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シクレスト(アセナピン)2016年6月発売の見込み

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新しい非定型抗精神病薬、アセナピンが2016年6月にMeiji Seikaファルマから発売される見込みである。

上記のパンフレットに記載されているように、商品名はSycrest(シクレスト)である。これはイギリス、EUと同じだが、オーストラリア、アメリカ、ロシアではSaphrisという商品名で販売されているようだ。

上のパンフレットは発売準備中とはいえ、実にシンプルだと思う。極めて情報が少なく、裏は白紙であった。 

アセナピンは、MALTA系の非定型抗精神病薬である。いろいろなレセプターに親和性が高いタイプで、同じ系統にはクロザリル、ジプレキサ、セロクエルなどがある。

アセナピンは従来の向精神薬にはない舌下錠であり、舌下に置くと速やかに溶解し、35%が生体利用されるという。一方、そのまま服用した場合、2%しか利用されない。

当初、個人的に、統合失調症の人に舌下錠なんて難しいのでは?と思っていた。それは、ある程度、服用の仕方を理解していないといけないから。しかし速やかに溶けるという話なので、後で吐き出されるよりはマシである。(注;入院患者の場合)

日本では5㎎錠と10㎎錠が発売される。たぶん日本の最高量は20㎎であろう。その理由は、海外では1日2回服用を推奨されているからである。これは海外と同じ最高用量となっている。

舌下錠の良い点は、いきなり門脈を通過しないこと。つまり舌下に投薬された薬物は、肝臓で代謝を受けることなく脳に至る。このメリットは持続性抗精神病薬に似ている。ただし、いずれ時間が経つと肝臓で代謝を受ける。

2016年3月28日のMeiji Seikaファルマのサイトのプレリリースでは、

2016年1月現在、米国および欧州をはじめとする世界61カ国において、統合失調症または双極I型障害の適応で承認されています。

という記載がある。

MALTA系の非定型抗精神病薬の欠点として体重増加があるが、アセナピンはそれほどではない。カプランのハンドブックによると、52週(つまり1年間)後の体重増加は0.9㎏程度である。

モーズレイのガイドライン(12版)に、抗精神病薬で引きこされる体重増加の比較の表が挙げられている(主な薬物のみ)。上に行くほど体重増加が著しい。

クロザリル(High)
ジプレキサ
コントミン(Moderate)
Iloperidone
セロクエル
リスパダール
インヴェガ
Amisulpride(Low)
アセナピン
エビリファイ
セレネース
Lurasidone
ドグマチール
Trifluoperazine
Ziprasidone

(アルファベットの名前は本邦未発売)

上の表では、アセナピンは(Low)にカテゴリーされており、リスパダールやインヴェガよりは体重増加が少ない水準にある。

日本では、アセナピンは統合失調症のみの適応に限られるが、他国では双極性障害(Ⅰ型)の躁病ないし混合エピソードにも適応を認めている国もある。

モーズレイのガイドラインによると、アセナピンで躁病を治療することは最もコストがかかる手法という話である。(エビリファイによる躁病治療と同じ水準)

カプランのハンドブックでは、アセナピンのQT延長の副作用について言及されている。重大な延長はなかったというが、日本でいかなる記載になるかは不明である。

他、アセナピンには高プロラクチン血症および乳汁分泌の副作用を持つと言われる。


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