統合失調症の人の病状悪化、特に緊張病症候群(特に昏迷)を呈する病態では、便秘はあっても下痢になることはほとんどない。交感神経緊張状態なので、相対的に副交感神経の働きはかなり弱まる。
このような際に、しばしば麻痺性イレウスを生じる人がいる。抗精神病薬は基本、遮断薬で、薬そのものも便秘になりやすいため、治療が極めてしにくい状況に至る。
昏迷は動けないか、動きが乏しいので、抗精神病薬治療の猶予がまだあると言える。ジノプロストやパントールくらいを投与しつつ、抗精神病薬治療できる時期を待つ。
経験的には、緊張病性興奮状態でなおかつ麻痺性イレウスになることは滅多にない。それだけ体を盛んに動かしている状況では麻痺性イレウスにはなりにくいのだろう。
病状が悪くなると、高い確率で麻痺性イレウスを生じる人は、急性期にあまり選択肢がない患者さんである。
つまり難治性というか、薬物療法でコントロールしにくい患者さんである。
かつて、ジノプロストやパントールで改善しない状況で、ECTで改善させていた人がいた。緊張病性昏迷にはECTは非常に有効な上に、交感神経の緊張を抑えて、副交感神経も抑えたりしないからである。
なぜ、この場面で中核病院に搬送しないかと言うと、それができないからである。例えば院内が新型コロナクラスターの状況で、市中感染者の人も多く、中核病院が受け入れできない時である。
つまり、局面的にはこれが最速でベストな治療手法だと思う。ECTの1回で困難な病態が解消されるからである。