ある日、他の精神科に初診したのに2回目は受診せず、うちの病院に初診した人がいた。その人の話では、元々、うちの病院を勧められたのに他の病院に初診したという。
なぜ、2回目はここに来たのか尋ねたところ、初診時に5剤も処方されたことに驚き、こちらに受診したようであった。
病歴をその前に聴いていたので、その5剤がなぜ処方されたのか理解できなくはないのよね。僕は5剤も初診時から出さないが。
過去ログを読むとわかるが、いろいろ副作用の面倒を診ていくと、いらない処方が増えるので、なるだけシンプルに処方すると言った内容がたびたび出てくる。
例えば、デプロメールなどの初期に胃腸障害に対し、それを緩和する薬を併用する医師もいるが、自分はしない。それはほかの向精神薬も同様である。そのような副作用が出ることがあるのを注意喚起するだけである。
その病院の医師も、おそらく説明していれば良かったかもと思うが、それでもなお、5剤は引かれる可能性の高い。3剤ですら怪しい。精神科においては面倒見の良すぎも往々にして裏目になるといったところだ。
僕は初診時に、その他病院で処方された5剤の意図を本人に説明した。その患者さんはその説明も受けてはいなかったらしい。
一般的に、初診時には色々わからないことがあったら、その場で聴くべきだと思う。他の病院で処方の真意を聴くのは、よく考えるとわからない話である。
自分の子供の頃、大変な性格の医者が相対的に多く、今なら到底ないようなやり取りがしばしば見られた。
例えばうちの親父は胃腸が弱かったため、抗生剤を服用すると胃が荒れることが多かった。これは今から考えるにC型肝炎も関係している。また虚証だったこともある。
抗生剤を投与される際、胃が弱いので胃薬もほしいと希望すると、
それなら、飲まなくていい。
と怒鳴るように言い放たれたらしい。飲まなくて良いと言うのは主剤のことだ。この話はうちの外来婦長にバカ受けで、彼女も子供の頃、処方された薬の意味の説明を希望すると、
患者はそんなことは知らなくていい!
と言われたという。現在の医療は一応、競争社会なので、そのような接客だと人がよりつかない。
今は、患者が病院を選ぶ時代だからである。
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他病院の処方の意図を説明する
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