ロゼレム及びベルソムラはリエゾンの際に処方されているのをよく見る。実は精神科医はロゼレム、ベルソムラはあまり処方しない。その理由の1つは精神科ではこれら2剤では改善しない、よりヘビーな不眠症を扱うことが多いからである。
また、今はデエビゴが発売されているのでベルソムラではなくデエビゴを処方する。デエビゴはベルソムラの上位互換のようなものである。リエゾンの際、不眠症の患者さんにベルソムラからデエビゴに変更するように助言することが多かったこともあり、リエゾンの総合病院でもデエビゴを処方する医師が多くなった。それくらいベルソムラとデエビゴの差は歴然である。
従って、僕は今から思えばロゼレムについてあまり良く理解していなかった。処方する機会が少なかったし、ロゼレムを処方されている人を診始めたケースでは、その良さ(どのように変化したか)が気付けなかったからである。
今回は以下のロゼレムと夜間頻尿の記事の続きである。
現在、精神科でも高齢者を診ることが増えたが、ずっと昔は精神病の若い患者さんばかりだった。それは精神科病棟を診れば明らかだった。車椅子の患者さんなんて皆無だったからである。これは以下の記事を参照してほしい。
ロゼレムが高齢者の夜間頻尿に対し治療的なことを理解して以降、高齢者に対しロゼレムを処方することが増えた。
この際、最も驚いたことは、高齢者の認知症の随伴症状にロゼレムが治療的だったことである。随伴症状とは例えば、拒薬、介護へ抵抗、看護者への暴力、興奮などである。これらの症状は、BPSD(Behavior and Psychological Symptoms of Dementia)と呼ばれている。
患者さんがロゼレムを処方することで穏やかになり、鎮静系の薬が減量できるケースもある。この鎮静系の薬とはクエチアピンやバルプロ酸Naなどである。
これは、治験をしてもおそらく有意差が出ないレベルの変化である。認知症の高齢者の万人がそうではないし、いつも傍にいる看護師やケアワーカーが気付くレベルの変化だと思う。
このように考えると、リエゾンの総合病院は高齢者の入院患者が多いことから、ロゼレムをよく処方されていたことは合理的な選択だったと思う。ロゼレムで、夕方から夜間不穏と夜間頻尿が改善されるのであれば、看護者の仕事を減らすことができるからである。
なぜロゼレムが精神症状へ影響を与えるかだが、メラトニン受容体と関係があるように思われる。メラトニンはロゼレムとは同じではないが、不明な点が多いもののいろいろな薬理作用があると言われている。
アメリカではメラトニンがサプリメントとして売られているが、主に宣伝されているものとして、片頭痛予防、抗酸化作用、動脈硬化予防、心臓発作の予防、老化防止、育毛刺激、がん予防などが挙げられるもののエビデンスに乏しいものが多い。
上の中で比較的良く言われているものとして、抗酸化作用が挙げられる。メラトニンの抗酸化活性はビタミンEの2倍であることが証明されており、細胞膜と血液脳関門を通過できる抗酸化物質とされている。
これらのいずれかの作用あるいは未知の作用が好影響を与え、認知症のBPSDを減少させていると思われる。