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ジプレキサを服用している新患

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今回はジプレキサから話が始まるが、後半の内容は「気分安定化薬と抗てんかん薬」についてである。

ジプレキサが主剤で他病院から転院してくる人は、大抵、

かなり肥満しているものの、そこそこ落ち着いている。また20mgまで処方されている人も比較的多い。

本人や家族に問うと、「色々治療を受けたが、結局はジプレキサでやっと落ちついた」くらいに言われる。

ジプレキサは非定型抗精神病薬の中で最も肥満しやすい薬とされており、最初からこの薬を使うのは精神科医としては決断がいることである。女性の場合は特に。ジプレキサの良い点は、わりあいまとまる確率が高いことだと思う。

ジプレキサで安定しておりしかも肥満が目立つ人は、今がそこそこ良いだけに変更し辛い。もし変更の際に再燃した場合、「この精神科医は何を考えているんだろう?」と思われかねない。

つまり、変更を試みる際は、なぜ変更するのか本人または家族に説明が必要である。しかも、説得力がある説明でなくてはならない。

一般的に言えることは、転院した時点でジプレキサで安定している人は、他の抗精神病薬に変更してもジプレキサ以上に良くなる確率はあんがい低い。その処方は試行錯誤した末の処方であることが多いのかもしれない。

例えばこのような処方だったとしよう。

ジプレキサ 25mg
他、眠剤など


これは20mgの上限を超えているが、コメントがあればレセプトで許される県もあると思うので、ありえる処方である。このような人を20mgまで減量するのは比較的易しい。しかしその後が結構難しい。

何かを追加して減量する方法もあるが、何を選ぶかが難しいし、併用する以上、少なくとも体重の減量が期待できる処方でなくてはならない。精神症状が改善するなら、なお良い。たいして減量できない上に、併用で固定されたりすると苦労した甲斐がない。

ジプレキサは肥満の欠点があるものの、薬効に厚みがある薬なので、20mgまで処方されている人を他の薬に代替するのは難儀である。しかし転院の際に、それ以外の薬も併用されている場合は少し状況が違う。

例えば、このような処方はどうだろう?

ジプレキサ 20mg
リスパダール 4mg
他、胃薬や眠剤。


これは絶対量で一般的な処方量をオーバーしていると思うが、滅茶苦茶な処方とまではいえない。これで落ち着いているなら、行きがかり上、こうなったと見るべきである。(消極的併用)

この処方がどのような経緯でこうなったかは非常に気になる。しかし紹介状があったとしても、その記載がないことが多い。家族か本人が知っていれば良いが、普通は期待できない。(たまに詳しい人もいるが)。

うちに転院してくる人の約30%程度は紹介状がないので、誰もこの処方の根拠を知らない。ということは類推するしかない。平凡に考えると、

リスパダールが当初使われていたが、十分でなかったか、あるいは経過中に再燃しジプレキサが追加された。十分に落ち着いた後、リスパダールを減量しようとしたが順調にいかなかった。

というのが1つの推理である。(あくまで想像だが)

そう思う理由の1つは、ジプレキサは最高量なのに、リスパダールは最高量ではないから。

また逆にこのような推理も成り立つ。

リスパダール4mgで治療していたが、増悪時にリスパダール液などを追加したがうまくいかなかった。そこでジプレキサを追加し、やがて落ち着いた。リスパダールは減量の試みがなされなかったものの、リスパダール液の追加は中止しても大丈夫だったので、このような処方になった。あるいはリスパダール減量に失敗した可能性もある。

ジプレキサとリスパダールは異なるタイプの非定型抗精神病薬なので、併用でより症状を抑えると言う考え方もできる。これで副作用が出なければだが。

この2つの処方で落ち着いている場合、どちらかを中止して単剤にするより、ともに減量してある程度バランスをとる方針もありだと思う。それは異なるタイプだからである。

上記のジプレキサ20mgとリスパダール4mgの処方だが、長期的には何らかの肥満以外の副作用が出そうである。最も良くない副作用は、糖尿病、遅発性ジスキネジアないしジストニア、多飲水及び電解質異常だと思う。

この処方で長く安定していて突如、悪性症候群が生じたとしたら、それはむしろ緊張病性の破綻である。このブログ的には、そういう考え方をしている(参考)。

このような併用の抗精神病薬の減量は、単に減量が困難な場合、むしろ他の抗精神病薬に置き換えるより、抗てんかん薬を併用しつつ置き換える方が成功率が高い。

過去ログにもいくつか減量のマニュアル的な記事があるが、デパケンRやリボトリールなどを推奨している。

エビリファイの減量の際に、ラミクタールを併用してうまくいった例も過去ログにある。またトピナで良くなった例もある。

ラミクタール、トピナ、イーケプラの出現で、気分安定化薬の概念が危うくなっていると思う。

そう思う1つの理由は、ラミクタールは優れた気分安定化薬と言ってるくせに、躁状態にはたいして効きはしないからである。


その抗てんかん薬が気分安定化薬にカテゴリーされているかどうかは、実はあまり関係がないのである。

むしろ現代社会では双極性障害に限らず、統合失調症、ボーダーライン、広汎性発達障害なども、抗てんかん薬またはリーマス(これがむしろ特例)を平行した治療の軸におき進める方がうまくいきやすい。そういう方法を取ることで、無能な抗精神病薬の多剤大量処方が避けられると考えた方がすっきり理解できる。

ジプレキサ25mgの転院患者を治療していた際に、そんな風に思ったのである。

参考
悪性症候群の謎
多剤併用についての話
薬物治療と寛解のレベルについて
寛解のクオリティについて
内因性幻聴とトピナ
ラミクタールによる躁転の副作用
トータルフットボールと現代の精神科薬物治療


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