2016-04-18に「抗精神病薬変更による男性の体重減少について 」という記事をアップしている。今回は、その記事の補足的なものである。この記事の中で、以下の内容を記載している。
なぜ、このような経過になるかというと、カタトニアにベンゾジアゼピンが非常に有効なことと関係が深い。彼は入院後、亜昏迷を脱すると持続的に軽い興奮状態を呈していた。
そこでクロフェクトンを諦め、より肥満に影響がない非定型抗精神病薬で治療することにした。このようなチャンスがないと、旧来の少量の抗精神病薬で安定している患者さんの処方変更機会などない。
病型的にエビリファイは後回しにし、まずロナセンを選んだ。
この流れで、なぜリーマスやデパケンRなどの気分安定化薬を処方しないのか不思議に思う人もいるかもしれない。これは軽躁状態の本質が、真の双極性障害に由来しないと思われることが大きい。過去ログではアキスカルの双極性障害の分類を批判的に記載した記事もある。(参考)
真の双極性障害と思えない病態には、デパケンやリーマスを安易に処方しない。
という治療方針がある。その理由は、これらの薬を併用して安定した場合、中止するチャンスが非常に少ないことと関係が深い。それとこのような人は自分の場合、真の双極性障害とは見なしていないことも大きい。
自分の処方が非常にシンプルだという読者の方のコメントが時々見られるが、できるだけ処方を複雑化しないという治療上の工夫も無関係ではない。
現在、ロナセンと眠剤の2つしか処方していない(ただし眠剤は2剤)が、もし、彼を双極性障害の1つと診断していると、たぶんリーマスかデパケンRが処方内に残っていると思われる。
これらは、ロナセン+眠剤に比べると段違いに肥満しやすいので、彼の著しい体重減少はあり得なかった。
(おわり)
参考
アキスカルの言う薬物性躁転は本当に双極性障害なのか?
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軽躁状態を躁状態の1つと見なさない考え方
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