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トリンテリックスからサインバルタへの切り替え

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トリンテリックスも発売されて数年経ち、初診時にトリンテリックスが選択されることも増えていると思う。

 

僕はトリンテリックスは5㎎から開始することが多いが、既に他の病院で抗うつ剤の服用歴がある人は10㎎から始めることもある。基本、添付文書的には10㎎からである。

 

トリンテリックスとレクサプロは開始用量、最高用量も偶然同じ用量になっている。つまり10㎎から開始し最高用量は20㎎である。

 

この2剤の特徴は、最初の用量が既に治療用量に達していること(少なすぎないと言う意味)。従って初診時に10㎎投与されて継続し続け、一度も20㎎を服用したことがない人がけっこういる。僕の患者さんの中に限れば、20㎎まで処方したことがない人がたぶん半分くらいいる。

 

これは抗うつ剤に限らず、新しい非定型抗精神病薬もその傾向があり、ラツーダの添付文書には統合失調症の治療に対し、

 

〈統合失調症〉
通常、成人にはルラシドン塩酸塩として40mgを1日1回食後経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日量は80mgを超えないこと。

 

と記載されている。統合失調症に対し40~80㎎投与し、それを超える用量は投与できない。

 

最初にトリンテリックスから開始した際、何らかの理由でサインバルタに切り替えたい場合、サインバルタは治療域ではない用量から開始になる。サインバルタの添付文書には、

 

〈うつ病・うつ状態、糖尿病性神経障害に伴う疼痛〉
通常、成人には1日1回朝食後、デュロキセチンとして40mgを経口投与する。投与は1日20mgより開始し、1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgずつ増量する。なお、効果不十分な場合には、1日60mgまで増量することができる。

 

この記載に従えば、最初は20㎎からである。この用量はうつ病を治療するには少なすぎる。もちろん長期的に安定し、20㎎でも問題ない人もいないわけではないが、今回の話は、治療開始のことである。

 

従って、トリンテリックスを10㎎処方していてなんらかの不都合があり、サインバルタに変更する場合、一度では治療域の処方に移行できない。

 

一般的にはトリンテリックス10㎎を継続しつつサインバルタを20㎎併用し、サインバルタを40㎎まで増量して、その人に良さそうであればトリンテリックスを漸減する流れになる。

 

これはおそらく好ましい手順的なもので、医師によると、一度にトリンテリックス中止しサインバルタ20㎎を開始する人もいると思う。もしトリンテリックスで継続できない副作用(中毒疹など)が出たのであればその方が良い。

 

そうした場合、トリンテリックス10㎎は十分な治療用量であることに対し、サインバルタ20㎎は治療するには足りない用量であることは重要である。

 

見方によると、サインバルタ20㎎は治療用量でないからこそトリンテリックスは併用した方が良いとも言える。うつ病治療の空白ができるからである。

 

抗うつ剤の変更の際に一時的に併用する期間があるのは、主に離脱症状を避けるためのことが多い。しかしトリンテリックスは離脱があまりないようなので、10㎎程度なら急に中止しても良さそうに見える。

 

トリンテリックスが切り替えの際に併用期間があった方が良さそうなのは、切り替え薬の用量が治療域に達していないことも大きいと思う。特にデプロメール、サインバルタ、イフェクサーはそうである。

 

最近は処方用量がシンプルになったこともあり、一時的な併用に違和感がある人がいるようである。今回の記事はそのような疑問へのアンサーになっている。

 

 


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