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慢性倦怠感とSPトローチ

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今回の話は最近思うようになったことでそれまではあまり意識しなかった。その患者さんは約20年前に初診し、その後ずっと外来通院している。もう数年すると定年退職になる年齢である。

 

最初、慢性的な倦怠感とうつで初診している。なぜか不眠がなく、ここ20年間、一度も眠剤を処方していない。そのようなこともあり精神科患者さんとは言え身体的背景が大きいのではないかと思っていた。面白いのは初診前にプロザックをどこかのクリニックで貰っていたこと。効いてはいなかったが。

 

20年前と言えば2000年頃で、国内ではまだデプロメール(フルボキサミン)くらいしか発売されていなかった。当初、あらゆることをやってみた。あらゆる抗うつ剤や抗精神病薬、気分安定化薬、サプリメントなどである。ECTなども実施している。本人に勧め2か月くらい入院させたこともある。

 

あまりぱっとした薬はなく、現在の向精神薬は、パキシルCR25㎎、リリカ150㎎、レキソタン15㎎、サインバルタ40㎎、レキサルティ1㎎である。この中で比較的良いと思うものは、パキシル、リリカ、レキサルティだと思う。他はあまり必要ないようにも思うが、微妙なバランスで維持されているように見えるし、サインバルタは怖くて中止できない。

 

この中には近年発売のレキサルティもあるが、以前はエビリファイだったので切り替えた薬。本人によるとエビリファイより少し良いという。

 

本人によれば、僕が診始めて劇的に良くなったというが、僕自身は今のレベルは低いままなのでそこまで治療が成功した患者さんとは思っていない。薬の効き方もどれもぱっとしないが、総合的にようやくまあまあと言う妙な効き方である。

 

初診した当時は、ひょっとしたらこの人は退職、障害年金になるのでは?と思ったが、危機だったのは最初の2年くらいだった。その後は、なんとか就業を持続できるほどのレベルは維持できていた。

 

精神科医から見ても、このような患者さんが就業が続けられるのと、退職になり障害年金になってしまうのは大違いである。日本の国家財政から見ても、このような患者さんが税金と社会保険料などを支払い続けるのと、逆に国が生涯に渡り、障害年金を給付し続けるのは大きな違いだと思う。

 

その患者さんが毎回、SPトローチを希望するのである。不思議なことに精神科では1か月に1度の通院で必ずSPトローチを希望する人がいる。SPトローチは急性疾患の薬なので、毎回処方していたら相当に変である。その辺りを本人に説明し毎回は処方しない。

 

この患者さんの場合、おそらく扁桃ないしその周辺に慢性炎症があり、その結果SPトローチが必要になるのだと思う。一般的な風邪ではないからこそ毎回希望するのである。

 

彼の疾患には奇妙な点がいくつかあるが、全く不眠がないのとSPトローチは大きなポイントである。これらは、慢性疲労症候群という謎の病態を理解するヒントになっていると思う。

 

参考

 


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