今日の記事は急に思いついて書き止めたもので、深い考察はしていない。したがって、結論がどうとか厳密な内容ではない。
普通、内科医に倦怠感を訴えて受診した場合、その主訴だけで抗うつ剤を処方する医師は非常に稀と思われる。他科ではほとんど抗うつ剤を投与しない医師もいるはずで、そのような場合、抗うつ剤は選択肢に挙がらない。
整形外科では慢性倦怠感~慢性疲労に関係が深いリウマチ関連疾患を考慮する医師もいると思われるので、第一選択にならなくてもサインバルタなど、線維筋痛症に有効な抗うつ剤も選択肢に挙がってくる。
精神科では、うつ病~うつ状態、双極性障害、重い神経症、境界例、慢性疼痛、統合失調症に至るまで、倦怠感の訴えはしばしば聴く。
それどころか、主訴が倦怠感という人が稀におり、なぜここに受診したか、こちらから尋ねることがある。
主訴は「倦怠感」だけですと言う人は、内科などで検査で正体が掴めず、これは精神科的なものでしょうと助言されて初診する人もいる。
倦怠感があると言われても、明確にうつ病~うつ状態を示唆する所見がない場合、抗うつ剤まで最初からは処方しにくい。虚証の人であれば、補中益気湯とか十全大補湯だけ処方することがあるが、これらは内科などでも疲労感や衰弱に対し行われていると思う。
倦怠感に対して漢方薬で治療を試みるのは、抗うつ剤で治療しない1つの治療法ではある。
漢方薬はツムラとクラシエ(旧カネボウ)があるが、僕は、真の衰弱のみによる倦怠感には、補中益気湯ならクラシエを選択する。微妙に成分が違うからである。これは、白朮(びゃくじゅつ)と蒼朮(そうじゅつ)の薬効の違いから来ている。
なお、クラシエの補中益気湯は白朮を配合しているのに、ツムラは蒼朮を配合しているのは、間違いでそうしているわけではなく、古典のどの書籍を参照しているかに由来する(という話)。
炎症性、あるいは炎症がまだ残っているような倦怠感にはむしろ蒼朮を含むツムラの補中益気湯の方が良い。発汗させることすら負担になるなら、クラシエの補中益気湯かむしろクラシエ十全大補湯が良いという感覚で処方している。
漢方薬は少なくとも精神病状態に悪影響を及ぼさないと思われるので、統合失調症や双極性障害の倦怠感に対して漢方薬を併用するのは悪くないと思う。欠点は、薬が無駄に多くなることと散剤であることだと思う。
西洋薬でも散剤は患者さんにも好まれないし、薬剤師も仕事が増えるので好まないし、自然とあまり処方しなくなっている。
1995年頃、病棟の男の師長さんから、「kyupin先生、できるだけ漢方薬は出さないでください」と言われたので、なぜなのか問うた。
その理由は、毎食後の分包された薬の袋に、1つずつ漢方薬をホッチキスで止めていくのが大変という話であった。
確かにその通りで、効くか効かないかはっきりしないものに対し、1日2~3包も付けていく単純作業は大変である。気の毒に思ったので、その後、少なくとも入院患者には可能なら漢方薬を処方しないように努力した。それでもなお平均から見ると僕は漢方を処方する方である。
明確にうつ状態~うつ病と倦怠感が一連のものになっている場合、抗うつ剤を投与すれば、同時に並行して良くなることが多い。
しかし、そうならない人もいるのである。これは倦怠感が、その患者さんに関してはうつ病と一連のものではない可能性がある。
あるいはうつ状態が良くならない場合、その正体は倦怠感を起こさせる症状性の疾患が予測される。実際に後で癌などが発見されることがあるが、むしろはっきりとした癌や腫瘍、重い肺疾患の治療後にそのような病態に陥っているケースの方が多い。(リエゾンなどでは)
一般的な抗うつ剤では改善せず、リリカやトピナ、あるいはガバペンなどの抗てんかん薬で改善する人たちもいる。
また、ストラテラやコンサータが良いケースもある。
このようなことを考えていくと倦怠感は症候群をなしており、背景を重視し個別に対処した方が合理的だと思われる。
倦怠感は単純な所見ではなく、一部に難しい対応を必要とするのは確かである。
(おわり)
参考
リリカの慢性疲労に対する効果について
普通、内科医に倦怠感を訴えて受診した場合、その主訴だけで抗うつ剤を処方する医師は非常に稀と思われる。他科ではほとんど抗うつ剤を投与しない医師もいるはずで、そのような場合、抗うつ剤は選択肢に挙がらない。
整形外科では慢性倦怠感~慢性疲労に関係が深いリウマチ関連疾患を考慮する医師もいると思われるので、第一選択にならなくてもサインバルタなど、線維筋痛症に有効な抗うつ剤も選択肢に挙がってくる。
精神科では、うつ病~うつ状態、双極性障害、重い神経症、境界例、慢性疼痛、統合失調症に至るまで、倦怠感の訴えはしばしば聴く。
それどころか、主訴が倦怠感という人が稀におり、なぜここに受診したか、こちらから尋ねることがある。
主訴は「倦怠感」だけですと言う人は、内科などで検査で正体が掴めず、これは精神科的なものでしょうと助言されて初診する人もいる。
倦怠感があると言われても、明確にうつ病~うつ状態を示唆する所見がない場合、抗うつ剤まで最初からは処方しにくい。虚証の人であれば、補中益気湯とか十全大補湯だけ処方することがあるが、これらは内科などでも疲労感や衰弱に対し行われていると思う。
倦怠感に対して漢方薬で治療を試みるのは、抗うつ剤で治療しない1つの治療法ではある。
漢方薬はツムラとクラシエ(旧カネボウ)があるが、僕は、真の衰弱のみによる倦怠感には、補中益気湯ならクラシエを選択する。微妙に成分が違うからである。これは、白朮(びゃくじゅつ)と蒼朮(そうじゅつ)の薬効の違いから来ている。
なお、クラシエの補中益気湯は白朮を配合しているのに、ツムラは蒼朮を配合しているのは、間違いでそうしているわけではなく、古典のどの書籍を参照しているかに由来する(という話)。
炎症性、あるいは炎症がまだ残っているような倦怠感にはむしろ蒼朮を含むツムラの補中益気湯の方が良い。発汗させることすら負担になるなら、クラシエの補中益気湯かむしろクラシエ十全大補湯が良いという感覚で処方している。
漢方薬は少なくとも精神病状態に悪影響を及ぼさないと思われるので、統合失調症や双極性障害の倦怠感に対して漢方薬を併用するのは悪くないと思う。欠点は、薬が無駄に多くなることと散剤であることだと思う。
西洋薬でも散剤は患者さんにも好まれないし、薬剤師も仕事が増えるので好まないし、自然とあまり処方しなくなっている。
1995年頃、病棟の男の師長さんから、「kyupin先生、できるだけ漢方薬は出さないでください」と言われたので、なぜなのか問うた。
その理由は、毎食後の分包された薬の袋に、1つずつ漢方薬をホッチキスで止めていくのが大変という話であった。
確かにその通りで、効くか効かないかはっきりしないものに対し、1日2~3包も付けていく単純作業は大変である。気の毒に思ったので、その後、少なくとも入院患者には可能なら漢方薬を処方しないように努力した。それでもなお平均から見ると僕は漢方を処方する方である。
明確にうつ状態~うつ病と倦怠感が一連のものになっている場合、抗うつ剤を投与すれば、同時に並行して良くなることが多い。
しかし、そうならない人もいるのである。これは倦怠感が、その患者さんに関してはうつ病と一連のものではない可能性がある。
あるいはうつ状態が良くならない場合、その正体は倦怠感を起こさせる症状性の疾患が予測される。実際に後で癌などが発見されることがあるが、むしろはっきりとした癌や腫瘍、重い肺疾患の治療後にそのような病態に陥っているケースの方が多い。(リエゾンなどでは)
一般的な抗うつ剤では改善せず、リリカやトピナ、あるいはガバペンなどの抗てんかん薬で改善する人たちもいる。
また、ストラテラやコンサータが良いケースもある。
このようなことを考えていくと倦怠感は症候群をなしており、背景を重視し個別に対処した方が合理的だと思われる。
倦怠感は単純な所見ではなく、一部に難しい対応を必要とするのは確かである。
(おわり)
参考
リリカの慢性疲労に対する効果について