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悪化のタイプが良くない

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一般に精神疾患には、悪化するタイプに個人差がある。たとえば、うつ病、うつ状態だと、悪化時に必ず希死念慮が出る人とそうでない人。

これはその人の疾患の癖ともいえるもので、その人がそうなりやすい理由は特に内因性だと明快にわかっていないと思う。

またこの悪化のタイプは、家族歴がある場合、似ていることも稀ではない。精神科の診察で家族歴に自殺者がいることが重要視されるのはそのためである。実際、国家試験の精神科の問題では、正しい選択肢が「家族歴」になることがある。

精神疾患で明らかに悪化のタイプが良くないと言えるものは、「緊張病症候群」だと思われる。緊張病症候群には興奮というアップした病態と昏迷というダウンした病態があるが、これはコインの表と裏で、急速に他方に移行することがある。

したがって、昏迷で到底何も起こらないように見えたとしても油断できない。

緊張病症候群では、自殺、自傷、他害(他殺)を含め、いかなることも起こりうる。

躁うつ病圏内では、緊張病症候群の1型とみなしてよいものとして「躁うつ混合状態」がある。この病態は、自殺という一点を注視してもリスクが高い。悪化した際にしばしば躁うつ混合状態を呈する人は生涯、服薬を止めない方が良いと思う。

4年ほど前の過去ログに、躁鬱混合状態について触れたエントリがある。以下抜粋。

理論的には、躁鬱混合状態は極めて奇妙なものである。躁状態とうつ状態の中間が「穏やかで健康に近いもの」ではないからである。これはおそらく、何らかの神経伝達物質が過剰なのか欠乏なのか以外の要因が関与していることを示唆している。

実は、躁うつ混合状態について、過去にクレペリンが説明している。

クレペリンは、躁うつとその他の症状には「位相のズレ」が生じており、その結果、「双極性障害には混合状態が生じる」と言う。

つまり、躁からうつに入っているのに、活発な意欲などがまだ残遺していたりするのである。ここの症状のズレにより奇妙な病態を生じる。

この意見に沿えば、「位相の変化の時期に混合状態が生じることが多い」ということになる。残念ながら、これは現代社会の双極性障害の実態を十分に説明できていない。

躁うつ混合状態は双極2型でより多く観察されるが、クレペリンの時代は現代社会のラピッドサイクラーなどはあまり考慮していなかったと思われる。これが結構大きい。

このクレペリンの混合状態の見解と今の双極性障害の相違こそ、過去の双極性障害と現代社会の双極性障害の変質をよく表現しているような気がしている。


参考
現代的双極2型と双極性障害の位相について


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