本来、ベンゾジアゼピンには過食になったり体重増加させる要素がない。今回は、拒食状態とベンゾジアゼピンについて。
今は大学入学共通テストの直前だが、試験直前のような緊張状態では食欲がかなり落ちるのが普通である。これは自律神経で言えば、交感神経が優位になり副交感神経が抑えられた状態である。
例えば過緊張からヒステリー球が生じる状態では、食事が喉に通らない。厳密には食事が喉を通らない状態と拒食状態とは異なる。
精神科の医療現場で目撃される拒食状態には食事に対するモチベーションがあまりないことが多い。
それに比べ過緊張で食事が摂れない状態は、「食事を食べようとしても食べられない」という状態が多い。つまり食事へのモチベーションはあるのである。食欲はヒトの本能なので当然である。
そのような視点では「神経症的な食事が摂れない状態」は症状としては軽いと言える。
神経症的な交感神経優位で食事が摂れない状態にはベンゾジアゼピンはかなり効きそうである。緊張が取れて、食事ができるようになる。(喉を通るというべきか)。
亜昏迷での拒食状態は、これもある種の交感神経優位の状態であるが、それだけには留まらず、普通食事へのモチベーションはないのが普通である。この状況は本能の外側に存在する。
この状態でのベンゾジアゼピンは山のように飲めば別だが一般的な用量では効果がないと思う。
過去ログで過度の拒食にECTが有効と記載している。これは昏迷~亜昏迷がECTで改善するためでその結果、食事が摂れるようになる。
古典的摂食障害の拒食症患者には、「食事を食べない」という逆の強いモチベーションが存在している。これは統合失調症ではないが、神経症というにはかなり違和感がある現象だと思っていた。現在、このタイプの患者さんは全くというほど診ない。
このタイプの拒食症患者はベンゾジアゼピンで症状が変わることがなかった。他の症状には無意味ではないといったところである。
古典的拒食症は、統合失調症ではないものの内因性精神病的に近い疾患のように見えていたのである。(ただし抗精神病薬はあまり効かない)
古典的拒食症には統合失調症らしいプレコックス感などなく、対人接触性も統合失調症っぽくない。
なぜそういう風に見えたかというと、今から考えると、思考面の硬さだった思う。