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聴覚情報処理障害(APD)

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精神疾患には聴覚情報処理障害(APD)と呼ばれる障害が合併していることがある。ただし、軽度の時は障害があるかどうかわかりにくいのではないかと思う。

 

なぜ今回この障害を取り上げたかというと、新型コロナのマスクの環境だと、この障害を持つ人はより辛いからである。この機会に聴覚情報処理障害(APD)について紹介したいと思った。

 

僕が最初にこの聴覚情報処理障害(APD)が合併しているのではないか?と思った患者さんはてんかん性精神病だった。新型コロナ流行のずっと以前の話である。

 

その患者さんは一見、聴力は正常だが、聴き間違いがとても多く、しばしば全く異なる理解をしていた。ある時など、僕が「こんな風に言いましたよね」と言うと、それを否定し僕が嘘をついていると言い始めた。証拠のカルテを看護師さんに持って来て貰いそれを見せると、「このカルテは改竄している」と訴えたのである。

 

患者さんが自分の理解と異なると思った時、その反応がどのようなものになるかは、精神疾患や性格にもよると思う。

 

聴覚情報処理障害(APD)では周囲に雑音がある環境だと、一層、聞き取りづらくなるらしく、すぐ近くで話をしている人がいると、急に会話を止める。周囲で電話をしている人がいる時も同様である。

 

聴覚情報処理障害(APD)は明確にこの障害があると思われる患者さんはかなり少ない。もちろん軽度の人は問題にしていない。僕の患者さんではいかなる疾患であれ、発達障害を合併している人に診られるように思う。

 

例えば上で挙げたてんかんの人もASDを合併していたし、既に統合失調症の診断を受けている人も生活歴や家族歴的にはASDを合併していることが疑わしかった。

 

脳内で聴覚情報が混線しているとしか思えないが、僕の患者さんの場合、聴覚情報処理障害(APD)の障害を紹介し、それを指摘しても、それが受け入れられないことが多かった。(つまり病識がない)。

 

そのような風なので、僕が嘘をついていると言うのである。(カルテを改竄をしていると言うのと同様な理解)。

 

精神疾患がなく、聴覚情報処理障害(APD)だけある人は、仕事の際に失敗体験が多くなり、時間が経つとそれに気付く人もいると思われる。

 

聴覚情報処理障害(APD)は器質性疾患と考えられ、効果的な薬物療法は今のところないと思う。日常生活でそれを自覚して注意深くすることで多少は困難さは軽減するかもしれない。

 

脳血管障害や交通事故後の高次脳機能障害との相違は、これらが元々健康だった人が脳出血や交通事故で機能が損なわれたことに対し、聴覚情報処理障害(APD)は生来性の機能障害であることである。

 

治療の困難さの差があるが、将来、聴覚情報処理障害(APD)に対し有効なリハビリテーションが可能になるかもしれない。

 

あるいは遠い将来になるが、再生医療により治癒可能になるかもしれないと思う。

 

 

 


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