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Channel: kyupinの日記 気が向けば更新
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非定型精神病の「逮捕される」と訴える精神症状の座

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今回は、広汎性発達障害と非定型精神病の家族関係の相違の補足的な記事である。

 

典型的と言える非定型精神病の患者さんは「家族が逮捕されている」と言う奇妙な訴えが診られることがある。これは全く異なる生活歴でも同じ妄想が診られる点で非常に興味深い。過去ログの以下の記事は参考になる。

 

 

上の記事の要旨は以下である。

 

しかしこのタイプの妄想が出る婦人は、生活歴が全く異なるのに訴えが非常に似ていることは注目に値する。この悲観的な妄想は不安焦燥感を伴い、さほど自分自身の心配をしていないことも興味深い。普通、内因性うつ病の人は、自分のお金がなくなるとか、健康状態が著しく悪化することを心配することが多い。だから、この妄想は中間的妄想なのである。

 

ある時、頚髄の圧迫による出血(つまり大怪我)の患者さんの精神症状のコントロールを依頼されたことがある。この患者さんは、意識障害も多少あったが、極めて非定型精神病に似た精神症状を呈していたのである。この患者さん訴えの主旨は以下の通りである。

 

〇すぐに弁護士か警察を呼んでほしい。

〇すぐに家族は逃げるように。

〇そのまま(家族が)家にいると拉致される。

〇お金をすぐに集めてまとめておくように。

 

このような妄想気分は極めて非定型精神病的だと思う。

 

頚髄の出血を生じ、この妄想内容である。基本的に非定型精神病の精神症状(夢幻様状態や妄想)は脳の下の方に座がある感覚がある。(これは臨床感覚)

 

この人の場合は、上部の頚髄に出血があるのでそのすぐ上部への影響も少なからずあると思われる。この患者さんは、臨床感覚そのままの精神症状が出現していると言えた。

 

この患者さんの治療だが、ヒルトニン(プロリレリン)の投与1択だと思う。他の治療、例えばバルプロ酸やクエチアピンも良いがいずれも対症療法であり、第2選択的な治療である。

 

その後、家族関係を調査すると、非常に仲が良いと言うのである。これはある意味驚愕すべきことである。

 

そう理由は、家族関係が円満で仲が良いのは、今回の頚髄出血以前、何十年も前からそうだったこと。つまり、頚髄損傷以後に急に円満になったわけではないのである。

 

良く考えると、しばしば更年期に発症する非定型精神病の家族も、患者さんが更年期以後に急に仲が良くなったわけではないことは重要である。

 

これはそれまでの本人家族関係が、脳の危機に際しても精神症状の範囲を制御していると診るとなんとなく辻褄が合う。家族関係により、将来生じうる妄想の範囲が既に決まっているように見えるのである。

 

僕は既に35年以上、精神科医をしているが、今なお新しい発見がある。精神科医ほど科学的視点で素晴らしい仕事はあまりないと思う。

 

今日の記事は以下の「リウマチの人は統合失調症になりにくいという謎」に似ている。

 

 

この記事の要旨は、(以下抜粋)

 

これはあくまで私見だが、リウマチは若い頃から何らかの免疫異常が既に発生しているから、統合失調症にならないような気がする。この考え方もワケがわからないと思うが、検査値の異常や関節症状が全然出ていないだけで、サイレントな状態でリウマチの萌芽のようなものが若い頃からあると言う意味。このリウマチの萌芽が脳をあらかじめ支配しているので、統合失調症に移行が難しくなっているのであろう。

そういう視点で見ると、
リウマチの人は統合失調症になりにくい。

という説は変ではないということになる。なぜなら、この考え方の方が他の疾患にも広く辻褄があうからである。

 

 


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