を行っていた。その人を診ていると、どう考えても、先天性に聾唖があるにもかかわらず、幻聴があるとしか思えないのである。

過去ログでは、「幻聴は単に聴覚的なものではなく、エネルギーのようなものだ」という内容が出てくる。したがって、片方の耳からしか聴こえない幻聴は、存在しないか、極めて稀である。(一例、報告もの)

つまり、幻聴と言う幻覚は脳内の異常から来るため、元々、聴覚が保たれているかなどあまり関係がないのである。これは脳内のドパミンの過剰状態が生じた際、どのような事態を来すかを考えると、その病態がイメージできる。

ただし生来性聾唖の人は、健康な人に比べ、その異常事態がより大混乱を来すように思われる。あまりにも非日常だからである。

その患者さんは極端に薬に弱かったため、ロナセンの少量で治療を行った。平均して4㎎くらいしか使わなかったと思う。

その患者さんは、改善のスピードもスローテンポで、それでも少しずつ改善していたが、当初の1年くらいは、健康状態(聾唖は伴う)がいかなるものなのか、すぐにはわからなかった。それは、常に空笑と言葉にならない独語があったからである。

その独語は、シュナイダーの言う「対話形式」をとり、幻聴の存在を考えないと説明がつかないものであった。またその内容が、手話でわかるのが凄いと思った。

その後、次第にロナセンを減量し、今でも2㎎だけ使っている。その患者さんは、退院後、既に3年以上経過しているが、今では独語や空笑はなく、日常生活も結構自立している。

僕は、今の状況に至るまでの経過をずっと診てきたので、あの人には聾唖だが「幻聴」があったと証言できる。

それには証拠がないと言われればそうだが、ずっと入院も含め診てきたことを総合すると、そうとしか説明ができないのである。きっと、日常臨床とはそういうものなんだと思う。

参考
広汎性発達障害と心因反応
シュナイダーの1級症状

クロザリルを勧められること

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アメブロメールで、「主治医からクロザリル(クロザピン)を薦められていますが、どのようにしたら良いでしょう?」と言う質問が来る。

この機会に、今後同様な質問がないように、ここにまとめて返答したい。

まず重要な点は、クロザリルは統合失調症に対する最も優れた抗精神病薬であること。未だかつて、クロザピンを超える抗精神病薬は出現していないと言われる

しかし、血液系の副作用を持ち、その副作用が出現した際には大変な事態になるため、精神科医だけでなく、施設的にも血液内科と連携できるとか、院内に検査室があり即座に検査できるなどの大きな制約がある。

また、通常の白血球数が少ない人は投与できない。(一般には問題がない程度の減少でも不可)。クロザリルは単剤投与が基本である。

そのようなこともあり、クロザリルを処方できる病院は県内にいくつもないのが普通である。うちの病院は、クロザリルは永遠に処方できない。ある程度、病院の規模が大きく、血液内科と綿密に相談できる病院でないと管理できないのである。

色々な勉強会や学会発表を見聞きした範囲では、クロザリルに変更し、以前より精神症状が改善したというものが圧倒的に多い。やはりクロザリルは重篤な副作用があるものの、傑出した抗精神病薬と言わざるを得ない。

また、統合失調症の薬物治療は長期に行われるものなので、大きな用量を投与せざるを得ない難治性統合失調症の人の場合、長期投与による多飲水、水中毒に対しても、クロザリルはメリットが大きい。

クロザリルはD2に対する親和性が他の非定型抗精神病薬に比べても低いため、多飲水や水中毒を来しにくいのである。(重篤な水中毒患者の統合失調症の治療薬としてクロザリルやセロクエルが推奨されている)

ある時、たぶん国から依頼されたアンケートが病院に届いた。

その内容を見ると、回復の見込みがない長期入院の慢性の統合失調症の人たちが、あたかもクロザリルを投与するか、ECTを実施することで簡単に退院が可能になる(と思っているとしか考えられない)ようなものだったので、思わず苦笑した。

いかに、現場感覚がないかが良くわかる。クロザリルもECTもスーパーな治療法ではあるが、何十年も精神科病院に難治性患者として入院継続している人が容易に退院できるわけがなかろう。また、そのレベルの患者を受け入れられる社会基盤(入所施設及び周囲の住人のマインドも含む)も揃っていない。

このようなことから、統合失調症の家族が、積極的に治療したいと思うのなら、クロザリルの投与の提案を受けたら、やってみるべきである。自分がその人の家族なら、間違いなく同意する。

ここで、「統合失調症の家族」と書いたのは、クロザリルは一般に難治性の統合失調症の人を対象にする治療薬なので、当事者は受け入れるべきかどうかの判断が難しいと思ったからである。

参考
薬の効果の分散とクロザリル
ジプレキサ
ポール・ヤンセンとプロピタン

早く帰って来てくれないと食事が困る

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複雑な幻覚妄想を伴う非定型精神病の婦人を治療していた。薬物への反応は良いが、なにしろ病識がないので、周期的に最悪の状態で入院することになる。

その婦人は数か月ぶりに再診した際、こちらがびっくりほど悪化していた。躁うつ系の人は躁状態の際に入院に至ることが多い。これは、うつ状態では、なんとか外来で治療できることが多いからである。外来で診ている双極2型の人は、全く精神所見がないか、軽度のうつ状態か、せいぜい軽躁状態くらいの人が多い。

彼女は、必ず入院しなくてはならないほどのうつ状態と奇妙な幻覚妄想状態を呈していた。普通、うつ状態では「その状態を説明できる範囲に妄想内容は存在する」が、彼女は亜空間までの飛躍があり、かなりひねらないと「うつ状態を背景としている」と理解できない。

したがって、最初に何を使うか迷うところだが、彼女を何度か治療していたので、リーマスさえ服用させつつ、じっと待っていれば軽快する可能性が高いと思った。薬物治療は再現性がないことがあるが、自分が治療したことがある人は治療しやすい。そこでリーマスを600㎎処方し待つことにした。追加するのは、リフレックス1錠とエビリファイ6㎎である。

基本的に悲観的なので、リーマスに加えリフレックスを追加する。リフレックスは彼女の場合、悪い方向に作用せず、しかも改善を早めることがわかっていた。

彼女の場合、

リーマス 600㎎
エビリファイ 24㎎


でも良いような気が非常にするが、前回と同じ方針をとった。勝負事に「運鈍根」と言う言葉がある。

運・・幸運に恵まれること。
根・・性根、つまり辛抱強く待てること。


であるが、「鈍」というのがやや難しい。これは、つまりバカになることであろう。医療におけるバカになることとは、真にバカなのとは異なり、「些細なことに鈍感になり、方針に惑いがなく、悠々と治療すること」だと思っている。

鈍は重要だが、「根」も同じくらい重要である。医療現場は周囲の目(家族だけではなく看護者も含む)もあり、なんとなく治療を急がされることが稀ではない。これが、時に事態を悪化させる。

つまり、「根」と「鈍」は医療に限ればニワトリと卵のようなもので、極めて関係が深い。

入院後、1か月くらいして、リーマスなどが浸透し、幻覚妄想やドロドロしたうつ状態が消失しているように見えた。そのタイミングで外泊させた。結果は家事や買い物もてきぱきでき、非常に良かったらしい。彼女の夫は典型的な「非定型精神病の人の彼氏」のような人柄で、優しい人であった。

外泊から帰院して、今後、どのようなスケジュールにしましょうか?と言う話になった時、彼女の目の前で、

早く帰って来てくれないと(自分の)食事が困る。

と夫が答えた。

なんとも、うれしい言葉。

その2日後に退院させることにした。あれほど悪い状態だったのに、たった1か月余りで、きれいに寛解したのである。

あの言葉は、実に味があると言うか、本人だけでなく、僕や看護者にとっても、とてもうれしいものだ。

参考
非定型精神病の人の彼氏
うつ状態の二次妄想に抗精神病薬を使うこと
アトピーによる精神病状態からの一連のエントリ
双極2型のうつ状態と抗うつ剤

「先生は人間が好きなんですね」と言われた話

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ブログを書き上げた後、参考になる過去ログをいくつかリンクしている。これは、ブログを始めた2006年7月から既にそのスタイルを取っているが、最近は重要と思う過去ログの検索が難しくなった。

憶えている言葉や文章をkyupinと一緒にググっても、うまく引っかからないのである。

ところが、ググった際に挙がる過去ログのタイトルが気になり、それに読み入ってしまう。自分が書いた過去ログに読み入るなんて、読者の方は変に思うかもしれない。

なんだかんだ言って、このブログは病みつきなると言うか、はまる要素があると思うよ。(←自分で言っている)

自分は精神科医だから、なおさらはまるんだと思う。このブログは真の精神科医でないと、面白さがわからないと言うか、秘孔を突かれない記事がある。

このブログはもう8年以上続いており、最初の頃に書いた内容はよく憶えていないのもある。いつだったか、このブログは数人で書いているのでは?とコメント欄で指摘されたことがあるが、そう思う方が自分には不思議だ。

いかなるブログでも、その人の文体とか考え方などが見えて来るもので、1人か複数かは明白だと思う。

過去ログを読んで時々思うのは、なんだか記事に迫力があるよね。1つ1つの言葉にもエネルギーが込められている感じ。

最近の記事って、面白くなさすぎないか?」と思うこともしばしば。

自分が精神科を選択した経緯はたまに過去ログで触れているが、精神科医以外の医師になっていたら・・と考えると、恐ろしい光景が思い浮かぶ。

意外と「うつ病」になっていたりして・・と思う。そう思う理由は、自分は八方美人的にふるまうタイプで、周囲のペースに合わせそうとし過ぎるところがあるから。

周囲のことを気にせず、マイペースで仕事をしている方が精神衛生にはよい。(重要)

しかし今の日本社会では、そういう境遇にいる人は稀だ。医師は個人業主的な面があるので、周囲のことを考えずにまだ自由に生きられる方である。特にクリニックなどを1人でやっている人はなおさら。

それでも精神科医や身体科の医師もうつ病や精神病になりうる。狭義の精神病は、ストレスは関与はするが、真の原因とはみなされていない。

マイペースで生活していても、統合失調症や躁うつ病になる人はなる。一般の考え方は、色々な事象を何らかの原因に関係づけし過ぎる面があるが、何も関与していないことも精神科では往々にしてある。(参考

自分は大学から派遣された病院が総合病院の精神科だったり、単科の精神科病院に勤めている時もリエゾンをしている期間が長いので、まだ他の科のドクターと接する機会が多い精神科医である。

他科のドクターが自分と話した時に、なんだかよくわからんが、凄い精神科医と思うみたいだね。ある時、自分の患者さんが日赤の内科医から、「凄いドクターにかかれて幸せですね?」と言われたと言う。再診した際に、

先生は、どんな風に凄いんですか?

と尋ねられたが、一瞬、何のことかわからなかった。今までそのドクターと接したのは、紹介状と1本の電話のやり取りしかない。その電話は、精神科患者の肺塞栓症の話だったのだが、ちょうど旅行中で、周囲がうるさかったので、長くは話していない。きっと、その内容が凄いと感じたのかもしれない。紹介状はたいした内容ではなかったのでそれしかない。

精神科医から言わせると、一般の内科や外科医や整形外科医はともかく、神経内科医からも凄いと思われるのが、まさに凄いのではないかと。普通、神経内科医は、「精神科医なんて下等な生物」くらいに思っているからである。

神経内科医の思うようにならない神経疾患でも、自分はかなり独創的な治療法を提案し、時に劇的に改善させている。唖然とされたことが何度もあるのである。また、うつ状態は、神経内科医が治療しようが、精神科医が治療しようがあまり変わらないくらいに思っているが、実は全然違う。

神経内科医は、細かいことを言えば、精神症状を精神科医のように繊細に診られないようである。(質的な面で精神症状を評価できない)

また、色々な疾患がさまざまな科で診られているのもあるように思う。つまり例えば疼痛性障害や、レビー小体病など、精神科医の専門性の範囲で治療手法を提案できることが多くなっている。(直接的なものではないが参考記事

かつて医局時代、教授から「神経内科医にリスペクトされるような精神科医になりなさい」と言われたことがあるが、その教えをなんとなく実現した感じではある。

年配の外科医の人と一緒に仕事をした時期がある。まだ30歳頃である。彼から、

先生は人間が好きなんですね。

と言われた。それは微妙に違うと思ったが、それに反論するのも変なので、あまりそれ以上話を膨らませなかった。人間が好きなのではなく、「人と人の関係みたいなものの味わい」が好きなのである。もちろん、人間の決断にも非常に興味があるが。(参考

先生は外科でも内科でもできますよ。

と言われることがあるが、これも違う。

甘い!

と言ったところであろう。もし精神科を除外していたら、どこに行くのか困っていた。いかなる医学部の卒業生も興味がもてる科にいかないと、その人の能力が発揮できないと思う。

内科や外科系と精神科のオカルト的相違を言えば、内科、外科は「理詰めのサイエンス」だが、精神科医は根幹の部分はサイエンスだが、根幹の周囲にオカルトが紛れ込んでいること。

従って精神科医だけなく、たぶん臨床心理士もそうだが、そのようなことがあるので、魔法使い的イメージがあるんだと思う。

以上、今日は酔っぱらって書いているので、奇妙な、まとまらないエントリではあるが、たまにはこういうのも良いでしょう。

参考
ウェールズの人の発症、寛解のパターン(後半) の補足部分
このブログを読んで、精神科医になりたいと思う人へ
自分は2度死んだので多分長生きしますよ

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