Quantcast
Channel: kyupinの日記 気が向けば更新
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2198

ダウン症候群の青年期における退行現象(11)

$
0
0

今回は「いざと言うときに力が出ない(10) 」の続きである。

ダウン症候群の青年期に生じる退行現象は、一般の人たちにはあまり知られていないが、ダウン症候群の患者さんたちにいつも接している人には良く知られた病態である。

これはダウン症候群の人が、例えば作業所に通所していたり、福祉枠などで働いている際に、比較的急激な病状の変化が起こり、通所あるいは通勤できなくなるなどをいう。

うつ状態が診られたりするが、実際には「何もしたくない」など意欲の低下、アパシー系の病態である。パーキンソン症候群を伴っていたり、時に昏迷を生じたりする。幻覚を伴うこともある。また、重い例では、幼児返りが見られ身の回りのことも全くしなくなり、周囲の人の介護が必要になる人もいる。(著しい適応レベルの低下)

頻度的には4人に1人くらいであるが、ダウン症候群でも、作業所や会社に毎日、通っているなどある程度レベルの高い人たちにみられる。

仔細に最近の病歴を聴取すると、ちょっとしたライフイベント(担当の職員が変わったとか、友人が転居するなどの些細な環境変化)があったりするが、そこまでの危機になる説明がつかないものが多い。心理的なものも関与しているかもしれないが、むしろ疾患性に負う面が大きいように見える。

しかし・・
このようなダウン症候群の青年期における退行現象は、かつてはあまり診られなかったと言うのである。(勤続何十年の職員は、昔はそのようなダウン症候群の子はあまり見なかったという)。


これは様々な解釈が可能であろう。昔はダウン症候群の人たちは、施設入所か軽い人では在宅で、社会的かかわりと言う点で今より多様性はなかった。現在は、昔のダウン症候群の人たちとは異なり、一般の人と同じような経験を積み社会に出ているのである。

ダウン症候群でも自閉症が合併しているように見える人がいる。そのような人は作業所通所レベルに達しないケースがほとんどなので、上記のような退行現象を生じる人たちは、ダウン症候群でもちょうど高機能自閉症スペクトラムに相当する病態である。

重要な点は、ダウン症候群という既にはっきりとした器質性疾患に、一見、健康に見えていた青年期の人と同じような退行現象が生じることであろう。

これは社会的なものだけでなく、ほかに多くの要因があることを暗示している。

参考
統合失調症は減少しているのか?


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2198

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>