セリンクロは既に発売になっているが、今も処方できないままである。セリンクロは過去ログに紹介記事があるので参照してほしい。
現在、セリンクロは算定条件が明確になっていない。製薬会社が国に問い合わせているようだが保留状態のままである。そのため一応、精神科医はセリンクロが処方できない。一応と書いたのは無視して良い医療機関もあることを言っている。
今回思ったのは、お酒とタバコは全く違うこと。
タバコは健康に悪いことが証明されているので、タバコ農家が困るとかタバコ税が減るなどの社会経済的な影響まで考える必要がない。つまり、タバコに対しどのような制約でも許される。将来、タバコが1箱2千円くらいまで値上げする話が出たとしても、反対勢力は分が悪いと思う。
セリンクロはアルコールの摂取量を減らすメカニズムを持つ薬である。このメカニズムはひょっとしたら日本経済に対しマイナスの影響を及ぼしかねないものだと思う。
国民全体の飲酒量が減ると、ビールを始め日本酒、焼酎などの製造元の売り上げが落ち法人税が減少するだけでなく酒税も減少し、国に入る税金が大幅に減ることが予想される。
それだけにとどまらず街のレストラン、居酒屋、スナックなど酒を扱うお店全ての売り上げにも影響が出るかもしれない。
アルコールはタバコに比べると国民の健康への考え方がかなり異なる。お酒はタバコほどは健康にマイナスと思われていない。
経験的にアルコールは量にもよるが神経に良くないようには見える。脳にもおそらく悪影響がある。(診察する側からみて)
セリンクロはアルコール依存症にしか処方されないので、あまり関係ないじゃないと思うかもしれない。実は自分もそう思っている。
ところがアルコール依存症の人たちはグレーゾーンまでいれると意外に数が多いのである。彼らが日本の夜の経済を支えているところがあるので、大幅に飲酒量が減れば影響がないとまでは言えない。
算定条件がなかなか明確にならないのをみると、国もどのくらいの経済的影響が及ぶのか予測できないことも関係あるのかもしれない。
なし崩しにセリンクロの処方を許すと新薬であるし医療費がかなり増えることももちろんある。その理由はアルコール依存症の実数が数百万単位であることが大きい。
まして、ギャンブル依存や買い物依存などへの適応外処方などもされるようになれば、大変な処方数になるであろう。
国はセリンクロを処方できるラインを決めたいのである。
参考
Dolores O'Riordan(The Cranberries)