昆虫やそれに寄生する生物には、相手の脳を操作し正常な判断ができなくしてしまうものがある。よく知られているものはカマキリやコオロギに寄生するハリガネムシであろう。
上の記事はハリガネムシについて記載されている。ハリガネムシとはカマキリが自転車や車に轢かれた後に腹から出てくる真っ黒い針金のような寄生虫である。子供の頃、初めて見た時、相当に気色悪かったのを思い出す。
上の記事を要約すると、ハリガネムシはもともと水生の生物だが、この幼生を取り込んだユスリカなどが陸に飛び立ち、陸生のカマキリなどに捕食され、カマキリの体内で成長したハリガネムシがカマキリの脳を操作し、入水自殺させ水の中に戻るという話である。つまりハリガネムシはカマキリを利用している。ポイントは脳を操作するという驚くべき方法をとっていることだと思われる。この記事にはカマキリやコオロギが入水自殺する理由は「光」と記載されている。水辺のキラメキのようなものに吸い寄せられるようなのである。
さて、今日のエントリはオカルトのテーマにあることに注意してほしいが、ネコに寄生するトキソプラズマがヒトに感染し、精神に影響を及ぼすという話がある。
上の記事の前半では、トキソプラズマがネズミに感染することにより、ネズミの脳を操作しネコに対する恐怖心を失わせると記載されている。トキソプラズマはネコの腸内でしか有性繁殖できないため、ネコに戻るためにネズミの脳を操作している。以下記事から抜粋。
トキソプラズマは宿主のネコの腸内でのみ有性繁殖するようになっており、トキソプラズマにとってはネコが終宿主となります。トキソプラズマの主な感染経路は経口感染ですが、人間はネコ用トイレやネコの飲食物などを扱う際に、この寄生生物に感染してしまうことが多いそうです。トキソプラズマはネコ以外の宿主の中では無性生殖で体内全体に繁殖します。感染の初期段階ではトキソプラズマ症を引き起こし、免疫不全の場合は重度の組織損傷を伴うこともあります。といっても、ほとんどの場合は免疫系に抑えられて大きな問題になることはなく、不快感や寒気、熱、全身の痛みなどの症状に襲われる程度で、数日中に免疫系により活動が抑えられます。ただし、妊娠の初期段階にトキソプラズマに初めて感染してしまうと、トキソプラズマが発育中の胎児にも感染してしまい、胎児に重度の障害を負わせたり最悪の場合は流産してしまう可能性もあります。
このようなこともあり、トキソプラズマが感染したヒトの脳にも何らかの影響を与え判断や行動を変えているのでは?という意見もある。後半から抜粋。
チェコのプラハにあるチャールズ大学に勤める寄生生物学者のヤロスラフ・フレグル氏は、10年以上に渡って2500人の被験者の人格評価を続けるという大規模調査を行っています。この調査結果によれば、トキソプラズマに感染している人間の行動にはしばしば同じ特性がみられるそうです。例えば、トキソプラズマに感染している男性は内向的で、疑い深く、反抗的。女性の場合は信頼性があり従順な人が多いそうです。さらに、単純な反応時間を測るテストを行ったところ、トキソプラズマに感染している人々は感染していない同年代の人々よりも反応時間が遅いという特徴もみられました。他にも、2009年にチェコで3890名の新兵に対して行われた調査では、トキソプラズマに感染している陰性の血液型を持つ兵士は、感染していない陽性の血液型を持つ兵士の6倍も多く交通事故を起こしていたことが明らかになっています。陰性の血液型、つまりはRhDタンパク質の有無がトキソプラズマとどのように関係して交通事故の発生率を高めているのかは定かではありませんが、これらが何かしら作用していることは明らかです。
統合失調症とトキソプラズマの話は以下である。
他にも、トキソプラズマ症と統合失調症の間にある潜在的なつながりも指摘されています。
Stanley Medical Research Instituteの精神科医であるE・フラー・トーリー氏とジョンズ・ホプキンス大学のロバート・ヨルケン氏による調査によると、初めて統合失調症を発症した患者の中には、トキソプラズマに感染している人の数が非常に多いそうです。ただし、統合失調症はさまざまな要因から発症するものなので、トキソプラズマにより統合失調症が発症したと断定することはできていません。また、トキソプラズマが統合失調症を含むあらゆる精神病の原因となっているかどうかについてもまだまだ情報が足りていない、とのことです。
今回の記事のタイトルだが、「統合失調症を発症した患者は幼少期に猫を飼っていたという共通点がある」という内容の論文が2015年1月に発表され、その後2017年に関係がないという論文が出ていたといったオチである。
これらのヒトの中に何らかの生物が入り込んで脳を操作し、重大な精神病を発病させていると言った思考は、精神医療現場に縁がない人たちやまだ若い人たち、高校生、大学生は陥りがちだと思う。実際、攻殻機動隊のようなアニメもあるからである。むしろハリガネムシなどの行動にインスパイアされてこのようなアニメが出来たのではと思うほどである。確かに発想の軌跡にこれらのアニメが存在している。(実は攻殻機動隊は僕は読んだことがない)
精神医療を実際にしていると、これらの考え方(トキソプラズマと統合失調症の関係)など、全くなさそうに見えるので、まず考えることもない。最も重要なことは、トキソプラズマ感染による脳への影響は器質性疾患のラインに存在しているが、統合失調症は内因性のラインにあることであろう。この差は非常に大きい。
僕がノラネコの写真のよくアップしているのに決して触ったことがないのはトキソプラズマが理由ではなく、漠然と触りたくないからである。
このブログでは「ヒトの脳の操作」という主題は繰り返し出てきている。以下を参考にしてほしい。