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医療保護入院の手続きの変更について

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これは少し前の話。

 

平成26年4月1日に精神保健福祉法が改正され、医療保護入院の手続きなどが変更になった。このうち、「保護者制度の廃止」が大きい。

 

日本の精神科での非任意入院は医療保護入院の形態が最も多い。これは簡単に言えば、病識がないなどで本人が入院を拒否している状況で、家族の同意の上で入院を可能にする制度である。

 

一方、非任意入院でも措置入院では、家族の同意すら不要である。

 

旧制度の医療保護入院では、配偶者の役割が非常に大きく、配偶者がぜひ入院させてほしいと訴え、なおかつ入院させるに足る悪化した精神症状があれば、医療保護入院が可能であった。(もちろん、入院の判断は精神保健指定医が主)。配偶者以外では未成年者の親も同様である。

 

今回の改正の意図であるが、この従来の制度は、現在の日本の社会的変化に合わなくなってきていることがある。現在の日本では、配偶者や親族が高齢化しており、そこまでの責任が負える人が相対的に少なくなっているのである。

 

また、上の内容を見るとわかるが、ぜひ入院させた方が良いケースで、明確な自傷他害がない場合、配偶者が意に反して同意できない状況では入院が難しい。例えば、入院させるべき患者が「配偶者さえサインしなければ自分が入院させられることがない」ことがわかっているケースなどである。

 

この場合、いかなる選択をしても後でとんでもない事件が起こるリスクがある(入院、入院させないいずれの選択でもという意味)。また、配偶者や親に負わせる責任が大きすぎる面があった。

 

一方、精神科医から見ると、その分、責任が大きくなっていると言える。言い換えると、精神科医に丸投げしていると言われても仕方がない改正だと思う。

 

精神科医のメリットと言えば、1項入院と2項入院などの区別がなくなり(この言葉自体が死語)、2項入院のケースで、書類を立て続けに出さなくても良くなったことである。この簡略化は大きい。(保護者選任の4週間がなくなった)

 

なぜなら、2回目の提出書類で、その時点でも医療保護入院の継続の必要性を説明するなど、結構書き込む場所が多かったからである。

 

一方、上のパンフレットの③の3番目に記載されているように、院内で退院支援委員会なるものを開かないといけないため、精神保健福祉士の仕事はかなり増えたことは間違いない。

 

医療保護入院患者でも支援委員会を開く以前に短期で軽快退院することも多く、これを開かないといけないような長期入院患者は、家族が出席できることも多くはない(むしろ少ない)。この辺りにも日本の高齢者社会を反映している。

 

一方、家族が参加する退院支援委員会は、その患者さんの家族関係というか、家族内のバランスなどが窺えて今後の参考になる。

 

つまり退院支援委員会は、実質、形式化しているのである。(書類も書くだけの価値があるのか微妙。つまらない仕事を増やさんでほしいといったところ)。

 

今回の記事は、一般の人にはあまりイメージできないのではないかと思う。

 

参考

各国における精神科の非任意入院

社会の変化に行政が追いつかない話

 


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