これは一般的なことではなく、ある女性患者さんの感想である。その次に続く言葉は、
その分、飲み足りない感じ。
なんだそうだ。飲み足りないのは「ジプレキサ」の方である。
彼女は統合失調症ではなく躁うつ病圏に入るが、セロクエル、ジプレキサはともに躁うつ病に有効な薬物である。
彼女にとってジプレキサはたいして「手応え」のない薬物らしい。量にもよるが、彼女はセロクエルの方が効き味が大きいとみなしているのである。
しかし・・
彼女にはジプレキサの方が遥かに効いたのである。おまけに体重も減少。最初、一過性に食欲亢進がみられたが、その後まもなくして消失している。
ジプレキサで体重減少する人はどのような前薬から変更するかにもよるが、珍しくない。僕の患者さんでは、今まで最高にジプレキサで減量できた人は、マイナス16kgである。ジプレキサの場合、30~40kgといった極端な減量は経験がなく、減ったとしても10kg未満が多い。
ジプレキサは色々な意味で奥行きが深い薬物だと思う。セロクエルも良い薬だが、若干大人しい薬で、爆発力のようなものがジプレキサより欠ける。その分、服薬できる人が多い。
彼女の場合、表情が締まり、生き生きとした感情が表出されるようになった。情緒に効いているのである。
彼女に試みた薬物
デパケンR ○
リーマス ×
ラミクタール △
トピナ 凶
ガバペン ×
イーケプラ ×
リリカ ×
テグレトール 凶
リボトリール ○
ブプロピオン △
ベンラファキシン ×
トレドミン ×
バルドキサン ×
リタリン ×
ルジオミール ×
テトラミド ×
トフラニール ×
ノリトレン △
アモキサン ×
アナフラニール錠 ×
アナフラニール点滴 ×
アンプリット ×
テトラミド ×
リフレックス ×
サインバルタ 凶
パキシル ×
ジェイゾロフト 凶
デプロメール △⇒×
レクサプロ 凶
セレネース ×
トロペロン注 ○
トロペロン錠 ×
PZC ×
クロフェクトン ×
クレミン ×
コントミン △
ルーラン △
リスパダール ×
リスパダールコンスタ ×
セロクエル ○
ジプレキサ ◎
エビリファイ △
インヴェガ ×
ロナセン ×
以下省略
これを見ると、「どの薬が良い場合に、どの薬がフィットしそう」と言う相関は、あまりアテにならないような気もする。特に難しい人では。
なお、ジプレキサの必要な量は5mgであった。盲点もいいところである。
参考
リタリンが処方されなくなった後、絶望的に悪化した人(この人は男性で、治療の苦労の仕方が少し似ている)
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セロクエルには飲み応えのようなものがあるが、ジプレキサにはそれがない
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