ある時期、ある女性患者さんの洋服、化粧などを指導していた。例えば、「役場に行くときは清潔できれいな服を着てきちんと化粧をして行きなさい」などである。もちろん、ショッピングセンターに行くときも同様である。
このような指導は、到底できない人には酷なので言わない。今、できるように思える人しか指導しないのである。これは「良くなったらそうすべき」とか単純なことではなく、女性ならそれくらいしないと人生が好転しないように思うからである。従ってオカルト的なものも含まれている。
うつ状態が酷くなると身なりを整えるどころではなく、化粧もする気が起らないため、外出が億劫になる。最悪な時期だと歯も磨きたくないと言う。自分は女性なのでそんなことではいけないと思うのだが、体が動かないと言う。
彼女は少しずつ病状が良くなり、外出回数も増えてきた。そのタイミングで助言したのであった。
ところが、そんな風に言うと、彼女はわざとスッピンで外来受診した。そのことについては診察時に話題に出さなかった。診察が終わり外来婦長と話した。「彼女があんな風にしたということは、いくらか心に伝わったと言うことでしょう。」
その後、話す内容についても指導した。いつも家族の悪口ばかり言っているからである。指導した直後は、話すことがなくて多少困っていたようであった。そんな風にしていると、次第に表情の険がとれてきた。それを指摘した時、彼女はそれに気づいていなかった。そしてある日、
私は治ることはないと思うのですが、より良くなることはできるのではないかと思えるようになりました。
と語ったのである。今日の記事はとても中途半端だが、これで終わりである。