治療を数年続けているうちに、家族の中で最も病状が重かった患者さんが軽快し、逆転することがある。この話は、色々な点で非常に興味深いと思う。
精神科医は、初診時に家族や親戚の精神科治療歴を聴くことが多い。これは家族歴の聴取で精神科では一般的なことである。(もちろん100%聴けるわけではない)
初診の時点で、その患者さんが最も重かったとしても、時間が経って逆転が起こることが良くある。例えば、数回、入院歴があったような人が軽快し薬も必要なくなったが、その頃には、さほど重くなかった姉が入院しているとか、毎日、過食嘔吐をしているなど。
完全に病状の重さが逆転しているのである。
この場合、その兄妹は別の病院やクリニックに通っており、2人とも並行して診ていることなどない。
なんとなく、妹が良くなっていれば、自分も病院を移ってみようかと思いそうなものだが、さまざまな理由でそうならない。
1つは遠距離。
他の理由は、過去ログにもあるが、自分がどういう風になったら良いのか目安がつかめていないんだと思う。(うつ状態はどうなったら良いのかが明確でない )
また、患者さんにとって病院を変わるのは決断が必要なんだと思われる。
参考
精神障害者保健福祉手帳は治癒した時、返納しなければならない (今回の記事は最後の診察時に患者さんと話した内容から)