過去ログにもあるように、自分の場合、特に内因性疾患の統合失調症は病名を告知しない。広汎性発達障害についても同様である。
しかしできるなら、告知をしなくても同じような効果を及ぼすアドバイスを行いたい。
それは告知に近いものではなく、むしろ日常の本人への対処の仕方など、現実的なものである。
その人にはどのような対応が望ましいかとか、どのような言い方が拙いか、などである。
ある時、広汎性発達障害の女性を診ていた時、「とにかく家に居づらい」という話が出てきた。両親から説教されてばかりというのである。説教される理由は、親から見るともっともな話であるが、本人には今の病状では対処が難しいものであった。
ある時、突如、父親だけ来院し病状について尋ねたため、一通り説明したが、できれば奥さんと一緒に来てほしいと伝えた。そして、3日後くらいに夫婦で来院したのである。
彼女(本人)はもう1年半くらい診ていたが、両親には初めて会った。両親とも、彼女のリテラシーの悪さや、どのような考え方に陥りやすいか?ということを詳しく話した。父親は、
そういうことは、(彼女が)子供の頃から気付いていました。
と言った。しかし、どのようにしたら良いかはよくわからなかったらしい。
どのくらい伝わったのか不明だが、子供の苦悩の特殊性について、少しは理解できたようである。
上の対応に比べ、病名告知は100%のボリュームと言える。一方、上の家族への説明は50%くらいのボリュームと思っている。
少なくとも精神科での病名告知は、癌や膠原病などの告知に比べ、周囲への影響もかなり大きい。告知される疾患名のマイナスのイメージは家族全員に共有され、時間が経っても浸透したままで、後戻りがきかない。
それは精神科では、遺伝性を持つ疾患が稀ではないことも関係が深い。
過去ログでは、僕の患者さんが、広汎性発達障害の子供たちの水泳のボランティアをする話が出てくる。おそらくだが、彼女が告知されていたら、そのタイプのボランティアには行かなかったような気が非常にする。
また、彼女には妹さんが時々、病院に一緒に来るのだが、彼女に同伴して診察室に入ることはしないので、単に病院に興味を持ち、遊びに来ているだけだ。時々、僕は声をかけている。
病名告知した場合、そういう流れには多分なりにくい。
精神科の病名告知にはその人の家族のことなど奥行きがあり、内科・外科と同じようにはできない。
上の広汎性発達障害の患者さんの話に戻るが、彼女の両親に会って1ヶ月ほど経った診察の際、女性患者さんが言った
以前より、家にいるのが楽になった。ストレスがだいぶん減りましたね。
つまり、家族へのアドバイスと言う点で、あの程度のボリュームで十分だったのである。
どのように話すかは、その人の病状や家族の理解度、家族関係でも異なる。現場にいないとボリュームは選べないと思う。状況にもよるからである。
最も悪いのは、治療関係が悪化した際に、突然、病名告知すること。
それは単に医師による反撃としか思われない。
告知するなら、診断に自信があり、間違いないと思う時にすぐにする方が良いと思う。その方がスッキリしている。
自分の場合、告知しない医師なので、そういう機会がないのだが。
参考
精神科医と法律家
統合失調症の告知と予後
統合失調症の告知についての考察
スアレスのハンド(ウルグアイvsガーナ)
この記事は本質的に「スアレスのハンド」の記事と同じである。過去ログの真意のわからない人は、今回の記事もなぜ同じなのかわからないと思う。
しかしできるなら、告知をしなくても同じような効果を及ぼすアドバイスを行いたい。
それは告知に近いものではなく、むしろ日常の本人への対処の仕方など、現実的なものである。
その人にはどのような対応が望ましいかとか、どのような言い方が拙いか、などである。
ある時、広汎性発達障害の女性を診ていた時、「とにかく家に居づらい」という話が出てきた。両親から説教されてばかりというのである。説教される理由は、親から見るともっともな話であるが、本人には今の病状では対処が難しいものであった。
ある時、突如、父親だけ来院し病状について尋ねたため、一通り説明したが、できれば奥さんと一緒に来てほしいと伝えた。そして、3日後くらいに夫婦で来院したのである。
彼女(本人)はもう1年半くらい診ていたが、両親には初めて会った。両親とも、彼女のリテラシーの悪さや、どのような考え方に陥りやすいか?ということを詳しく話した。父親は、
そういうことは、(彼女が)子供の頃から気付いていました。
と言った。しかし、どのようにしたら良いかはよくわからなかったらしい。
どのくらい伝わったのか不明だが、子供の苦悩の特殊性について、少しは理解できたようである。
上の対応に比べ、病名告知は100%のボリュームと言える。一方、上の家族への説明は50%くらいのボリュームと思っている。
少なくとも精神科での病名告知は、癌や膠原病などの告知に比べ、周囲への影響もかなり大きい。告知される疾患名のマイナスのイメージは家族全員に共有され、時間が経っても浸透したままで、後戻りがきかない。
それは精神科では、遺伝性を持つ疾患が稀ではないことも関係が深い。
過去ログでは、僕の患者さんが、広汎性発達障害の子供たちの水泳のボランティアをする話が出てくる。おそらくだが、彼女が告知されていたら、そのタイプのボランティアには行かなかったような気が非常にする。
また、彼女には妹さんが時々、病院に一緒に来るのだが、彼女に同伴して診察室に入ることはしないので、単に病院に興味を持ち、遊びに来ているだけだ。時々、僕は声をかけている。
病名告知した場合、そういう流れには多分なりにくい。
精神科の病名告知にはその人の家族のことなど奥行きがあり、内科・外科と同じようにはできない。
上の広汎性発達障害の患者さんの話に戻るが、彼女の両親に会って1ヶ月ほど経った診察の際、女性患者さんが言った
以前より、家にいるのが楽になった。ストレスがだいぶん減りましたね。
つまり、家族へのアドバイスと言う点で、あの程度のボリュームで十分だったのである。
どのように話すかは、その人の病状や家族の理解度、家族関係でも異なる。現場にいないとボリュームは選べないと思う。状況にもよるからである。
最も悪いのは、治療関係が悪化した際に、突然、病名告知すること。
それは単に医師による反撃としか思われない。
告知するなら、診断に自信があり、間違いないと思う時にすぐにする方が良いと思う。その方がスッキリしている。
自分の場合、告知しない医師なので、そういう機会がないのだが。
参考
精神科医と法律家
統合失調症の告知と予後
統合失調症の告知についての考察
スアレスのハンド(ウルグアイvsガーナ)
この記事は本質的に「スアレスのハンド」の記事と同じである。過去ログの真意のわからない人は、今回の記事もなぜ同じなのかわからないと思う。