線維筋痛症の薬物の推奨度と忍容性③の続き。
1年目
2週間ほど、あまり外に出られない時期があった。今もよくない。痛みは腕の付け根が痛い。リリカのボケはあまりなくなっているが、多少は忘れる。
以前より表情は良くなっているが・・
サインバルタを中止しトリプタノール主体とする。これなら3環系抗うつ剤の方が遥かに良い。今回はアンプリットではなくトリプタノールを選ぶ。
精神科では薬物治療を続けているうちに、かつては副作用のために服用できなかった薬が服用できるようになる傾向がある。つまりその人の薬の忍容性は次第に変わっていく。
リリカは150mgまで増量。ワッサーVを中止し活性型ビタミンB6製剤のみとする。トリプタノールを主体にしたため、一部を就前に服用させ、ルジオミールは中止する。
リボトリール 2mg
トリプタノール 125mg↑
ブロバリン 0.4
イソミタール 0.2
ベゲタミンB 1T
ロヒプノール 4mg
ユーロジン 2mg
リリカ 150mg↑
ピドキサール 60mg(活性型ビタミンB6製剤)
1年と2週間
痛みはないけどリリカで転ぶ。平衡感覚がとても悪くなるという。トリプタノールは便秘になるが、気分はとても良いらしい。元気になりますという。とにかくボケが激しい。
リリカによる平衡感覚と認知に対する悪影響が酷いため減量する。平衡感覚の改善に対し、一時的にツムラ17を併用。痛みを考慮しリリカは急には中止しない。(基本的に、抗てんかん薬は急激に中止しない方が良い)
リリカ 100mgまで減量。
ツムラ17 7.5
追加。他変更なし。
1年2ヶ月
今は痛みは全くない。しかし日付の感覚がない。直前のことを忘れている。
リリカは継続が難しいため中止。トラムセットに変更する。同時にツムラ17も中止。トラムセットは比較的最近に発売されており、まだ1年経っていない(ようやく1年くらい)。リリカは特に精神科の患者さんでは肥満や過食が生じることがあるが、トラムセットにはそれがない。
トラムセットは日本でのエビデンスはⅡa、推奨度Bである。
リボトリール 2mg
トリプタノール 125mg
ブロバリン 0.4
イソミタール 0.2
ベゲタミンB 1T
ロヒプノール 4mg
ユーロジン 2mg
トラムセット 3T
ピドキサール 60mg(活性型ビタミンB6製剤)
解説
リリカは、線維筋痛症に最も定番の薬と言えるが、リリカのエントリで記載している通り、認知に対する副作用が結構多く副作用で服薬できない人もいる。中毒疹はないわけではないが、比較的稀である。過去ログで「リリカで自転車が乗りにくくなる」という記載があるが、その人と今回の人は別人。彼女は普通に歩いていて転んでいる。
サインバルタやリリカはエビデンス、推奨度とも最高レベルであるが、この人には継続できないために不適切である。一方、服薬が容易でないように見えるトリプタノールは125mg服薬しても眠さ、尿閉などの自律神経症状、肥満などの副作用が全く出ていない。
やはり使ってみないとわからないのである。
エビデンスについては日本の場合、たくさんの研究がされているわけではないので、推奨度の方が重要である。推奨度の比較的高い薬物をその患者さんに試していく方針が良い。人によっては、推奨度が低いものでも非常に有効なことがあるが、優先順序を考えない治療方針は相手が疼痛だけにお薦めできない。
またこの人はサインバルタやリリカで中毒疹が出て中止したわけではないので、将来的に使えないとまでは言えない。サインバルタは少量使えば、補助的に良いかもしれないと思う。それはリリカも同様である。
なお、線維筋痛症では、口腔内の症状として、口腔内乾燥、口内炎、舌炎などが診られることがあるが、これらに総合ビタミン剤は有効である。元々、腰痛などにビタミンB12などを静注すると痛みが緩和する。また口内炎にビタミンB12は有効である。また、舌炎には活性型ビタミンB6製剤が有効なので、このタイプの患者さんはビタミンB群は疼痛には効かなかったとしても補助的に有効である。また多く摂り過ぎたとしても、尿で出てしまう。(水溶性のため。過去ログ参照)
色々な症状の面倒を診ていると、どうしても薬が増える。この人はこれでも、あまり服用していない方である。(リウマチの薬をもはや服用していないため)。
前回、リンパ節が腫れた事件を記載している。あのリンパ節腫脹を契機に、次第にリウマチの血液所見や臨床所見が消失し、整形外科医からリウマチは治癒していると言われたと言う。彼女は10年以上、リウマチだったのである(リウマチの専門医の診断)。
つまり・・
身体と精神(脳)は極めて関係が深く、移行や揺り戻しが常に生じていると診ることもできる。過去ログには、このような話は山ほど出て来ている。
器質性疾患、非定型な病態においては身体も精神もない。
あの「リンパ節腫脹及び感冒様症状の遷延」こそ、彼女の大きなホメオスタシスの変化のほんの一部を表現しているように思われる。
彼女にとって、一時的な悪化ですら、快方に向かう1ページなのかもしれない。
(続く)
参考
リリカ
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線維筋痛症と身体症状④
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