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デプロメール、フルボキサミンが遂に枯渇した話

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昨年から、ジェネックメーカーの不祥事を契機に色々な薬が供給逼迫している記事をアップしている。上記は昨年12月15日の記事だが、あれから1か月経ち、遂に一部の向精神薬が処方できない状況に至った。
 
現在、うちの県では、たぶん全国的にもそうだと思うが、デプロメール、ルボックス(フルボキサミン)の新規購入ができない。そのために先月デプロメール150㎎処方した人は、今月来院時に処方できないのである。
 
そのため、本人に他のSSRIに変更するしかないことを説明し変更処方している。この際、デプロメールならではの特殊性に気づいた。
 
デプロメールは日本で初めて上梓されたSSRIである。鳴り物入りで発売されたが、うつ病には全然効かない代物だったのである。それはその通りで、海外ではうつ病の適応がない国もあるほどのSSRIであった。
 
発売当時、うつ病患者さんに3環系ないし4環系抗うつ剤からデプロメールに変更すると、悪化しない方がむしろ少ないほどの素晴らしいパフォーマンスを示した。それはその通りで、アモキサンやルジオミールの方が遥にデプロメールより効果的だったのである。
 
デプロメールがいかにも良さそうな疾患イメージは、確認強迫や手洗い強迫がある一般的な強迫性障害である。デプロメールに多少でも対抗できる3環系、4環系抗うつ剤はアナフラニールしかない。日本で初めて発売されたSSRIデプロメールは実は特殊な抗うつ剤なのであった。
 
3環系・4環系抗うつ剤に比べデプロメールの方が優れる点は副作用の少なさ、つまり忍容性の低い人にも処方できることであったが、日本人には必ずしもデプロメールは服用し易い薬ではなかった。それでも総合的には3環系・4環系より副作用は少ないと言えた。
 
デプロメールは現代的にはASDの人で強迫性障害が酷い人には服用可能なら良い薬だと思う。
 
当初、デプロメールの処方件数は伸びなかったが、SSRIは他がまだ発売されていないので、かなりの処方件数があったのは確かである。
 
現在、デプロメールを未だに処方されている人は「確認強迫や手洗い強迫がある一般的な強迫性障害」でない人もかなりいる。しかもデプロメール単剤でかなり落ち着いており、もう何年も安定している。このような人は、ジェイゾロフトやレクサプロでも十分に見える。このような人にはデプロメール以外のSSRIに変更しやすい。波乱はあるかもしれないが、長期的には変更可能に見えるのである。
 
今から考えると、デプロメール(フルボキサミン)はたいした薬でもないのに処方されて過ぎていたと思う。そう思う理由は、デプロメールを処方されていた人は他のクリニック(特に閉院したクリニック)からの転院患者さんが多いからである。つまり元々の疾患がかなり軽症なのであった。
 
例えばフルボキサミンを150㎎処方されていたとしよう。この用量にフィットする用量をジェイソロフト(セルトラリン)かレクサプロに代替するとしたら、細かい換算はともかく臨床感覚的には、ジェイゾロフト50㎎またはレクサプロ20㎎くらいだと思う。しかしジェイゾロフト(セルトラリン)も枯渇しつつあるのである。うちの病院ではもはや先発品のジェイゾロフトの25㎎しか処方できず、50㎎錠は購入できなくなっている。
 
SSRIは基本、先発品しかない薬は安定供給されると思うので、レクサプロに変更する方が後の心配は少ないと言えた。なお、ジェネリックが多く処方されている薬が先発品まで枯渇する理由は以下の通りである(上記リンク記事から抜粋)
 

例えば、デプロメール、ルボックス、フルボキサミン。先発品はデプロメール、ルボックスで、これくらい古い薬だとフルボキサミンを服薬している人が多かったと思う。フルボキサミンは国内でかなり処方されていたらしく、ジェネリックが不足すると次第に先発品もひっ迫し始めた。その理由は、先発品メーカーは古い先発品の製造ラインを縮小しているので、急に増産などできないからである。(理由は売れないため)

 
問題なのは、デプロメールを処方されている人は長期処方の人が多いことである。ルール的にはデプロメール単剤の人は3か月処方できる。しかしさすがに3か月処方の人は滅多におらず、たいてい1か月~2か月の人が多い。ということは、150㎎処方している人が2か月処方を希望した場合、50㎎錠は180錠必要である。ちょっと前に在庫が200錠ほど残っていたが、ひとたまりもないことがすぐにわかると思う。
 
長く精神科医をしているが、このように患者さんに説明し、処方変更することは今回が初めてである。しかもこれが来週も来月も続きそうなのが憂鬱である。
 
SSRIはいずれもセロトニン取り込み阻害の仕事は同じだが、いずれのSSRIもかなり構造式が異なっており、処方してみないと合うか合わないかわからない。しかしレクサプロは忍容性が低い人にも処方しやすいので、重い強迫性障害がない人には変更しやすいように見える。
 
しかしデプロメールそのものがないので、併用及び切り替え期間が設けられない。これはレセプト的にはかなり問題で、例えばデプロメール150㎎の人にレクサプロ20㎎に切り替える際、漸減、漸増の手法がとれない。つまりいきなりレクサプロ20㎎を処方せざるを得ないのである(ジェイゾロフト50㎎も同様)。これは処方ルール的に認められないので、レセプトに注記するしかない。
 
新型コロナパンデミックで医療崩壊が言われているが、あまり関係ないジェネリックメーカーの不祥事から、違った形の医療崩壊が起こっているのである。
 
こうなった理由も、医療費削減からジェネリックを国が強く推奨し、なんとなくだが効果も同等とかアナウンスしていたが、実は恐ろしいほど雑に製造されていたことが原因にある。
 
国はジェネリックメーカーを叱責し、新規に正しく製造ラインを再構築するように言わざるを得ず、不正確な手法で既に製造されたジェネリック医薬品は廃棄となった。ここまでしないと国の面子が立たない。
 
そのようなことが、医療現場に影響してきていると言える。最も困窮するのはこれからなのかもしれない。
 
昨年9月の記事。
 
 
 
 
 

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