過去ログでは、音楽性幻聴はあまり病理性が高くないと記載している。言い方を変えれば、音楽性の幻聴は本人にさほど苦痛を与えず、潜在的エネルギーが低い。重大な所見ではないことが多いのである。
ある時、年配の疼痛をともなううつ状態の女性の治療をしていた。処方はサインバルタ40mgとリリカ150mgがメインである。(他は降圧剤など)
この女性の場合、治療を始めて1年以上経過し、処方変更もない時期に生じているので、由来のよくわからない「音楽性幻聴」と言えた。
本人が、この音楽をなんとかしてほしいと訴えるので、何か追加しようと思ったが、何が良いのか少し迷う。結局、ルーラン1mgを投与してみた。止まれば儲けものである。
サインバルタ 40mg
リリカ 150mg
ルーラン 1mg
(他は降圧剤など内科薬)
この結果だが全然効かなかった。当然といえば当然だが、これでたまに止まる人もいるので、副作用の少なさを考慮すると最初に試みて良い方法である。デパケンR200mgとか投与するよりずっと良いと思う。
そこで無理だと思ったが、ルーラン2mgと思い切って倍量にしてみた。
こういう処方は、あまり薬のことを知らない外来婦長とか外来看護師がいるからこそできる手法。なまじっかわかっていると、相当奇妙なことをしているように見える。
このような試行錯誤の根拠だが、この音楽性幻聴は器質性に由来するから。
ルーランは2mgまで使って諦めた。4mgまで増やしても効きそうにない。
そこで、ちょっと思いついてカタプレスを使ってみた。彼女は降圧剤を飲んでいるので、カタプレスは使いやすい。ただ、少しサインバルタへの影響はあるかも?と思ったが、誤差範囲だろう。(さほど使わないので)。
さて、いくらの量にするかである。一応、小さい方の剤型75μg錠を選ぶ。
サインバルタ 40mg
リリカ 150mg
カタプレス 75μg
(他は降圧剤など内科薬)
これであっさり止まった。これはひょっとしたら、放っておいても自然消滅していたかも?と思った。
音楽CDも、最後までいくと止まるでしょ。あれと同じ。(←意味不明)
参考
ときどき頭のなかで音楽が聞こえます
情報の混乱と器質性幻覚③
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音楽性幻聴とカタプレス
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