「線維筋痛症と身体症状④」の続き。
今回は症状の推移についてはそれほど触れず、線維筋痛症の診断基準や性格傾向などについて雑感的に書いていきたい。
彼女のその後だが、トラムセットを処方以降はあまり変化がない。疼痛については、概ね消退しているが、周期的に落ち込むことがあるといったところ。
ただ、一連の精神科治療が関係しているかどうかは不明だが、リウマチが治癒したのは大きいと思われる。ただし彼女自身は、リウマチが治癒したことはあまり重大には思っていないように見える。資格を取れるように勉強していると言った話も聴くし、ADLがかなり改善しているのは間違いない。
彼女に、
以前の健康な時を100%としたら、今は何%くらいでしょうか?
と聞くと、65%くらいと答えた。この65%と言ったことこそ、線維筋痛症の疾患性(特に性格傾向)の一面をよく表現している。(彼女は80%は改善していると思う)
その理由だが、線維筋痛症によく診られる性格傾向は明らかになっており、整形外科のドクターもそのような指摘をされる。ある整形外科の先生によれば、「線維筋痛症の人の性格は少し変わっている」らしい。非常に漠然とした言い方であるが・・
よく指摘される線維筋痛症の人の性格傾向は、
強迫
完全主義
執着性
自己犠牲
攻撃性
几帳面さ
不安傾向
抑うつ傾向
真面目
模範的
頑張りや
自己抑制的
他者の評価を気にすること
周囲の期待に応えようとする過剰適応
などが挙げられている。上の所見の一部は、広汎性発達障害的なものもあるが、そうとはいえないものもある。
個人的に、線維筋痛症の一部に広汎性発達障害にも該当する人はいると思うが、そうでない人(厳密には診断できない人)も多いように思う。今回の患者さんは広汎性発達障害には入らないと思った。
線維筋痛症は臨床検査的に正体がつかみにくいのが特徴だと思う。疼痛は自己申告の部分が大きいからである。しかし、これは精神疾患全般にもそのような傾向がある。(重要)
線維筋痛症は元々、線維筋痛症単独で発症するものを一次性線維筋痛症と呼び、他の疾患に随伴して発症するものを二次性線維筋痛症と呼ばれていたが、今は区別されていない。(線維筋痛症という疾患概念に包括される)。
最新の線維筋痛症の診断基準では、疼痛拡大指数が一定以上あることに加え、臨床徴候重症度も一定以上あることが含まれる。
この後者の「臨床徴候重症度」だが、線維筋痛症にしばしば合併する身体所見、あるいは精神所見が挙げられている。例えば、疲労感、うつ、思考・記憶障害、睡眠障害、過敏性腸症候群、ドライマウス、ドライアイ、光線過敏、口腔内潰瘍、胸痛など多岐に渡る(多すぎて全ては挙げていない)。
実は精神科医から診ると、これらの臨床所見は、とりわけ「線維筋痛症」ではなくても他の精神疾患で診ることが結構あることが驚きである。
最新の診断基準では、これらの臨床的所見のポイントに加え、「3ヶ月は続くこと」と「慢性疼痛を説明する他の疾患がないこと」が挙げられている。
これで今回の一連のエントリは終わりですが、近くもう少し追加の記事をアップする予定です。
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線維筋痛症の診断基準について⑤
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