診察中、ある女性患者さんが、
先生、○○を他の人に勧めないでください。
と言った。その○○と言う薬は、その患者さんが服用している薬である。なぜそのようなことを言うのか問うと、
他の人が良くなるのが悔しい。
と答えた。内心、そう思っていたとしても、主治医にそんなことを言うなんて、大胆不敵である。
この女性患者さんは、思ったことを言うタイプであるが、それでも自分にそのような過激なことを言うのは、結構信頼してくれているということでもある。
うーん、複雑。
このようなタイミングで、そういう話をあまり人に言わない方が良いとも言いにくいし。ただ、彼女はそのようなことを全てわかって言っている感じもかなりする。(指導するまでには至らない内容。このケースに限り)
彼女は、初診した当時、「私は嫌な女なんです」と言ったことがあったが、自己嫌悪というかうんざりと言ったニュアンスがあったので、奇妙な文脈で話したわけではない。その後、順調に良くなったこともあり、それが明らかになる場面はほとんどなかった。まして診察中しか会わないのである。
ある時期、短い期間入院した際に、本人に常識に欠ける点がみられ、看護師さんたちが困り果てるというか、接遇に困るという話が出ていた。
そして、この言葉である。
自分の良くない面を、うっかりして知られることと、このように自ら宣言するのは全く異なる。
「やり手の女性」をプロファイリングしたとしたら、この女性は、典型的タイプの1型の感じもする。ただしワンマンタイプである(ワンウーマンと言うべきか)。
確かに社会的成功を収めている女性に、このような感じの人がいる。
彼女はかなり若い時点で、社会的に大成功を収めていた可能性があるが、一時、入院するほど精神症状が悪化したため、今は比較的小さな成功しか達成していない。(それどころか、初診時はそれまで数年間、社会的に死んだ状況だった)
しかし、ある時、銀行や他の出資者とのやり取りで、かなりうまく交渉したことを、後に彼女の話から知った。
彼女は見かけはそうではないが、かなり男性っぽい性格であることは間違いない。(みかけはモデルのようにしているが)
彼女は、きっと社会的な知能が高いのである。しかし、一般的な勉強ができたかというとそうではなかったらしい。これは彼女の家族を治療している際、偶然、詳細を知ることができた。
現代社会では、学校で成績が良い一般的な知能より、社会的な知能に優れる方が本人を助ける。
これは、精神科医をしているとよく痛感する。
(これはボツ原稿でしたが、内容的に参考になると思ったこともあり、若干書き直しアップしています)
参考
化粧のことを言うのは僕だけらしい
↧
他の人が良くなるのが悔しい
↧