Quantcast
Channel: kyupinの日記 気が向けば更新
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2198

抗精神病薬変更による男性の体重減少について

$
0
0
前医の引継ぎで男性の長期入院の統合失調症の患者さんを診ていると、その人が本来、どの程度の体格なのかがわかりにくい。肥満気味だとしても中年太りは一般人にもあるし、極端でない限り奇妙には思わないのである。

ところが、抗精神病薬変更により劇的に体重が減少することがある。今回はその1例について紹介したい。なお、彼の場合、減量のために特別な努力をしたことはない。

2000年頃、以下の処方で体重は82㎏ほどだった。また高コレステロール血症と軽度の糖尿病を合併していた。

プロピタン 150㎎
アキネトン  3㎎
リピトール  5㎎
ユーロジン  4㎎
ドラール   15㎎


その後、プロピタン150㎎からクロフェクトン50㎎に切り替え、今から14年ほど前に退院となっている。プロピタンからクロフェクトンに切り替えたのは自分だが、幻覚妄想への効果、肥満への影響はあまり変わらない印象だった。

ただ、クロフェクトンはプロピタンに比べ賦活するため、退院した後が良いのである。次第にこのような処方になった。

クロフェクトン 50㎎
レンドルミン  0.25㎎
ネルボン    10㎎
ロヒプノール  2㎎
デパス     1㎎


睡眠薬が3剤処方されているのは、睡眠薬処方制限以前の処方のため。ところが、2014年10月から始まった睡眠薬2剤制限のために眠剤を1剤減薬したところ、非定型病像から亜昏迷に至り、入院することになった。これまで、睡眠薬制限が直接の原因で入院したのは彼だけである。

なぜ、このような経過になるかというと、カタトニアにベンゾジアゼピンが非常に有効なことと関係が深い。彼は入院後、亜昏迷を脱すると持続的に軽い興奮状態を呈していた。

そこでクロフェクトンを諦め、より肥満に影響ない非定型抗精神病薬で治療することにした。このようなチャンスがないと、旧来の少量の抗精神病薬で安定している患者さんの処方変更機会などない。

病型的にエビリファイは後回しにし、まずロナセンを選んだ。

ロナセンは大量には使わず、時間もあるので長期戦に構えた。元々、彼の場合、平均投与量が少なかったこともある。エビリファイだと、最初から24㎎から使わないと浮いている人にはうまくいきそうになかった。(それと、エビリファイ24㎎は高すぎます!)。

入院時の体重は既に69㎏だった。(約10年あまりで82㎏から69㎏)

結果だが、ロナセンは良かったのである。ロナセンはあまり副作用もなく、大量に使う場面もなく、4か月ほどで軽快退院となった。

ロナセン  4㎎
ハルシオン 0.5㎎
ドラール  30㎎(現在は15㎎)


この後、更に体重が減り続けたのである。一時、降圧剤を服薬していた時期もあったが、もはやそれも必要なくなった。

現在の体重が57㎏!
なんと、82㎏から57㎏まで減量している。

人生、塞翁が馬だと思う。

体重増加を来さない薬として、世界的にはよくジプラシドンが挙げられるが、実はロナセンもそれに肉薄するのではないかと考えている。

ロナセンは欧米では販売されていないので、そのあたりのエビデンスが不足している。



 
 

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2198

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>