ラツーダは日本では最も新しい非定型抗精神病薬だが、等価換算的な数字はあまり紹介されていない。例えばネット上を検索してもあまり出てこない。
以下はラツーダの過去ログ。
そういえば、近年は等価換算という評価があまり言われなくなっている。その理由は、おそらく非定型精神病薬が治療の主流になったこともあると思われる。
2000年頃のように定型抗精神病薬もそこそこ使われていた時代は、新しい非定型抗精神病薬の力価的な目安が必要だった。
定型抗精神病薬は非定型抗精神病薬より副作用が強いため、副作用的限界が概ね処方上限であった。これは個人差があるので人により上限が異なる。1990年頃は今より上限がルーズで、上限を超えてもレセプトで査定されることがほぼなかった。だからヒルナミンの2000㎎とか、セレネースの30㎎などの処方が見られたのである。
それに対し、非定型抗精神病薬は定型に比べ錐体外路症状などの副作用が出にくいため、上限は副作用で推し量れない。また非定型抗精神病薬は高価な薬物なので、上限を超えた処方は厳格にレセプトで査定されるためできなかった。このようなことから、次第に抗精神病薬の等価換算が言われ始めたのだと思う。なお、錐体外路症状については以下の過去ログを参照してほしい。
非定型抗精神病薬が主流になると、それぞれの薬に個性が強いため、等価換算で比較することの意味が薄れてきた。そのようなことから、等価換算的な評価があまり言われなくなってきているのでは?と思う。
例えば、エビリファイとロナセンは等しい換算になっている。つまりリスパダール1㎎に対しエビリファイとロナセンは4㎎である。(=コントミン100㎎)
また、ジプレキサとシクレストも等しい換算となっており、リスパダール1㎎に対しそれぞれ2.5㎎である。
これらに意味があるのか?と言ったところだと思う。特に最近の非定型抗精神病薬は統合失調症以外にも処方可能で、マルチな薬効を持ち合わせていることもある。
ところで日本の非定型抗精神病薬の上限は概ねコントミン換算で800㎎程度になっている。可能ならこの範囲で治療しましょうと言った感じだと思う。穿った見方をすれば、2剤まで併用可能なので、精神病の重い人でも1600㎎までで抑えて下さいとも取れる。まあ国はそんなことは考えていないと思うが。
新しい非定型抗精神病薬、ラツーダの等価換算はパンフレットなどでも全く記載されていない。ラツーダの等価換算はどのくらいなのか良くかわからないのである。
ラツーダは上限が80㎎なので、一般的なコントミン換算800㎎に従えば、
ラツーダ10㎎=コントミン100㎎=リスパダール1㎎
くらいの換算であろうと予測できる。実際、この換算通りらしいのである。
副作用的にラツーダ80㎎がリスパダール8㎎と等価とは到底思えないが、より新しいタイプの非定型抗精神病薬は、車で言うABS的なコントロールのしやすさがあるので違和感があるのだろう。これは、リスパダールは非定型と言いつつ、やや定型抗精神病薬よりな抗精神病薬であることも関係している。
なお、リスパダールは発売時点では上限12㎎で適宜増減できるため24㎎まで処方可能だった。発売数年後、リスパダールの上限は6㎎までに下げられたが、それに併せて薬価も上がった。しかし適宜増減はできるため今でも12㎎までは処方可能なのである。適宜増減可能な非定型抗精神病薬はリスパダールしかなく、これも定型抗精神病薬的な扱いだと思う。
大抵の非定型抗精神病薬はコントミン換算800㎎程度と言うが、リスパダールは一見6㎎上限に見える。しかし12㎎までの処方も可能なのである。このようなことも考慮すると、リスパダールは少し特殊な薬なのがわかる。(重度の精神病の人向けの非定型抗精神病薬)
ラツーダは40㎎から開始し翌日から増量できる。このようなコントロールしやすさも抗精神病薬の進化だと思う。
なお、レキサルティの上限2㎎はリスパダール換算で4㎎らしい。レキサルティは重い精神病には2㎎では抗精神病作用が不足する。レキサルティはローカルでは3㎎まで処方可能で4㎎は査定されると過去ログに記載している。(地域性あり)
レキサルティ3㎎はリスパダール6㎎に相当し、この換算だとレキサルティ3㎎上限がより実際を表しているように見える。
いずれにせよラツーダに限らず、等価換算が20年前より意味が薄れてきているのは確かだと思う。