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いつの間にか家族3人を診ていたこと

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リエゾンに出かけたとき、その病院の看護師さんから、自分の家族をぜひ見てほしいといわれることがある。そのような際に、本当にかかりたいなら自分の病院に初診し、院長に診察を受けたいと受付で言うように伝える。

今回はそういうパターンではない話。あるとき、3名の外来患者が家族なのを発見。なぜわからなかったかというと、苗字が違うことと、それぞれの患者がそのことを伝えなかったこと、その3名が一緒に来院したことが一度もなかったことなどによる。

そのことを聴き3名のカルテを調べてみると興味深いことに気付いた。その3名は、特異体質といえるほど向精神薬に対し著しく過敏、あるいは奇異な反応を示すのである。

ある若い女性患者さんは、最初動悸があり内科を受診したらしい。ところが、内科的には異常が認められず、デパスとジェイゾロフトをその内科医から処方されている。生活歴や性格などを聴いたところ、内向的で考え始めると考え込んでしまう、コーヒーの摂取が多いという話くらいで、とりわけ特別なことはなかった。

その患者さんの症状からすると、ジェイゾロフト25㎎+デパス0.5㎎はやりすぎだと思ったが、既に服用し始めていたというので、そのまま服薬し、ジェイゾロフトは半分でも十分ではないかと助言した。その際に偶然、レスキューレメディーを勧めている。最初に自分に初診していたら、最初からジェイゾロフトなど処方しない。デパスももちろんである。その後、動悸が著しく減ったという話で、ジェイゾロフトも半錠で十分だったようである。

また、本人によると、レスキューレメディーで歯ぎしりが減少し、朝起きた時の顎の痛みが激減したという。歯ぎしりが減った理由だが、必ずしもレスキューレメディーではなく、ほかの薬が関与していると思うかもしれないが、彼女はしばらく西洋薬を休んでいることもあるので、レスキューレディーにより改善した可能性が高い。そもそも、デパスはともかく、ジェイゾロフトは歯ぎしりには効きそうにない。

その後、メイラックスやらラミクタールなどをいろいろ試みたが、結局以下の薬で落ちついている。

ジェイゾロフト 12.5㎎(3日に1度服薬)
およびレスキューレメディー


彼女は通院初期に、過食嘔吐が消失してしまったが、これはジェイゾロフトが関与している可能性が高い。彼女はたぶん、ジェイゾロフトはかなり合っていたんだと思われる。

彼女の母親は最初内科医院に、高血圧と不安感で初診したところ、降圧剤、サインバルタ20㎎が処方されたという。この当時、内科医院でサインバルタを、この程度のうつでもなんでもないような人に処方するのは、前衛的な内科医だと思った。

その結果だが、サインバルタを飲んだ直後、酷い胸痛が起こり救急車を呼んだらしい。これは珍しい反応だが、精神科医からするとありうる反応である。その理由は、そもそもこの人にサインバルタを20㎎も処方する根拠が希薄なうえ、忍容性が低い家系というのもある。

この女性患者さんは、リボトリール0.5㎎の半錠も、リフレックス半錠も重すぎて使えなかった。一時、ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯やセディールなどの温和な薬を使っていたが、思わしくなかった。彼女によると、セディールを1錠飲んだだけで、頭がふらふらし、いつの間にかどこかに歩いていてしまっているという。それに比べると、副作用がほぼない柴胡加竜骨牡蛎湯の方がまだマシだった。

さて、彼女は結局何が良かったのでしょう?

これがわかった人は天才だと思う。彼女の精神科のすべての症状は、ベルソムラの10㎎で全面解決したのである。今、ベルソムラ半錠を90日分ずつもらいに来ている。ベルソムラは彼女の(何も飲まなくても常に生じていたフラフラ感、体幹のバランスを崩す感じ)を消失させた。彼女の場合、ベルソムラの少量で必要かつ十分なのである。そして血圧も服薬なしで正常化したのであった。

もう1名は、3人のうちおそらく最初に初診した男性である。不安神経症のような症状だったが、ごまかしつつ、レスキューレメディー(スプレー)だけ服用させていた。これは上記の2名のことは知らなかったわけで、初診時の判断である。

彼はレスキューレメディーが恐ろしく効き、その後、3年くらいはそれでよかった。自営業で個人で仕事をしているらしく収入的には問題はないようであった。また、レスキューレメディーを買って飲むように伝えただけだが、律儀にも2か月ごとくらいに診察を受けに来ていた。話すことなどほとんどないのにである。

彼は外来で診ていると、一時もじっとしておらずひらひらといった無駄な動きが多い。背景にADHD的なものがあると感じていたが、だからといって、それを告知したり、注意喚起はしなかった(当時、ストラテラ、コンサータは承認されておらず、また使えたとしても症状的にそこまで踏み込むレベルではなかった)

ある時期、よくわからない理由で悪化が見られ、不安症状と焦燥が悪化した。僕はリボトリール0.5㎎とレスキューレメディーを併用して使うように伝えた。彼はリボトリールは問題なく服用でき効果もみられたが、あまり増やせるような感じでもなかった。

そして更に5年くらいが経過した。彼ら3人の自宅は病院から40㎞は離れているはずで、なぜ全て自分の患者になったのか謎である。(いつも自分が初診を診るわけではないので)

あるとき、仕事に支障をきたすほどの悪化が診られたのである。しかし入院させるほどではなかった。彼には未だにレスキューレメディー以外の向精神薬はリボトリールしか処方していなかった。

そこで思い切って清水の舞台から飛び降りる気持ちで、レクサプロの半錠(つまり5㎎)を勧めてみたのである。彼の本質はよくわからない不安と動揺であり、レクサプロは悪くない選択だと思う。これは忍容性の低さも勘案している。

結果だが、レクサプロは良かったのである。しかし5㎎でさえ、けっこう眠いらしい。彼によると、眠いが、集中力が出るので仕事はかえってしやすいという。

なんという奇妙な感想であろう。

彼らがバラバラに来ていなかったら、試みる薬の順序が多少変わったかも?とは思う。しかし、結果は同じだったような気が非常にする。

彼らを診ると、向精神薬は相対的なものなのがよくわかる。つまり個人差が大きい。

(今回の記事はなぜか「広汎性発達障害」のカテゴリーに入れられています。奇妙に思われる理由ですが、実は男性患者は、ADHDを十分に疑わせる決定的な所見があり、その部分をブログで記載していないためです)

(おわり)


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