ある日、家族に同伴され、ほんの8~9歳くらいの女児が新患として訪れた。
詳細は書かないが、精神所見は重大なものとは言えず、かといって奥行き的に、重大ではないかどうかは不明と言えた。家族は、軽いうちに病院に連れて行こうと思ったのかもしれない。
「習い事をしているのなら、そのようなことを続けるのが良いのでは?」くらいに伝え、経過観察が良いと思ったので、そういう話をしてそのまま帰ってもらった。
その女児は、結局何もなくそのまま帰ることになったので、涙ぐんでいた。あるいは、来る前からそういう気持ちだったのかもしれない。
最後に、「もう少し年長になり何か困ったことがあれば、また来て下さい」くらいに伝えたと思う。
その後の話である。外来婦長と、なぜ彼女が精神科病院に受診したのかを含め、少しの時間話した。
彼女の家族はかなり遠方から、小児科ではなく、精神科病院に連れてきたのである。
僕は婦長に話した。
このような症状で、薬を出す精神科医はたぶんいない。また、カウンセラーに任せ、定期的に通院させる精神科医もいないのではないかと。
外来婦長は、僕よりもずっと深刻な診立て?をしていた。
ひょっとしたら、僕はバカなのかもしれない。
あのくらいの精神症状で連れてくる家族は、たぶん何かその後変化が起こったら、少なくとも普通の家族より早く精神科に連れてくるように思う。経過観察のメッセージは伝えたのでそれで十分と思ったし、それくらいしか対応が思いつかなかった。
その女児にとって、あの程度の症状で、遠方の精神科に定期的に通院すること自体が、たぶん有害である。
余談だが、このように診察に来てもらって、結局、話だけで終わり、初診料と通院精神療法(子供は高い)を支払って帰ってもらうのは、なんか悪いみたい(笑)。
実際、初診で、あまりにもあっさり終わるような時は、診察などなかったことにして、カルテを廃棄し、そのままお金を取らず帰ってもらうこともある。(自分の裁量。他の医師がどうしているのか、いつか婦長に聞いてみよう)。
今回の場合、生育歴や病歴の聴取に時間がかかったため、診察代を取るのは適切と思われたので普通に支払ってもらった。あれだけ時間を取り、本質的なものは「経過観察しましょう」だけだが、無料で帰すとアドバイスの重みがなくなり、良くないと思ったのもある。
「なんか悪いみたい」と思う理由は、日本人は薬など有形なものにはお金を払うのは当然と思っているが、「お話」はタダと思っている人も多いから。(傾向があるというべきか)。別にその家族のことではなく、一般的な日本人の感覚を言っている。
だからといって、無意味で無害な薬を処方するのは、なおアホであろう。
精神科医が、アホっぽい印象を持たれるのは仕方がないと言うか、それも料金に含まれていると思うしかないなと、時々思う。
参考
循環器内科
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ほんの8~9歳くらいの新患の子供
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