たまにネット上に、精神病は単に変わった考え方をする人じゃないですか?と言う人を見かける。これは精神病の実在を否定的に見ている人たちである。
これはおそらく反精神医学的思考へのスペクトラム上にあるのでは?と考えている。
これらの考え方が間違っていることは、実際に精神病の家族がいる人には理解できるであろう。
むしろ、最初にあげた疑問を言う人たちこそ、単に変わった考え方をしている。おそらくそんな風に言う人のほとんどは精神病ではないと思うからである。また、彼らは脳内で精神病とそれ以外の精神疾患の区別がついていない。
今回の記事では、精神病とそれ以外の精神疾患を明確に区別している。精神科では、さまざまな症状が挙げられるが、一般的に言えば、精神病では、平均的な性格の延長のように見えるものとはかけ離れた症状があるのが普通である。つまりこの2つには断層がある。
ちょっと変わっているが、周囲のほとんどの人たちから、性格と思われている人たちがいる。
これらの中では、例えばASDやADHDなどの精神障害が挙げられるが、周囲の人には、治療の余地などないと思われていることが稀ならずある。
生活全般がだらしなく、ギャンブルや飲酒でお金のコントロールができず借金をする。しばしばお店でクレーマーのような行動をとる、スナックなどで他の客に絡むため、数回、店主から警察官を呼ばれたことがあるような事例。
これは、なかなか精神科治療に至らないケースである。
家族から希望されて、この人の治療を引き受けたのである。家族が受診させた理由は、このままでは家族全体の不名誉になると思ったこと、その人と兄弟との差が際立っていたことなどがある。この人の父親も母親もよく知っている人で、僕なら何とかしてくれるのでは?と思い受診させたらしい。
この事例は明確に精神病ではなく、当初はアルコール依存症的な疾患では?思われた。長期的にどのような結果になるのか予測が難しいと思った。入院させて治療していたら、真の問題はADHDではないかと思うようになった。本人の生活歴がそんな風だからである。また、両親が海外を含め旅行に行くことが多すぎることもヒントになった。そもそも父親は僕は治療歴があり過去ログにも出てくる。
そしてストラテラを処方することにしたのである。退院時処方は、ストラテラ40mg、インチュニブ2mg、バルプロ酸Na600mgほどであった。それ以外の眠剤、抗うつ剤、ベンゾジアゼピンは必要なかった。この中で最も有効なのはストラテラという治療イメージであるが、バルプロ酸Naもかなり重要と考えていた。
40日ほど入院させて退院させた。初診日は、本人は渋々だったがなんとか任意入院で対応できたのである。ずっと開放病棟で治療していた。
この結果だが、目が覚めるような改善となったのである。今も外来通院しているが、生活そのものが180%変わった感じで、そもそも顔つきが違う、と言う表現ではまだ足らず、顔が以前と違い別人のようある。
そして、兄弟の生活と差がなくなったのである。
つまりだ。あの性格と誰からも思われていた行動、ある意味「人生」には疾患性があったのである。
ADHDの薬はいくつかあるが、ストラテラは特別な薬だと思う。